Episode 3

「え、ちょっとまって」「まって」

「アリシア?レイちゃん?」

二人の発言に、俺は首を傾げる。

どうしたというのだろう。

「「ずるい」」

「なにがだ?」

「たしかに、ごめんなさい。買い物はみんなでいきましょう」

「「はい、みんなで」」

なるほど、俺は間違えていたようだ。

たしかに、平等ではなかった。

俺は、彼女たちを平等に愛していこう。そう思っていたのに。

出かけるのは、一人だけ。とは可笑しなものだ。

「ああ、すまない。気づかずに。

では、もうひとつ決めたいことがあるんだがいいかな?」

「「「はい」」」

決めたいこと。それは、交友。

今の時代、一日の労働はせいぜい数時間程度である。

自宅から行うことができるほど。

在宅ワークが基本である。

だから、交友する時間はたくさんある。

実際は、買い物すらお店に赴くということですらない。

メタバースが現実化した今の時代は、自宅にいて世界のどんなとこにでも行くことができる。

買い物をしてもすぐに荷物は届く。

ただ、人間らしい生活というのはメタバースの中だけにあるわけではない。

人と人との温もりや実際に体験したことが生活を盤石として行く。

「交友する時間をどうするかだが」

「減速領域で「却下だ」」

「「え?ではどうするのですか?」」

減速領域といのは、時間の経過を現実の時間よりも遅くするメタバースの機能だ。

「交友は、現実世界で行いたいんだ」

「性行為ということですか?」

さくらがそういったが俺は首を横に振る。

俺は、手を伸ばしさくらの髪をなぞり、頭を撫でる。

彼女は、「あっ」と小さな声を漏らす。

「スキンシップといえばいいだろうか。

君たちの温もりを感じたいんだ」

「なぜ、そんな非合理的なことをするの?」

「非合理的か・・・言い得て妙だな。

スキンシップは愛情を育む大事なプロセスだよ。

とりあえず、俺は毎日君たちとスキンシップを図るつもりだよ。

それに、さっきの買い物だってスキンシップだと思うけどなぁ。

全てをメタバースに頼ってはダメだと思うんだ」

俺は、彼女たちに意見を言ってみた。

三人がどういう答えを出してくれるのか、楽しみではある。

メタバースは、三次元空間に肉体を投影しているがスキンシップはできない。

触れることができないんだ。

確かに横にいるけど、隣にいる知ってる他人でしかないんだ。

俺は、そう思っている。

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カノジョたちと過ごす毎日で 天風 繋 @amkze

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