有隣堂さえ知らない異世界
ミミズクの踊り食い
【プロローグ】突然の異世界~有隣堂さえ知らない異世界001~
「ブッコローパンチ…」
そのミミズク―――R.B.ブッコローが、とあるパペットに放った掌打は華麗に空を切った。否、より正確に表現するなら、空を切ったのは黒子の放った掌打である。黒子の左手薬指の宝石が、それを覆い隠すミミズクの存在を否定するように、キラリと反射した。
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「おいおい……嘘だろ………?」
密林に似合わないプラスチックの机と、無機質なマイクの手前、一匹のミミズクがそう呟いた。先程まで確かに伊勢佐木町本店で動画撮影を行っていた彼は、まずこの大自然に驚きを隠せなかった。
「………ザキさ………ん……!?」
彼は振り返って、すぐに二つ後悔した。
まず眼前に広がった広大な緑が、自身の孤独を証明した。だが、それは別によかった。彼は年中馬券に振り回されるほどには現実を見れていないが、今この状況で他者の存在に固執し、有隣堂社員を自身と同じ事態に巻き込まれていてほしいと願うほどには腐っていなかったからだ。
だが、もう一方の後悔は大きかった。
―――――死んだ。そう思った。振り向けと脳に命令されたこの首は、次の瞬間に270度ほど回転し、即座に首の骨を折ったかに思われた。
しかしそうはならなかった。
中の人と黒子による"分離型"だった彼は、"一体型"となった。
そう。ついにこの日、R.B.ブッコローはミミズクとなったのだ。
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