ぐちゃぐちゃな告白
Ab
本文
KAC20233
お題「ぐちゃぐちゃ」
今日こそは告白してやろう。
そう決心して、俺は彼女の家のインターホンを押した。
『はーい、ちょっと待っててねー』
彼女はいつもこう。
ピンポーン。ちょっと待っててねー。
何の準備があるのか俺には分からないが、この間が大好きな彼女に会うまでの最後の焦らしみたいで俺は好きだった。
しばらくしてドアが開く。
「お待たせ! どうぞーいらっしゃい!」
腕を広げて歓迎してくれる彼女は、俺の大学の先輩だ。
「そうやって歓迎してくれるのは嬉しいですが、あんまり男相手に腕を広げないほうがいいですよ。飛び込みたくなるので」
「飛び込んでいいよーって意味で毎回こうしてるんだけどなー?」
ふむふむ。
そういうことなら抱きつかないわけにはいかないな。
俺が先輩の豊満な胸に顔を埋めると、笑って背中に手を回してくれる。
「どう?」
「控えめに言って最高です」
「ははっ、じゃあ良かった!」
それから俺は先輩に手を引かれて部屋の中に入った。いい匂いがする廊下。何回来ても飽きないな。
今日の俺には作戦がある。
まだ付き合ってもいないのに抱きついても許してくれる二つ年上の先輩と、付き合うための作戦が。
まずお酒を飲ませる。
先輩が酔う。
告白する。
結ばれる。
自分で言うのもなんだけど、俺はメンタルが弱い。だから告白して断られるのなんて考えたくもない。お酒という強引な手段を使ってでも成功させたいのだ、この告白は。
ぐちゃぐちゃに酔った先輩はどんなだろう。
いや、気が早いぞ俺。
まずはお酒を飲む流れを作らなければ。
「先輩、今日はお酒でも飲みませんか?」
「んーごめん。今日私ちょっと二日酔い気味なんだー、昨日サークルの飲み会でさぁ」
「な、なるほど」
プラン変更だ。
お酒は俺が飲むことにしよう。少しでも気が強くなれば行けるかもしれない。
そう決めて先輩との雑談や映画鑑賞を楽しんだ後、気づけばすっかり夜の帳が下りていた。
先輩の手料理を堪能しつつお酒を飲み進める。
「先輩……俺は」
今喋ったのは誰だ?
視界も頭もぐらぐらして、ぐちゃぐちゃで、全く意識がはっきりしない。先輩が出してくれたこのお酒、度数いくつなんだ?
いや、そんなことはどうでもいい。
眠い。
「……ふふ、よかった」
こてん、とテーブルに頭をつけた俺に先輩のそんな声が届く。
「私、告白が失敗するとか耐えられないから。ごめんね。先に離れられない理由を作ることにしたの」
衣擦れの音。
ああ、なんだこれは。
ぐちゃぐちゃだ。
視界も、頭も、告白の計画も。
ぐちゃぐちゃな告白 Ab @shadow-night
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます