みこちゃんの花束

KKモントレイユ

みこちゃんの夢

 みこちゃんは小学四年生。今日は参観日です。お父さんやお母さんがたくさん来ています。授業は図画です。お父さんやお母さんにプレゼントする絵を描きます。

 今週は実習生の真理子先生もいます。みんな真理子先生のことが大好きです。今日は絵画教室の先生も来ています。佐織ちゃんのおじいちゃんで絵の先生です。クラスには絵画教室に通っている子もたくさんいます。


 みこちゃんは、お母さんが忙しくて参観日に来てくれません。みんな二十四色の新品の絵の具セットを持っています。佐織ちゃんは三十色のセットです。後ろにいるお父さんやお母さんも「さすが佐織ちゃん。すごいなあ」と口々に言います。

 みこちゃんは十二色の小さな絵の具セットです。絵の具のチューブも、なくなりかけの色ばかりです。


 担任の先生が「さあ、お父さん、お母さんにプレゼントする絵を描きましょう」と言うと、みんな描き始めました。花や動物、お父さんやお母さんを描く生徒もいます。


 みこちゃんはいろいろな色を画用紙にぐちゃぐちゃとぬっていきます。それを見た大人たちは「あの子はどうしたことでしょう」と言って笑ったり、絵画教室の先生も「きちんと絵の勉強をしてないから」とあきれ顔。


 実習の真理子先生が心配そうに、みこちゃんのところに来ました。みこちゃんはぐちゃぐちゃにぬった画用紙にビリジアンで数本の線をひき葉っぱを描きました。そして白と青で透明の色をサラサラと描き、最後に赤と白でピンクを作り、透明のラッピングにピンクのリボンを描きました。

ぐちゃぐちゃの色はきれいな花束になりました。


「これ真理子先生にあげます『花たちの夢』です」

みんなその美しい花束に驚きました。

真理子先生が、

「こんなきれいな絵、見たことがない」

と言って絵の花束を胸に抱いて泣いていました。

教室中が拍手に包まれました。絵画の先生も、いつのまにか一緒に拍手をしていました。

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