Kのレポート

とろり。

Kのレポート


 この世界は混沌の中から生まれた。だから、今ここにいる全ての生き物はカオスなのだ。


 長い年月の中、私たちは猿だった。そして今もそうだろう。自分自身が生きることに精一杯。視野は狭まり、見える世界は小さく……。本来は天文学的に大きい世界の中、猿たちは群れをなす。そしていつの間にか仲間を作る。と同時に敵を作り出した。それが戦争の原点なのだ。


 ひとり一人が違っていいなどときれいごとが蔓延ると統治者は激怒する。人間という着ぐるみを着た猿は核を飛ばすのか。思い通りにならない人間は殺すのか。


 戦争をするということは、詰まるところ、「悪」である。視点を変え、解釈を変えようと、どうしても「悪」である。


 仲間を作り、それが密になればなるほど、敵の数は増える。密にならない事はこのご時世大切なこと。近付けば近付くほどその熱量が増し、互いに溶け合う。

 境界線は消え、混合物となった猿はぐちゃぐちゃの思考の中で核ミサイルの発射命令を出すのだろう。向こう側の猿に。


 元々、全てはカオス。つまり、この世界はぐちゃぐちゃしているのだ。隔たりなどあって無いようなもの。だから人間は猿だし、猿は人間なのだ。



 私たちはひとつ。世界はひとつ。ひとつの塊に過ぎない。

 それをバラバラに砕いたのは猿なのだ。縄文時代の打製石器で細かく現代まで砕いてきたのだ。

 花に種類や名前を付け、動物に名前を与えて、イヌやネコなどと個立化していった。


 今、世界は危機に面している。滅びの道を歩むのか、共存の道を歩むのか、そんなことは聞かなくても分かっているはず。

 しかし、私たちは猿。ぐちゃぐちゃな猿。過ちを犯すことは否定できない。



 私たちに今必要なのは確かな『目』である。このぐちゃぐちゃな世界をしっかりと見据えることのできる『目』なのである。

 現実を直視せずに、幻想を見ているのでは、世界はぐちゃぐちゃのまま。確かな『目』を持つことでこの世界を正しく認識できる。


 実は私たちが猿であることに多くの人は気付いていない。鏡を見て、人間だな、と思う。それだけ。


 明日戦争が起きても感覚がマヒしているから「ああ、始まったな」と、そんな言葉で終わらせる。

 隣で火の粉が舞っていても、平和という幻想が邪魔をする。すでに起きている戦争も他人事。



 ぐちゃぐちゃの街を見て何を思う?



 ああ、混沌がカオスに回帰していく。



by K



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Kのレポート とろり。 @towanosakura

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