不平不満は口にする

異端者

『不平不満は口にする』本文

「また、失敗だって――」

「ああもう、最近の日本は――」

 両親はテレビのニュース番組を見ながら文句を言った。

 近頃、両親はやたら世の中に不平不満を言うようになった。それもどこか横柄に見える。まるで自分たちは悪くないのに、最近のまだ若い世代が悪いと言わんばかりだ。

 私はそんな様子に嫌気がさしていた。こうして実家暮らしだから一緒に夕食を摂る必要があるが、本当は独り暮らしがしたい……が、金がない。

 私はさっさと食べ終えてその場を離れようと、無言で食べ進めた。


 最近の日本は――そう言っても、そんな社会を作ったのはお前たちじゃないか?


 そう言いたくなるのをこらえる。メディアは分かっていてテレビ番組でも何でも一向に言わないのは、中高年の支持を得たいからだろうか。どうせ私が年老いたら、今度はその世代がこうしてぐちゃぐちゃと不平不満を言って見下せるように世論を誘導するのだろう。

「ごちそうさま」

 私はそう言うと、立ち上がってさっさとその場を離れた。

 もうたくさんだ。下らない責任の押し付けを見たくもない。

 思えば、昔からそうだった。両親は私の選択肢をなくしておいて、上手くいかなくなったらお前の責任だ、お前が悪いと責め立てる。それでいて、罪悪感は一切ないのだからたちが悪い。

 私は自室にこもった。お気に入りの音楽をかける。

 天井を見上げ、夢想する。


 日本が今より豊かだったら、彼らは不平不満を言わなかっただろうか?


 いや、違う……粗探ししてなんらかの文句を言うだろう。そうでなければ、今の豊かさがあるのは自分たちの世代が苦労したからだと言い張るに決まっている。

 正直そんなに元気なら、外に出て世直しでも何でもしてこいと思う。

 それをしないのは、自分たちにとってはどうせ他人事で今の若い世代が悪いからなんとかしろ、という他人任せな思考のせいだろう。


 それに気付かない限りは、この国は良くならない。

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