第13話 なんでこういう時だけ勘がいいんだよおぉぉ!
「はぁ……」
「そんなにへこむなよ……」
「藍沢くんには分かんないよ、私の苦悩が」
そんなメンドクサイ女みたいなムーブされても……。
ボウリングが終わってから、柏木はずっといじけている。
2ゲーム中2ゲーム、スコアがダントツで最下位だった柏木。ちなみに、一位の早瀬は252点、他の四人は皆150点前後で、柏木は52点だった。
「1ゲーム目よりも2ゲーム目の方がスコアが上がってるし、何度かやればそれなりに上手くなると思うぞ」
「藍沢くんと雪音ちゃんはほぼ初見であのスコアだったのに……」
「それはまぁ……センスってやつだな」
「むぅ~!」
おい、頬を膨らませるな。可愛いだろうが。
「俺はそれよりも、早瀬の点数の方がおかしいと思うけどな」
「俺は結構たくさん来てるからな」
「たくさん来るだけで250点も取れるかっつーの」
ほとんどストライクだったからな、コイツ。一瞬300点行くんじゃないかとすら思ったぞ。
ボーリング場の近くのファミレスで昼食を済ませた俺たちは、駅前の大型商業施設の中を歩いていた。
午後の予定はというと、主に女子たちのショッピングに付き合うことになっている。なんでも、夏服をみたいのだとか。女子の言うショッピングは9割がた服のイメージがあったが、あながち間違ってないのかもしれない。
まぁ、要するに俺らは荷物持ちだ。
女子達がきゃぴきゃぴしながら服を選んでいるのを、遠巻きに見ている男子三人。
稀に、女子からの「コレとコレ、どっちが良いと思う?」なんて定番の質問に答えながら、俺たち三人はダラダラと駄弁っていた。
「月海はまだしも、神崎と柏木もああいうのではしゃいだりするんだな」
ベンチに腰掛けた武山は、女子達の方を見ながら意外そうにそう言う。
「確かに、あの二人がはしゃいでるのは結構レアだな」
本音を言うと、柏木はオタク趣味全開の時にああなるのをよく見るので、あまり物珍しさは感じない。
逆に神崎は、全然喋らないわけではないが、学校ではいつも落ち着いた感じのイメージがあるので、ああやって戯れている姿は初めて見た。
「そういえば迅さ」
しばらく駄弁っていると、早瀬が何かを思い出したかのように俺に問いかけてくる。
「ん?」
「もしかしてだが、お前って唯花と前から知り合いだったりするか?」
ファッ!?
嘘だろ……。バレるような機会は無かったはずだ。まさか……屋上で話しているのを見られたとか?
とりあえず、まだ確信に至ってない可能性もあるので、とぼけてみることにする。
「なんでそう思ったんだ?」
「いや、迅と唯花って、なんかお互い慣れてる感じがあるように感じてな」
どうやらまだ憶測の域を出ていないようなので、どうにかして誤魔化すことを試みる。
「そりゃ席も隣だし、同じ実行委員だからな。他と比べて仲が良いのは当然だろ」
そう、俺達は仲が良くてもおかしくない理由をいくつも用意している。そう簡単にバレるわけにはいかないのだ。
「そういえばよ、今朝柏木の服装を見た時、迅だけが驚いてなかったよな」
(武山ぁ! お前、普段馬鹿なのになんでこういう時だけ勘がいいんだよおぉぉ!)
「言われてみれば確かに……。そこのところどうなんだ、迅?」
はぁ……これは認めるしかないか……。まぁ、コイツらなら周りに言いふらすこともないだろうし……。せめて、陰キャだったことは死んでも隠し抜こう。
「はぁ……お前らの言う通り、俺らは中学からの知り合いだよ」
「やっぱそうなんだな! 凪斗と月海は幼稚園からの幼馴染だし、俺と神崎も中学の同級生だから、俺らのグループって顔見知り三組がくっついて出来たことになるのか!」
「え? 待って、君らも同級生だったのん?」
なるほど、だから神崎は武山に対してより一層辛辣なのか。ある意味、武山は神崎に信頼されているのかもな()
「そういや迅、唯花って昔はもっと清楚な感じだったのか?」
早瀬がそう聞いてくる。まぁ、確かに気になるだろうな、それは。
「少なくとも、今よりは落ち着いた感じだったな。髪も黒髪だったし」
「へぇ、ちょっと見てみたいな」
今、彼らの頭の中では、黒髪ロングの美少女が思い浮かんでいるだろう。ぼさぼさ黒髪丸眼鏡の陰キャだっただなんて、死んでも言えないな……。
まぁ、今の柏木なら、黒髪ロングの清楚美少女にも成れそうだが。……俺もちょっと見たくなってきたな。
なんだかんだ、陰キャだったことを隠しながら話し続けること数十分。ようやく女子達の買い物が終わったようだ。
女子の買い物がアホみたいに長いのはすでに知っていたので、結構待たされる覚悟はしていたのだが、思いの外早く終わったな。
「じゃ、次は男子の服見に行こうか!」
「え?俺らのも買うの?」
「当たり前じゃん。私達だけ長い間待たせるのも申し訳ないし、荷物まで持って貰ってるんだから」
まぁ、いつまでも姉さんに選んでもらうのも気が引けるし、女子に服を選んでもらえる方が有難いか。
ということで、まだまだ買い物は続くみたいだ。
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高校デビュー初日、俺の隣の席に座っていた美少女は、同じく高校デビューを果たした地味系の女友達だった。 七宮理珠 @reazMK
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