春の畑は耕運機の出番

朝風涼

春の畑は耕運機の出番

 いよいよ春だ。雑草の季節の到来だ。そして、耕運機の活躍の時期だ。


 我が家のマシンは6馬力。かなりしぶといススキの根っこも、ぐちゃぐちゃにしてくれる。


 僕が農業を続けられるのも、この耕運機があるおかげだ。


 最近の耕運機の進歩には目を見張る。特に安全対策は素晴らしい。


 手元のレバーを握らないと動かない。危なくなったら離せばよい。

 手元の赤い大きなボタンをポンと押せば、完全にストップする。

 土を耕す歯が、前と後ろに同時回転するので、硬い土でも危なくない。

 回転する歯の後ろには、金属板がついていて、足が巻き込まれない。


 父が現役の頃、耕運機でけがをする人が多かった。今は、女性でも動かせる。日本の機械メーカーの技術に感謝がいっぱいだ。



 エンジンをかけて畑に向かった。


 ピンク色のホトケノザがとっても目立つけど、ナズナも多い。どちらも、種をいっぱい飛ばすから、どんどんふえてくる雑草だ。


 九条ネギを抜いたところを掘ってみると、スギナの新芽が伸びていた。ツクシも芽を出す準備を始めていた。


 野原のツクシは可愛いけれど、畑のスギナはむちゃくちゃ厄介だ。抜いても抜いても、地下茎で伸びていく。深くまで掘って、ていねいに取り除くしかない。


 地下茎と言えば、いまは枯れているススキが一番大変だ。根が太くてしぶとく長い。力強くクワをふるわないと掘り取れない。耕運機でしょっちゅう、ぐちゃぐちゃに耕さないと、ススキに負ける。その行く末は、すすきの原っぱになってしまう。


 緑にこんもり茂っているのは、カラスノエンドウとスズメノエンドウだ。ようやく花をつけ始めた。なぜ、このウネだけにカラスノエンドウ達が茂っているのか考えた。多分、昨年の初冬の作業のせいだろう。耕運機で耕さないでおいたからだ。


 ぐんぐん伸びる雑草に勝つためには、やっぱり先手必勝しかないようだ。そして、コツコツやるしかないようだ。


 スギナを掘り出したら、畑全体を耕運機で念入りに耕す。


 土を雑草もろとも、マシンパワーでごちゃごちゃにかき混ぜる。


 ちぎれた、雑草は、土の中で、ゆっくり分解されて、肥料になってくれる。


 とくに、カラスノエンドウやスズメのエンドウなど、マメ科の植物は土に栄養を与えてくれるから、非常にありがたい植物だ。これから花咲くレンゲもこの仲間だ。


 マメ科の植物の根には、根粒菌こんりゅうきんが住みついていて、空気中の窒素を肥料に変えてくれるのだ。空気から肥料を作るなんて芸当をするのだから、植物というのは面白い。


 カラスノエンドウの仲間には、フェアリーベッチという品種がある。その種をまいて育て耕して肥料にするやり方の農業もある。自然を生かした農業だ。


 ともかく、春は耕運機のマシンパワーで、ぐちゃぐちゃに耕すことから始まるのだ。


 ただ、今回の作業では、アマガエルと、ツチガエルと、カナヘビ達が逃げ出していた。かわいそうだけど仕方がない。許しておくれと言いながら耕した。

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春の畑は耕運機の出番 朝風涼 @suzukaze3

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