ぬいぐるみは動かない。
千羽稲穂
ぬいぐるみは何もできない。
ぬいぐるみは、ぎゅっと小さく抱きしめられて、今のは誰が抱きしめてくれたのだろうか、と意識が覚醒した。ビーズの瞳をくりっと見上げると、頬がぷっくりと膨らんで、髪がふんわりと跳ねたり波打っている人間が見えた。その人間はぬいぐるみを片腕で抱きしめて、もう片方の手で、もっと大きい人間の手と繋がっている。ゆらゆらと揺られて、どこかに連れて行かれているようだった。周囲には二人の人間以外にもたくさんの人間が行き交っていて、うるさい声があっちへこっちへと通り過ぎている。そして、たどり着いた場所は、大きなガラス張りの窓がついている場所だった。窓の外には、巨大な白い塊が大空へと旅立っている。あまりにも多くの塊が空へ羽ばたくのを見て、ぬいぐるみもあのように動けないか試してみた。だが、ぬいぐるみは動かなかった。
「座れ」
と、ぬいぐるみを抱きしめる人間は、近くのベンチに座らされた。
なんとも乱暴な物言いだろうか。ぬいぐるみは、すこしだけ中身の綿が変色しそうになった。胸のあたりが痛み出す。それは、抱きしめている者が、心細そうに抱きしめているように感じられたからでもある。
ぬいぐるみは、「気にすることはない」と人間に話しかけようとした。しかし、口は動かない。布は人つなぎになっており、そもそもそのような器官がないようだ。しかたなしに、ぬいぐるみは抱きしめ返そうと思った。が、こちらも腕は持ち上がらない。意識は明朗であるのに、ぬいぐるみはなにも出来なかった。
そして、ぬいぐるみを抱きしめる人間の背後に、誰かが座った。
「女の子?」
それは、女の子を連れていた大きな人間と同じような声色をした人間だった。どちらの人間もぬいぐるみを抱きしめている人間よりも大きい。ぬいぐるみは精一杯耳を大きくして、目を広げさせて人間の行動を観察した。
「ああ、今日はこいつを密輸入して欲しい」
「話が違う」
なにやら言い争っているようだ。人間たちは、黒い布のようなもので身をつつんでいる。下はジーパン生地で上は黒いニットといった風貌で、布にしてはさらさらしてそうだ、と思った。
「話はあってるんだよ。今回の対象は、これだ」
ぐいっとぬいぐるみの耳がひっぱられる。抱きしめている人間から無理矢理ひったくられて不快感が一気に染み渡った。持ち上げられ方も、まるで自分が臭いみたいにちょんっと一点だけつまんでいる。もっと良い持ち方があるではないか、とぬいぐるみながらに不満を吐いてしまう。
人間と人間の間に入ったぬいぐるみはぶらぶらと足をおぼつかなくさせて、二人を眺めた。一人は四角い輪郭の顔をしていて目が細い。今はぬいぐるみを見て驚いているのか、細い目から黒いビーズのような小さな瞳が覗いている。もう一人は丸顔で顔が小さい。ぬいぐるみの扱いがなっていない、とそいつに対して思うが、白く細い指はしなやかにつままれている。繊細な手つきにまあ、いいと思うことにした。
「……クマのぬいぐるみ」と細めが呟いた。
「ああ、この中にブツを入れている」
「さすがに安直すぎないか。ドラマでも取り上げられるくらい鉄板だろう。盗聴器が入っていたり、秘密の暗号を隠していたり。素人でも思いつく」
「だから、素人なんだよ。中身はただの綿しか入っていない。搭乗検査もすりぬけられるくらいに、変哲のない、な」
ぬいぐるみは、自分のことを話されていることに気づいた。だんだん雲行きが怪しくなっていく。
「だが、この綿が、ブツなんだ。新種のブツで炙って使う。見た目も中身もただのテディベアだが、含まれているものが違う」
「荷物に入れて持ち運ぶのか」
