ライトユーザーから見たらぐちゃぐちゃだ!

文字塚

第1話

 令和の今、小説投稿サイトは数多い。

 中でも有名なサイトが二つある。

「小説家になってみれば?」や「書いて読んでみれば?」だ。

 知らんがな。ふざけたサイト名つけやがって。

 一応書いてみるし、なれるかどうかなんて自費出版なら可能だろう。それが認められるかは知らないが、アマチュア作家なら山ほどいる。

 だが一人の復帰勢、ライトユーザーから見ればもはやめちゃくちゃだ。


 どのサイトにも「評価」や「レビュー」更にSNSよろしくレビューや書き込みなどに対する「いいね」が存在する。

 問題は評価だ。

 かなり大雑把だが、どのサイトでも一日に千五百人以上が訪れれば、一万のページビューを記録する。

 一つの作品で万のページビューを稼げば、サイト側からしてもまあまあ人を集めるユーザー、という感じかもしれない。

 だがしかし、評価はそう簡単に付かない。大抵のユーザーはアクセス数、ページビューは一桁二桁。ブログは当然、呟けるSNSのインプレッションですら同様だろう。


 ちなみに「なってみれば?」だと、評価は五段階。星五の評価で十のポイントが付いてくる。

 次にブックマークだが、こちらは一件で二ポイント。

「書いて読んでみれば?」も似たようなシステムだが、こちらは三つ星評価なので、四倍か三倍にした数字が「なってみれば?」に近い数字という感じだろう。


 どのサイトでも人気作品は存在し、人気ユーザーも存在する。

 ライトユーザーからしてみれば実に羨ましい限りだが、彼らとて最初はライトユーザー。赤子のような状態から始め、人気ユーザーとなったのだ。

 中にはプロも存在するのだから、サイトの幅は広い。

「競争相手がプロとかなんて修羅」

 と、世紀末すら感じさせるが、プロ作家には相応の苦労や苦悩があるだろう。


 売れ続けるのは至難の業だ。

 スタートラインに立ったとて、その先の保証などどこにもない。

 人気ユーザー、プロ作家な彼らの努力には頭が下がる思いだ。

 色々羨ましいが、格差社会は実力だ。

 親ガチャ環境ガチャと例外はあるが仕方ない。


 だからまあ、それはいい。

 だがしかし、だからこそ際立つものが存在する。


「たった一話投稿されただけでいきなり千ポイントも評価がつく」


 という、現象だ。

「なってみれば?」に最初の一話目投稿された時点でいきなり千ポイントが付く。


 いやお前ちょっと待て。

 一人最大十二ポイント。評価だけなら十だ、これを覚えていて欲しい。

 十かける十は、百だ。

 十かける百は、千だ。

 おやおやおやおやおや、百人一首みたいに読者が一話めに飛び付いたか!


「難波出の~」じゃない!

「秋の田の~」でもない!


 一話目だっつってんだろっ!


 応援評価は公式に推奨されている。

 ちなみに「なってみれば?」は応援評価が推奨されている。応援での評価を送ろう、という推奨だ。

「書いて読んでみれば?」は「面白かったら評価して下さい」と記されている。

 微妙にかなり、全然違うが大体一緒だ。


 評価自体は完結してようが連載中だろうが、いつでも付けられる。読者ユーザーの自由だ。裁量権はユーザーにある。

 だがしかし、駄菓子のように安くない。


 一話目で千もポイント稼ぐのはなあ……確かにたかが百人一首、百人のユーザーに支持されたら可能ではある。

 しかしなぜ、いきなり投稿とほぼ同時期に評価が付く?

 お前らみんな大家族か?

 限界集落の会合にでも参加していたのか?

 これはなんだ村おこしか?

 ネットワーク上の繋がりか?

 ほんと息が合ってるな素晴らしい。


「シンクロ率が百パーセントを超えました! パイロットが危険です!」

「構わん続けろ、予備は今届いた」


 なるほど確かに名作アニメ。台詞はうろ覚えだが大体伝わるだろう。


 実に羨ましくもけしからん。

 これがなってみれば攻略か。

 これが投稿サイトの現実か。

 確かに百人、大した数ではない……。

 みんな息ぴったりに評価つけても、ライトユーザーからすれば「異世界」と変わらない現象だが、強者にしてみれば容易いのだろう。


 よくも、よくも一桁ブックマークぐらいしか付かない作品を差し置いてぬけぬけと。

 そうかそんなに素晴らしい作品か。

 であるならば読んでやろう。

 どうせ一話五千文字以内、なるほど目を通してみよう。

 そしてどれだけの作品か俺も評価してやろうじゃないかーー


 なんてなるかふざけるな!

 目に見えるクラスタか応援団か人気ユーザーか不正か知らないが、誰が読むか!

 もし大したものなら「なるほど納得。そりゃ一話で百人評価するわ」ってならんわ絶対応援団だろ!

 限界集落はこっちだ!

