喪失と再生の物語

「小説を書く人は皆、何かしらの喪失感を抱えている」
SNSでどなたかがコメントしていた言葉ですが、妙に印象に残っています。

この物語の主人公(=筆者)は最愛の奥様を失い、物語の世界で奥様を生かし続けるために小説を書き続けます。

小説を書くことは主人公にとって奥様への弔いだったのでしょう。
奥様への思いは、数多くの物語を作る原動力となっていきます。
それがやがて、主人公の生きる目的に変わっていく様子が丁寧に描写されています。

鉄道への深い愛や造詣に基づいた自作への愛着、横浜市民ならではの横浜観、
時折挟まれる、元・仕事仲間との交流や飲み会のエピソードが物語を彩っています。
特に元・仕事仲間との遠慮のないやりとりは、女の私からすると少しうらやましく感じました。

最後にこれまたSNSで見かけた言葉を紹介します。この作品を読んで強く感じたことを端的に表わした言葉です。

「書くことは生きること」

***************************************

例え自分が死んでも、本は永遠に残る。私が生きた証になる。
私はそう思って、自分の本を一冊出版しました。

そんな私の思いより、もっとずっと深く、強く、悲しい思いが、この作品から伝わってきます。
筆者と奥様の思い出が永遠に残ることで、筆者の心に少しでも救いがもたらされることを願ってやみません。

各話に一冊ずつ、本が紹介されるので、次はどんな本か楽しみにしています。

(完結の際にはレビュー更新します)