私の気持ちはぐちゃぐちゃだ

桜桃

もう、ぐちゃぐちゃだ

 出会った時から、好きだった。もう、何年も想っていたんだ。


 ふとした仕草が、言葉が、行動が。全てが輝いていて、眩しくて。私なんかは近づいてはいけない存在で。

 それでも、この恋心は膨らむばかりで、留まる事を知らない。



 私は、遠くで見ているだけでよかった。今は遠くで見ているだけで、良かったの。昔みたいに遊んだり、話したりの高望みはしない。しなかったのに、もう……嫌だ。


 あの人が他の人と話しているのを見ると胸が苦しくなるし、私を映さない瞳に怒りが芽生える。

 私と話さないくせに、他の人とは楽しく話してる彼を見るのは辛く、悲しく、虚しい。


 あぁ、この気持ち、どうにか出来ないだろうか。この、ぐちゃぐちゃな気持ちは、どこにぶつければいいのだろうか。


 嫉妬、妬み、怒り、悲しみ。


 このような感情が、彼を見ているだけで芽生えてしまい、気持ちをコントロールする事が出来ない。このままでは、私は彼に何かしてしまいそうで怖い。


「……………………いっそ、嫌いになる事が出来たらいいのに」


 今も彼は、学校の教室で友人達と一緒に話している。それを見るだけで心が苦しいのは、私の心が狭いから。心が狭くて、めんどくさい人間だから。


 離れよう、同じ学校なのは仕方がないけど、せめて一緒にいる時間を減らそう。そうすれば、少しくらいはこの気持ちにブレーキをかけることが出来るだろう。


 そんなことを考えながら、逃げるように廊下を歩く。


 おそらく、彼はもう私の事は認知していない。ただの幼馴染―――いや、幼馴染にもなっていないかもしれない。

 ただの、その辺にいるクラスメートの一人。そう考えるだけで、胸が締め付けられるような感覚になるのは、私が心狭いから。


 私が悪い、私が好きになってしまったから悪い。あの人は悪くない。あの人は、悪くない。


 自分に言い聞かせるように廊下を歩いていると、後ろから誰かが走ってくるような音が聞こえた。

 私の隣を通り過ぎると思い、壁側に寄ろうとした時、名前が呼ばれた為振り返った。


 そこには、私の心を締め付ける張本人、彼が居た。


「待って、なんでそんな顔で教室を出て行くの?」

「っ、い、いきなりなんですか…………」

「それ」


 え、どれ。いきなり声をかけてきて、「それ」と言われてもわからないよ。


「なんで今は敬語なの? 幼馴染で、同い年なんだから、昔みたいに気楽に話したいんだけど…………」


 なんで、そんなことを言うの。私は、貴方を困らせないように距離を取ろうとしたのに。なのに、どうして。そんな悲し気な顔で聞いてこないで。そんな顔をされたら、私は口が勝手に開いてしまう。


 だめ、これ以上彼を困らせてはいけない。分かっているのに、口が開いてしまう。


「…………好きだから」

「え」

「貴方の事が、好きだから。だから、貴方が私以外の人と話していると胸が苦しいの、私を映さない瞳を見ていると怒りが芽生えるの。こんな、めんどくさい気持ちを持った私と一緒にいるのは嫌でしょ? だから、離れようとしたの」


 全て話した私を見つめる彼。確実に幻滅させられた。でも、大丈夫。こうなることは覚悟していたから、何を言われても大丈夫。


 早く、私のこの気持ちに終止符を――……


「ま、マジで…………? やばっ」


 …………やっぱり、そうなるよね。自分でも驚きだもん。それじゃ、キモイ私はここでいなくなりまっ――……


「すっげぇ、嬉しい」

「―――――え?」


 え、何? 嬉しい? 何が? 何が嬉しいの?


「俺も、同じだったから。俺、お前の事が好きだったから。だから、嬉しんだよ」


 彼が私の手を握り、引き寄せる。何も反応が出来ない私を腕の中に抱き留め、耳元で何かを囁き始めた。


「俺も、お前を見ると胸が締め付けられるよ。だから、お互い辛くならないように、これからは一緒に居よう?」


 あぁ、あぁ。どうしてくれようか、この気持ちを。この、ぐちゃぐちゃな気持ちを。貴方は、どうしてくれるのか。


 目から、涙が止まりません。

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私の気持ちはぐちゃぐちゃだ 桜桃 @sakurannbo

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