ぐちゃぐちゃかいぶつとしょうじょ

砂漠の使徒

 むかしむかし。

 あるところに「ぐちゃぐちゃかいぶつ」がいました。


「あー、くそ。頭いてぇ……」


 かれはけんきゅうじょでつくられたじっけんたい。

 ふつうのいきものではありません。


「今日はしっぽの調子がわりーしよぉ」


 いろんなものがまざっているので、いつもふあんていです。

 だから、ふまんをもらしてばかり。


「くそ、くそ、くそ……!!! 今日も今日とて、最悪だ!!!」


 やつあたりで、かれはかべをおもいっきりなぐりました。

 かたいこんくりーともこなごなです。


「おにいちゃん、だれ?」


「あぁ!?」


 かべのむこうには、ひとりのおんなのこがいました。

 ぼろぼろのぬのをまとっています。


「失せろ、ガキ。俺はいらいらしてんだよ!」


「どうして?」


 みんながおそれるかいぶつに、しょうじょはちかづいていきます。

 そのひとみにはおそれなどなく、むしろきらきらとかがやいています。


「はぁ!? どうしてって、そりゃあ……」


 よそうがいのしつもんに、かいぶつはくちをとじました。

 いままでこんなへんなことをたずねるひとは、いませんでした。


「なにか、くるしいんでしょ? わたしにいってみて!」


 しょうじょはにっこりとわらいました。

 かいぶつははじめてじぶんにえがおがむけられ、おどろきました。


「……ぐちゃぐちゃなんだよ」


 ほんねがぽろり。

 とてもちいさなつぶやきだけど、しょうじょのみみにはとどきました。


「なにもかも! 俺は……! 自分がなにを考えているのか、自分でもわからねぇ!」


 じめんをつよくたたくかいぶつ。

 かいけつできないなやみへのいかりが、かれをつきうごかします。


「それでいいとおもうよ」


「はぁ!?」


 しょうじょは、あたりまえのことを言うように。

 まっすぐとかいぶつのめをのぞきこんで。


「みんな、ぐちゃぐちゃ。それがふつうだよ」


「だが!」


 それでいいはずがないと。

 かいぶつがさけぶよりもはやく、しょうじょはいいました。


「いいことおしえてあげる」


「……なんだ」


 いっしゅんのせいじゃく。

 ふたりのあいだに、かぜがふきました。


「わたしもあなたのぐちゃぐちゃのなかまいり」


 ぎゅっと、かいぶつはしょうじょにだきしめられた。

 ぐちゃぐちゃです。


(おしまい)

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ぐちゃぐちゃかいぶつとしょうじょ 砂漠の使徒 @461kuma

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