「考えてみろ、荷物の取り間違いなどあればそこで一発でアウトだ。俺らは組織の末端の末端。その時点で消されるぞ。あくまで手荷物として身近に置いて持ち運べ。だが、大の大人の男がテディベアなんて持ち運ぶなんて見た目からして怪しまれる。そこで、こいつだ」
ぬいぐるみは、もとの持ち主になげつけられた。女の子は、ぬいぐるみを受け取って、痛かったでしょう、と撫でてくれた。そしてもう一度、ぎゅっと抱きしめられた。なんと心細かったことか。男の指から少女の腕の中の安心感は天と地ほどの差があった。ぬいぐるみは動けないことを、なぜだか苦しく感じてしまった。
「この子と一緒に飛行機に乗り込んで持ち運べ」
少女は、細い指がくいこむくらい腕を握られて、もう一人の男の手前に立たされた。ひらひらした布が揺れた。
「いいか。今回のブツには注意点がある。こいつをつれて運べ。ブツには弱点がある。一つが匂い。綿自体がブツで、限りなく綿によせているが、匂いだけは消せないものがあった。検査犬に注意しろ。二つが水。水に少しでも浸されると溶ける。いいか。遂行しなければ、わかっているな。金はブツが次の仲介人にたどり着いたのを確認したところで振り込む」
「わかった」
「では、健闘を祈る」
男は立ち上がり、他の人間の中に混じった。ぬいぐるみはその男と他の人間との見分けがつかないのですぐに見えなくなった。
建物内にはたくさんの人間の足音がする。音はぬいぐるみの中に溜め込まれて、とぐろを巻いて黒々しく心を黒くする。陰鬱とした気持ちが窓の外にも反映されたのか、天窓は灰色に濁っている。
「行くぞ」
男は少女を一瞥し、立ち上がった。少女は何も言わずに男の後ろを追った。区別がつかない人間の群れの中に、二人は紛れていく。
***
ぬいぐるみが最初に目についたのは、台座に上がる人間だった。明らかに他の人間と異なっている。目の色が違う。人間の群れの中に異変がないか、しらみつぶしに凝視している。身につけている服も、ゆるやかなものではなく、腕章がごてごてと飾られ、耳から線が繋がっている。布が重なって、ふてぶてしい。青い色の正しい服装という雰囲気だ。そして明らかにその人間を見つけた少女の鼓動が早くなっていた。顔の表情は変わっていないが、顔を不自然なほどぬいぐるみに向けている。握りしめられた腕に湿気が溜め込まれる。
ぬいぐるみは、そこで初めて自分は何か人間にとって不都合な存在なのではないか、と勘ぐり始めた。ぬいぐるみ自身を持つ手は、少女の扱いよりも雑ではなかった。むしろ丁寧とすら感じた。これは、どういったことか。雑であるが、人間たちにとっては、大切なもので、少女にとっては、ぬいぐるみは不安対象であるのは。
「おい、お前名前は」
男は少女に問いかける。すると、少女は頭をあげて、さっきの不安が滞った表情を霧散させた。
「……な、い」
「まあ、そうだろうな」
めんどくさそうに会話をしつつ、ふてぶてしくごてごてした布をまとった、何かを見つけたそうな人間の気をそらす。
「そんな顔してると、こっちも危なくなる。顔をあげろ。胸を張れ。俺とお前は、今は親子だ」
「カゾク」
「家族はわかるか。親子は」
「いたから、わかる」
会話をして二人がまとう空気がほがらかになる。ふてぶてしい人間の前を一歩、二歩、と通過する。
行ける、と判断した人間は、少女の手をとって、ぎゅっと握った。
「そのぬいぐるみを落とすなよ。落とせば、お前と俺は即刻、死ぬ」
死ぬ、ということを、ぬいぐるみは想像した。先程まで意識がなかった。あの黒い闇を。人間たちにとって、それは不安よりも恐怖の事象であるのだろう。少女の胸の内の鼓動は速度を速め続ける。ぬいぐるみを揺らすのではないか、というほどだ。
