先輩が昼から死体を食していた

夏空蝉丸

第1話

 ある小春日和の昼休み。ふらりと文芸部の部室に行ってみると先輩がいた。


「どうしたの? 珍しわね」

「いえ、教室が寒かったから日当たりがいい部室ならば心地よいかと思いまして」

「部活をしに来たわけじゃないのね」

「先輩だってそうじゃないですか」


 先輩は食事をしていた。それもぐちゃぐちゃになった死体だ。原型を留めていない。器用に解体されてバラバラになっている。それも、複数だ。部位だけ食材にされているのもある。


「先輩って……、内臓が……肉を詰めたハラワタが好きなんですか?」


 俺が訊くと先輩は上目遣いに睨みつけてくる。変なことを言うな。と言わんばかりの強い視線だ。だが、言葉にはしない。すぐに目を逸らして食事を続ける。


「ちゃんと頭まで食べるんですね。確かに目玉が美味しいとか言いますもんね。栄養分もたっぷりで、DHAやEPA、それにビタミンB1も含まれているんでしたっけ。えっ? 頭の骨まで食べてしまうんですか。確かにグルメの話では骨付きの方が美味しい。一番美味しい肉は骨にへばりついている肉だ。とか聞いたことがありますが。頭ごとですか。煮付けにして柔らかくすれば骨も食べれるとも言いますが流石ですね」

「ちょっと、さっきから何が言いたいの? 食事の邪魔をしたいの?」


 先輩が不機嫌そうな声を出す。お腹が空いているのだろうか。これっぽっちの食料では先輩のお腹を十分に満たすことができないのか。


「いえ、そんなつもりは。ただ、食レポの真似事のようなことをやって表現力を鍛えようかなって」

「食レポねぇ」

「合っているじゃないですか。先輩の肉食動物としての本能を満たすかのような食事っぷりを表現しているんです」

「何が、肉食獣よ。早弁して自分の昼食が無いからって、ソーセージを食べたり佃煮を食べたりしているだけでスカベンジャー扱いするの止めなさい」


 いつもは温厚な先輩が少しだけ声を荒らげた。


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先輩が昼から死体を食していた 夏空蝉丸 @2525beam

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