中庭のグチャ先輩 2
雲母あお
中庭のグチャ先輩 2 ー大学2年生の春ー
大学2年生 春
「グチャ先輩は、なんでいつもその髪型なんですか?」
「直球だな。そんなにはっきり言われたことないよ。」
「理由があるんですか?」
「まあ、トラウマかな。自分の顔に自信がなくて。」
「ええ!そんなにかっこいいのに?」
「かっこいい?君に顔を見せたことがあったかな?」
「はい、入学式の時。」
「ああ、あの時か。誰もいないと思って油断してたんだ。」
そうだったのか。
「先輩、かっこいいと思います。どんなことがあったのかわかりませんが、私は先輩の顔好きですよ。見たいです。」
「!?」
先輩の顔が赤くなる。
「俺の顔が…好き?」
「あ、えっと、顔だけって訳じゃないですからね!性格とか優しいとか思ってますからね!」
慌ててフォローしたけど、フォローになってない。そう気がついても、もう止められない。
「と、とにかく、先輩は顔を隠しているの勿体無いです!」
「ありがとう。」
優しく笑った気がした…。顔、見えないけど。
過去にとても傷つくことがあったのだろうか。余計なことを言ってしまったかもしれないと後悔し始めていた。
数日後
いつものように中庭のベンチで本を読んていると、
「ここ、いい?」
と、声をかけられた。本から顔をあげ、声の主を見ると、
「は、は…い?え!?グチャ先輩!?」
そこには、マスクを取り、軽く目にかかるくらいの短髪、少し癖のある髪を揺らす、精悍な男性が立っていた。
「どう、かな?」
照れたように笑う。
ああ、笑うとこんな感じなのか。こ、言葉が出てこない。
グチャ先輩は、いつものように、少し離れてベンチに座ると、前を向いたまま話し始めた。
「えっと。君と話すようになって、ぐちゃぐちゃしていた心が、少しずつほどけていくような気がしたんだ。この間、君が見たいって言ってくれて…勇気を出して髪型を変えてみたんだけど…。」
そ、そんな迷子の子犬みたいな可愛い顔で、私の顔を覗き込まないで〜!心臓がもちません!!
「い、いい…と、思い…ます…。」
心臓がドキドキしすぎて、言葉が途切れてしまう!!先輩のかっこよさ、殺人的です!!
「よかった。」
そう言って、また前を向く。
「この髪型にしたらさ、気味悪いって言われなくなったんだ。でも、女子からは、ますます遠巻きに見られるようになって。なんかへこむ。やっぱりダメなのかなあ。」
そ、そんなことない!あるわけない!格好良すぎて近づけないだけ!あっ、でも私にとっては、そのままの方が好都合だ!
「私としては、グチャ先輩の近くにいる女子は私だけがいいので、全然へこみません!!」
「え!?」
グチャ先輩は、驚いて私を振り返り、そのままかたまった。
私は何を言ってしまったんだー!!
慌てて口を押さえても、出した言葉は戻ってこない。
グチャ先輩を、直視できず、顔を背けて焦りまくった。
ど、どうしよう!?
この後なんていおうか?
もういっそ、告白しちゃう??
いや、今、告白したらフラれるかも!?
というか、もうすでに告白したようなものなのでは!?
心の中はぐちゃぐちゃだ。
「えっと、いまのはですね…。」
なんと言って誤魔化そうか考えつつ、話し始めると、
「そうだな。髪型を変えたのは、君が見たいと言ってくれたから…なので…。」
顔を赤くして、照れたように笑うグチャ先輩。
顔全部見えてるから、表情がわかる。
分かるとさらに、
『私の心臓はこれ以上早く打てるのか!?
というくらいバクバク言ってる。
もう、ダメだ。もう、限界…。
「グチャ先輩、また明日…。」
とりあえずいったん立て直そう。
席を立とうとすると、
「あの、この後、時間ある…かな?」
「え!?」
初めて言われた言葉に、足も心臓も止まりかけた。
おい、心臓は止まっちゃいかん!!
「よかったら、桜を見にいかないか?」
そう言われて見上げれば、初めて出会った時と同じ、中庭の桜が満開だった…
中庭のグチャ先輩 2 雲母あお @unmoao
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