少女は男の手を握り返した。
ふてぶてしい人間は上から見下げている。明らかにこちらを見ている。いぶかしげに眉をひそめている。特にぬいぐるみは視線が突き刺さっているのを感じた。
どくん、どくん、と少女の鼓動。
男の足音はさきほどよりも速い。
こつ、こつ、焦ってはいるが、怪しまれないように。
静かに、脈打つ心臓の音を隠して。
台座から二人は通り過ぎる。
そして、台座に背中を向けたとき。
ようやく、ほっと二人は肩をおろした。
「すみません」
と、そこで、ふてぶてしい男は二人の背中に声をかける。
男の足が止まる。
「あの、そこの二人!」
少女の顔が真っ青になり、男を見上げた。
どく、どく、どく、脈打つ鼓動は、悲鳴のように音をたたきつける。
少女は、目をぎゅっと瞑った。
台座から降りる音がして男は振り返った。
遠くからだだだだだと犬が駆けてきていた。体躯の大きい犬だった。手綱は後ろに垂れ流されている。その背後から犬を追いかけている人間。細い足で床を蹴り上げて、犬はぬいぐるみに飛びかかる。
「危ない!」
すかさず、男は犬と少女の間に割り込む。そのとき、腕に牙がつきたてられて、男の腕は噛みちぎられんばかりに、喰らわれる。赤い何かが飛び散って、ぬいぐるみの顔にぴちゃっと付着した。生ぬるくて、気持ちが悪かった。鉄臭い匂いが気に障る。男は犬をふりほどき、振り返る。犬は追いついた人間に手綱を捕まれて、取り押さえられた。こら、めっと叱られる中、男は少女を抱きしめていた。少しして、離れ、少女の顔や、腕を手を取り足を取り、確かめる。
「大丈夫か、怪我はないか」
少女の鼓動は緩やかに落ち着いていく。そして、あまりにも、必死な形相の男に、少しばかりの疑問が浮かんだ。
男も男で、はっと何かに気づいて、焦った表情から先程の冷静沈着な顔に戻した。
「犬がごめんなさい。いつもは、こんなんじゃないのに」
「いえ、大丈夫です」
男はふてぶてしい台座の人間を男はちらっと見て、何もないことを確認すると、作り笑いを少女と飼い主に向けた。表情にさきほどの灯火がない。傷は隠して、「甘噛みでした。全くの無傷です」と申し立てた。本当は痛くてたまらないだろうに、「じゃあ、行こうか」と少女を引き連れる。
少女と男の二人は、再び歩き出す。搭乗口まで、あと数十メートルのところだった。
***
ぬいぐるみは、暗いレールに乗せられてトンネルをくぐった。開けたところに少女が待ち構えている。「大丈夫です」と言われて、少女は安心したようにぬいぐるみを抱きしめた。男の検査にひっかからずに、少女の手をとる。丸裸にされたぬいぐるみの中身を、ぬいぐるみは男の瞳から読み取った。黒い斜線が熊の形をしており、中身はもやもやとした線が引かれている。ぬいぐるみは、自分の中身が恐ろしくなった。
搭乗口から抜けると、いくぶんか二人の表情も柔らかくなっていた。男は腕に巻かれた何かを確認して「あと三十分か」と頷いた。
飛行口の前に二人は座る。先程までいくつか二人の間を音が行き来していたはずなのに何も音がしない。
「お前は、この後、どうするとか考えたことがあるか」
音をつくりだしたのは、男の方からだった。
「家族はいた、とか言っていたな」
「みんな死んじゃった」とぬいぐるみに額をくっつけて少女は瞼を閉じた。ぬいぐるみは、睫の動きがくすぐったかった。「お父さんは戦争に行って、お母さんとおばあちゃんとおじいちゃんは、地震で建物の下敷きなった。わたしは一人。もうどこにも行くところがない」
「それで、ここにいるんだな」
「お金くれるって。それに、居場所をくれるって」
