第4話 後始末
それから1週間後。智樹の周辺は平穏を取り戻していた。
サヤカはすっかり元気になったと聞いたし、環もいつも通りクウェスのいつもの奥の席でタブレットをいじるようになった。智樹が近づけば、環はわずかに眉をよせた。
「結局タダ働きだ」
「あの、えっと。ごめん」
「お前から取ろうとは思わないし、Sasrykvaの仕業とわかった時点で俺の仕事だ」
「えっと、うん」
「ただ、掃除が糞面倒くさかった」
「ああ……うん」
「それはお前のせいだからな」
「え、なんで」
智樹にはちっとも理解できない言い分だが、智樹にはそもそもこの事件の全体像が全く想像がついていない。せいぜいSasrykvaが何かやって、環がなんとかしたというだけだ。
「お前、マシマロキングって言っただろ」
「うん」
「だからあいつはマシュマロになったんだよ」
「はぁ?」
「これが岩ならより大変だった気はするから、まあいい」
智樹は真実、首を傾げた。
この術は変数が多い。そしてSasrykvaが送り込んできた神津之介は、それらが思念であること以外には特に情報が付与されていなかった。その姿をマシュマロキングであると定義したのは智樹なのだ。だから、あの神津之介の組成変数がマシュマロになった。思念のままであれば、マシュマロになることはなく霧散した、らしい。
「そんなわけで、あの部屋はベタベタでものすごく甘い臭いで気持ち悪くなった。大変だったんだぞ、掃除」
「ごめん」
部屋中が溶けたマシュマロで汚染されたと考えると、智樹はその掃除は大変そうだなと思った。けれどもそんなことを言われても、何に見えるか聞いたのは環だろうとも思い出す。
「まぁ、いいよ。でも完全に赤字だ。あんなもん、記事に書けん」
「ToTubeの投げ銭は?」
「あれは運営費に取っておく。それで今日は何の用だ」
「えっとその、幽霊がね」
「それは今度こそ金になる話?」
「まぁ、多分?」
Fin
神津之介の呪 後半 〜呪術師 円城環〜 Tempp @ぷかぷか @Tempp
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