最終話

 おじいちゃんの素敵なお話を聞いてから一月が過ぎ、すこしずつ体と視界に秋を感じ始めていた。残念ながらあの素敵なフレーズを使う機会に恵まれないままの僕がいた。いつも通り一人で留守番しているお客さんが現れた。玄関に出向くと先日の那須川さんではないが、似通った雰囲気と香りを感じさせるお客さんが現れた。このお客さん、野菊を一輪抱えておじいちゃんの弔問に現れたようだ。野菊?

「おじいちゃん?」

 もしかすると【野菊の如き君なりき】はおじいちゃんの殺し文句であったのかも知れない。爽やかな感動が薄れ、何とも言えない落胆に変わっていくのを感じるぼくだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

野菊の如き君なりき Bamse_TKE @Bamse_the_knight-errant

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