男は、「クソ」と吐き捨てた。「俺も、同じような境遇だったが。お前は、もっとクソだな。人間は、他の人間を使い捨てたり、嘘をついたりすることを学べなかったんだな」
少女は頭を傾げて、男を見上げた。ぬいぐるみは男の変化に気づいていた。先程から上がったり下がったりと、身体が揺れている。視線は少女とぬいぐるみを見つめて、痛そうに噛まれた傷をさすった。冷たく差す視線を向けることもあるが、「クソ」となじって、頭を抱えることもあった。
「俺に妹がいなければ。いや、妹がいたから、こんな感情になってるんだな」
少女の頭をそっと手を置いた。四角い顔が丸まったように見えた。口元がほころんでいる。細い目は極限に細まっていた。なだらかな吐息が漏れ出る。
「でも、俺だって食いっぱぐれたくはない。世界は残酷で、他人を蹴落としていかなきゃ生きていけないもんだ」
少女はもっと頭を傾げさせて倒れそうになった。
「ごめんな」
男の音は重量があった。
***
二人が飛行機から降りて、道なりに歩いていると、少女が足を止めた。そこには、ぬいぐるみと同じような熊の形をしたぬいぐるみがずらりと陳列されていた。どのぬいぐるみも少女をまっすぐに見つめている。ぬいぐるみは仲間がいる、と思い心の中で話しかけるが、他のぬいぐるみはうんともすんとも言わなかった。
男は、少女とともに立ち止まってぬいぐるみを見つめていた。少女の手には、ぬいぐるみが収まっている。おそらこのぬいぐるみと同じ系統のもの。と、何かがごろりと男の頭の中で動き始めた。きっとそれは、男にとっては良くない発想だった。
頭を振って、ないものにしようとしたが、どうしてもひっかかってしまう。「クソ」と口癖がでてしまう。頭をかいた。忘れよう、この感情には搭乗前に折り合いをつけたはずだ。それなのに、なぜ、男はこんなにも揺れているのだろうか。良心の呵責はとっくに捨てていた。人を蹴落としもした。人を見殺しにした。家族は戦争で亡くし、学もない自分が生きるためにとった行動は、犯罪に手を染めることしかなかった。それなのに、今、同じように戦争や災害で家族を亡くした子どもがいて、しかもこの薬を運ぶと、また被害者が増えてしまう。
ふっとぬいぐるみを見た。ぬいぐるみは純粋無垢な、ビーズの眼で男に訴えている。このままでは少女は用済みとされ殺されるに違いない。くるくると綺麗な瞳を向けて責め立てる。罪悪などないと思っていた。生きるために全て捨てたが、今になって再び襲い来る感情を恨んだ。小さな掌が男の掌にすっぽりと埋まっている。ぬいぐるみを抱えたひ弱な体躯はあまりにも儚かった。搭乗前に折り合いをつけたはずの事柄が、くるっとこうも変わるのか。
いや、この感情は、むしろ。男はめまぐるしく動く感情がある一点の光で満たされ、平らに引き延ばされていくのが分かった。
違う、むしろ、この感情が未だ自身の中にあることが救いなのだ。人を蹴落としてきたことを、見殺しにしてきたことを、罪悪があることでぬぐえることはないが、彼らの感情を掬える。それこそが、救いなのだ。
男はぬいぐるみの頭をなでた。
ぬいぐるみは、男の掌が最初よりも生ぬるくなっていることに気づいた。あの研ぎ澄まされた冷気を男は既にまとってはいなかった。
***
空港から市街地にでる光景をぬいぐるみは二人と共に追っていた。そこから男は、すかさずコインランドリーに入り、ぬいぐるみは男に取り上げられる。少女にはコインランドリーで待つように言付けた。コインランドリーに小銭を入れてスタートボタンを押す。あのタイマーが鳴り終わるまで、ここで待ち、その後「警察」か「交番」というところに行くよう少女は言付けられた。ぬいぐるみは、そこがどこか分からないが、少女と離れることに若干の寂しさを抱いていた。
