第6話
二人の幸せはかりそめであった。蛍の光がすこしずつ減ってきたころ、良子に縁談がきた。健三よりも二つ年上の良子、ご縁を結ぶのも早かった。二人は運命に抗うことはしなかったしできなかった。ただひと夏の思い出として、お互いの胸に刻んだ。そして最後の逢瀬に健三は良子に文を手渡した。健三は自分の想いを告げ、それを良子は受け取った。二人の淡い恋は美しい形で成就した。その書き出しは、
【野菊の如き君なりき】
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