第7話

 那須川知津代さんのあまりに美しい思い出語りに思わずキュンキュンしてしまったぼく。しばし呆然としながらも改めておじいちゃんの遺影を眺める。堅物で生真面目で、融通の利かないおじいちゃん、おばあちゃんと仲良かったけどその前にこんなロマンスがあったのね。ちなみに良子さんもすでに故人となっており、こちらも夫婦仲睦まじい人生であったようだ。ただし最後までぼくのおじいちゃんからの手紙は良子さんの宝物で、ぐちゃぐちゃになるまで読み返し握りしめ続けていたらしい。那須川知津代さんは、

「お邪魔でなければ母に例えて頂いた野菊を仏壇に供えさせてください。おじい様が私の母を思い出してくれるかも知れませんし。」

といった。ぼくはそれに快諾しつつ素敵な物語に胸を熱くした。

【野菊の如き君なりき】

 このフレーズいつか使ってみたいものだ。まあ一度きりの大恋愛だから捻り出せた素敵な言葉なんだろうけれども。

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