和解

高野ザンク

祗園

 ぐちゃぐちゃになってしまった関係をどうにかしなければならないので、俺はあいつの会社にガチャガチャと乗り込むことにした。


「粗茶でございます」


 と秘書がちゃっちゃと出したお茶をじゃぶじゃぶ飲み干してだらだらと待っていると、あいつはガムみたいなものをクチャクチャ噛みながら、そのぽちゃぽちゃした巨漢を揺らしてやってきた。


「あんなにめちゃめちゃにしておいて、よくひょこひょこ出てこれましたね」


 ネチネチとした嫌味をひょうひょうと受け流す。ここはごちゃごちゃ言ってずるずると時間を引き伸ばしている場合ではない。前向きに話を進めなければならない。


「確かに俺がぐちゃぐちゃにしてしまったかもしれない。それは悪かった」


 俺はぺこぺこ頭を下げた。


「だけど、そもそも君がしっちゃかめっちゃかにしたことも原因のひとつだろう?」


「それはペラッペラの詭弁ですよ」


 あいつはぎりぎりと歯噛みしながらイライラした様子で言った。俺は内心ハラハラしつつも、話のわからないあいつにむかむかしていた。


「最終的にぐちゃぐちゃにしたのはあなたですよ。せいぜいごちゃごちゃ程度の案件をぐずぐずと放っておいてバラバラにした挙げ句にぺらぺらの内容に変えてしまったからじゃないですか」


「な、なにをっ!」


 俺はあいつに掴みかかると、二人もみくちゃになった。


 がんがん

 どんどん

 ばちばち

 ぼこぼこ

 じゃんじゃん

 ぬるぬる

 だぶだぶ

 ぼかぼか


 さんざん、ねばねば揉み合った後に、俺たちは疲れ果ててバタバタと床に倒れ込んだ。


「もう、もうこんなことやめましょうよ」


 あいつはのろのろと起き上がり、体格に似合わないコロコロとした声で言った。ポロポロ涙を流していた。それを見て、俺はほとほと疲れ果てた。そもそもはじまりはあの日にあの場所でぐちゃぐちゃになってしまったことが原因なのだ。


「わかった、あの祗園擬音での犠牲擬声のことはさらさらと水に流そう。俺もそろそろ兜を脱ぎたい擬態からな」


 俺がそう返事をすると、あいつは怒りか笑いか、その巨体をぶるぶる震わせながら言った。


「結局オチはダジャレかよ」


〈終〉

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和解 高野ザンク @zanqtakano

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