思い出は何色に染まるのか

とは

思い出は何色に染まるのか

 まず今回のお題を見て、しばし固まった方も多いのではないでしょうか。

 三回目にして尖ったお題が来ましたね。

 ふんわりと意味はわかっておりますが、一応確認しようと検索してみたところですね。


 ・二つ以上ものが混ざりあった様子。

 ・物事が手のつけられないほどにめちゃくちゃになった様子。

 なのだそうです。


 ……あぁ、これに該当する思い出が私、ございました。

 

 あれはそう、中学二年のスキー実習でのことです。

 希望者はナイタースキーも参加できるようになっていました。

 スポーツの神に愛されなかった私は、当然部屋待機を選びます。

 私以外の同室となった友人AとBが、ウキウキと部屋から出ていくのを左手を振って見送り、右手に握るは当時大好きだった文庫本。

 誰もいない静かな部屋で読みます。

 そりゃもう読みふけります。


 ……あぁ、やはり本は素晴らしい。

 悲しき運命に抗う主人公に心を添わせ、その世界に浸る私。

 もう感情はかき乱され、ぐちゃぐちゃです。

 そのさなか響くはチャイムの音。

 友人の帰還です。

 涙まみれの顔を拭うと、私はドアを開けます。

 ドアの先には涙ではなく、泥まみれの友人Aがいました。

 髪も顔も服も、とにかく泥だらけです。


 なんということでしょう。

 私以上にぐちゃぐちゃの人がいました。


 ナイタースキーではなく、自衛隊の演習に彼女だけが派遣されたのでしょうか。

 遅れて友人Bが現れ、状況を説明します。

 二人でふもとまでの競争をしていて、Aは勢いが止まらずにそのまま突撃したそうです。

 ……結構大きめなぬかるみに。


「いきなり世界が変わった」

 ――友人A談


「いきなりAが、私の前から消え失せた」

 ――友人B談


 ホラー映画の試写会の感想みたいなことを語っている二人を眺め、私は思います。


「余韻返せや」と。


『思い出はセピア色』なんて言いますが、この思い出に関しては「ぐちゃぐちゃの泥色」を私は刷り込まれることになったのでした。

 

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思い出は何色に染まるのか とは @toha108

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