The Last Feather

佐保彩里(旧・伏水瑚和)

✼✼✼


 誰が、いつ言ったのだろうか。


 『赤ん坊は、天からの尊い授かりもの』


 産まれたばかりの彼らは、濁りのない澄んだで、私たち大人を見つめる。


 時には、自身の恥や傷、罪悪まで見透しているようで、きまり悪さも感じる。


 いいな。何も知らない。汚されてない。縛られてない。


 その背中には、目に見えない無数の羽根があるのだ。


 純白のまっさらなそれは、羽ばたき、やがてこの世を飛ぶ力に変わる。


 年月が経つと、やがて傷つき、汚れ、抜け落ちていく。成長する身体、少しの狡さの対価のように。


 時には、産まれて間もなく羽根を無惨にもぎ取られてしまった者に、むしり取られる事もある。


 その度に何度も、何度も、原型を保つために直し、補強しながら、歪に飛び続ける。


 それすら疲れて、衰えた身体を引きる頃には、朽ち果てた羽根の存在なんて、忘れている。


 天寿を迎え、最期の瞬間がきた時。たった一本でも、真っ白な羽根が残せていたら。


 無数の羽根を生やした小さな者に空から迎えられ、彼らと入れ替わり、天に還れるのだ。


 その者は、どこか見覚えのある澄んだで、無邪気に微笑む。



「お疲れ様。次は、ぼくの番だね」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

The Last Feather 佐保彩里(旧・伏水瑚和) @coyori_F

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画