大学生

双六トウジ

ぐちゃぐちゃで もみくちゃで メチャクチャ

桜子はビッチだ。

大学生をしている。

大学に行って何をしているのかというと、男を片っ端から漁っている。


筋肉隆々のアメフト部。

頭のいい理系男子。

大したことを成す気もないくせに大口を叩いて遊び呆けているチャラ男。


色んな男と、ぐちゃぐちゃな関係になった。


「あの男はだめね。自分のテクはすごいなんて自慢してるけど、気持ちよくない」

「アイツもだめ。強引で痛いし、ねちっこい。あと早漏」

「彼はねぇ……性格はクズだけどセックスは上手い。満点♡」


色んな男とヤッたために、女からは恨まれた。


『アタシの彼氏寝取りやがってこのクソ女!!』

「寝取られるそっちが悪い」

『ど、どうして、私の好きな人と、付き合ったの……? ちゃんと、あの人はやめてって、言ったのに……』

「根暗で奥手なアンタに彼はムリムリ」


殴り合いになったり、目の前で泣きわめかれたり、女学生たちとの関係はぐちゃぐちゃだ。


保護者からはこう言われた。

「サクちゃん。男にうつつを抜かして単位忘れるなんてのは、ないだろうね?」

白い翼を羽ばたかせ、丸い蛍光灯を頭上に浮かせた、顔の見えない男。アンゲロス正男まさおはその十三の眼で桜子を睨んだ。


実際その通りで、桜子は授業をたまにサボることがあった。

「だ、大丈夫よダディ。がたくさん助けてくれてるし……」

「それは、友達が君の不正を手伝ってくれている、ということかな? 聞くところによると、授業に出ていないのにも関わらず出席名簿に名前を書いてもらってるらしいじゃないか。」 

「……ええと、その」

「サクちゃん。桜子。これでは君の将来は、ぐちゃぐちゃだ。誰かを頼ることは大事だが、君は頼り過ぎる。一人で生きていかなければならないときが来たら、大変なことになる」


――よって、汝に戒めの呪いを掛ける。

アンゲロス正男は説教をそう締めた。


それ以来、彼女の視界は一変した。

他者が動くマネキンに見えるようになったのだ。

だから誰にも欲情しなくなった。


***


だけど、ある日マネキンに恋をした。

きっかけは、彼が落とした学生証を拾ってやったこと。

「ありがとう」

そのたった一言で、何故か桜子は胸があったかくなった。

「ね、ねぇ。アンタ名前は?」

「鏡ナルヤ」

「へんな名前」

「アンゲロス桜子もだいぶ変だよ」

「まあ確かに」

それから二人は話す仲になった。



桜子がいつもやっているように、身体を合わせることはなかった。

何故だろう。

ただ喋っているだけで、

貴方のせいで、私の頭の中はぐちゃぐちゃ。

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大学生 双六トウジ @rock_54

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