 どれだけのライトユーザーが永遠を意味するエターナル、作品を完結させずエタって消えた!


 もし大したことなかったら……いや、それは言うまい。俺は立派な「読者様」ではない。

 評論家でも文豪でもないのだ。


 ライトユーザーとは実に軽い存在だ。

 そしてミドルユーザーとは実に幸せな存在。作品もサイトの仕組みもよく理解している。

 ヘビーユーザーは更に上位互換。

 プロ作家ともなれば色々な作品を描けるだろう。


 別に、たかが百人一首揃えても別に富士急アイランド、ってなんで変換候補に出た。まあいい不思議ではない。

 そういうこともあろうわな。

 だけどさあ……、


「ランキングなんて意味ないよ」

「PVなんていくらでも誤魔化せる」


 とか言う人いるわけよ。

 そうだろうけど、もはや何もかもどうでもええわ!

 なんだってそうだが、法だって抜け穴があるんだ、色々あるだろそりゃ!

 全然構わん! 好きにしてくれ!

 ライトユーザーからしてみたらなんかもうぐちゃぐちゃだ!

 イベントのお題が「ぐちゃぐちゃ」ってどういうことだ公式よ!


「本屋」ならば味のあるものも書けよう。

 しかし二回目のお題が「ぬいぐるみ」とはなんだぬいぐるみとは!

 成人年齢に達してる男がぬいぐるみ語ったら怖いわ!

 なんだあこのお題は!

 そして次に「ぐちゃぐちゃ」ときた!

 ぐちゃぐちゃはそっちだ公式!

 完全に計画的犯行だろ!

 遊んでるな俺達で!

 遊ぶな公式運営!

 つい乗って書いてしまったじゃないか!


 もうなんかぐちゃぐちゃだ!

 ライトユーザーを代表して言ってやる!


 ーーそれは不思議な現象だった。

 お題を見た瞬間「ああ構わん書けるよ」と、不思議と受け入れる自分がいた。


 窓から外を眺めると、晴れ晴れとした空が広がっている。冬の空は色褪せ始め、雲はたなびくよう流れていく。

 そうか、もう春の足音が聴こえているのだな。

 物悲しくも美しい、白く静かな季節は過ぎ去り、草木が芽吹く時期へと移ろう。

 学生達の卒業シーズン。

 コロナ禍ゆえ、マスク姿が居並ぶ様は思えば気の毒。

 ようやくマスクを外せる時期が来た。政府や行政が言わずとも、皆薄々感じてはいただろう。

 桜舞い散る頃合いに、君達の旅路を祝福したい。

 淡く彩られた桜並木が、君達の未来を包み込む。


 かつて小学生だった私達。

 かつて中学生だった私達。

 かつて高校生であり、そして大学生や専門学校に通っていた君達に、我々大人は応えられるだろうか。

 大した大人がいないと、社会に出てがっかりするかもしれない。 


 それでも時間は過ぎ去っていく。いずれ君達も査定されるのだ。どんな大人になっているのか、と。

 胸を張り自由を謳歌して欲しい。

 力強く次の舞台へとその歩を進めて欲しい。

 仮に立ち止まることがあっても、そんなことは日常だ。

 仕事に追われ、家事に追われ、人によっては警察に追われているかもしれない。

 決してそんな大人になってくれるな。

 社会コストが上がるから、なんて無粋なことは言わない。

 地方公務員の仕事を増やすな、なんてことも言わない。

 ただただ君達の為、幸福にして艱難な人生を乗り越えて欲しいという思いだ。


 桜並木が待っている。

 桜舞い散る花びらが、君の未来を見送ってくれるだろう。


 新たな人生の門出に、あるいは続く学生生活に。

 今という時間は二度と戻らないが、友人と語らい大切な思い出をつくって欲しい。

 人生は季節に喩えられる。

 四季折々を、颯爽と往く人でいて欲しい。

 きっと君達なら、それが叶うだろう。


 これが有名なろうRT企画主から送る、君達への気取ったエールだ。

 受け取るも笑うも自由。

 どこまでも自由に生きて欲しい。

 法は守れよ若造共。

 それが君と君の傍にいる、その人の為なのだから。


 さあ新しい生活が待っている。

 躊躇わず進め、未来を担う君達よーー


 って書いてたらぐちゃぐちゃだ!

 どこに整合性がある!

 なんだあこれは!

 流れがおかしいだろ!

 いいか若者、公式だからって真に受けるな!

 あいつら平気で遊んでくるぞ!

 付き合う相手は選別しろ!

 面倒な奴とは出来るだけ距離を取れ!

 公式自体が面倒だ!

 なんだあこのうざキャライベント!


 もうなんかぐちゃぐちゃだ!

 やめさせてもらうわ馬鹿野郎!


 お後がよろしいようで、って締めさせてもらうからな!

 あっちいけ!

 変なお題出すな!

 覚えてろ! ふざけやがって!

 言いたいこと言って、ほんとにお後がよろしいわ!

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