「大丈夫、ぬいぐるみも一緒に行けばいい」
男はそう言うと少女をコインランドリーに置いて、ぬいぐるみと共に集合地点に向けて歩き出した。ぬいぐるみは先程よりも視線が集中する状況にどぎまぎしていた。男がぬいぐるみを持っている、ということはこれほどまでに大衆の視線を集めてしまうのか。ぬいぐるみは恥ずかしくて、目を瞑りたかったが、閉じる瞼を持っていなかった。だが、男は堂々としたもので決心が固まっているようだった。
集合地点は、公園だった。ベンチに座る女性が目に入る。少女をつれてきて、その後少女ごとわたす手はずなら、女性の方が目立たない。よく考えられていた。公園には誰もいない。子どもの影もなければ、監視カメラや人の影すらない。草が生えすぎているし、住宅の影で暗い。
女性は黒く細い煙草をふかせていた。ぬいぐるみは、近づくにつれて、綿に匂いがつかないよう祈っていた。
「ブツは」
男は女性の前に立ち、ぬいぐるみを差し出した。
女性は煙草を地面に落とし、黒いピンヒールでなじった。「女の子は」
「逃げられたよ。あの年代の子はやんちゃでいけないね」
女性は、「はあ、それなら仕方ないね」と疲れたようにゆっくりとぬいぐるみを受け取った。
それは、血のついていないまっさらなぬいぐるみだった。
瞬間、ぬいぐるみは女性の手によってはたきおとされた。ぬいぐるみは、何がなんだか分からずに、地面から見上げる。ピンヒールで腹を貫かれ、綿があふれ出す。
「こんなんで、ごまかせると思ってんの?」
次に女性は背中に隠していた小銃を男に向けた。
「思ってるわけないだろ」
音を置いて、男は女の銃を落とすために腕をあげる。
ぶんっ。
と、勢いよく回そうとしたが、犬に噛まれた傷がうずき、銃の前をかする。銃の照準は、未だ男に向けられている。
閑静な住宅街に、乾いた音が鳴り響いた。公園の並木から、鳥が何羽も飛び立った。
空へ向けて。
どこまでも遠くへ。
ぬいぐるみは、男を見ていた。男もぬいぐるみを見ていた。じわりじわりと血だまりが浸食していく。
男は、「クソ」と吐き、「でも、悪くないんだよな、これで」とぬいぐるみに告げる。ぬいぐるみは、何もいえなかった。ぬいぐるみには、開ける口がなかった。何も言えないまま、「一緒にいるよ」と世界が赤く染まるまで見ていた。
***
ランドリーが止まった音を聞いた少女は、重い扉を開いて中を覗いた。身体ごと入るのではないかというほどに身を乗り出す。
「なにこれ」
布だけになったぬいぐるみがぺたっとランドリー内に落ちている。少女がぬいぐるみを取り出すと、男の血は消えていた。
布をぺらぺらと振って、
「変なの」
少女はランドリー内にぬいぐるみだったものを置いてしまう。少女は、行く当てがない。ぬいぐるみもなくなってしまった。どうすることもできなくなって、少女は立ちすくんでいた。
ぺらぺらになったぬいぐるみだったものは、思い切って「男が言ってたところへ行ってみなよ」と言ってみた。口はついていないので声が届くかは分からないが。
すると、少女がランドリー内を見返した。恐ろしいものを見たというように、目がぎょろりと見開いている。
ぬいぐるみは、「行け」と叫んだ。
「早く、行け」
少女は飛び跳ねて、コインランドリーから逃げるように外にでる。その足音は軽快だった。明るい光の中に吸い込まれていく。ぬいぐるみは音を追った。
そして、その音が聞こえなくなると、ぬいぐるみはそっと意識を閉じた。
ぬいぐるみは動かない。 千羽稲穂 @inaho_rice
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます