第8話

         誓った日

あの人と付き合って、私は色々な感情を覚えた。嫉妬、不安、悲しみ、苦しさ、切なさ、そして何より誰かを好きになる喜びを。覚えたばかりの頃は、自分じゃなくなるんじゃないかと怖くて憎まれ口ばかり言って喧嘩してばかり。その度に泣きながら部屋を飛び出して「別れる」と口にした。気まずくて謝りたいのに言えなくて…。情けない自分に、すっごく腹が立った。「ごめんなさい」の一言を言うのに

こんなに勇気がいるなんて、私知らなかったよ。

そして大切だって事も…。全部あの人が教えてくれたこと。

メールじゃなくて直接自分で謝りたかったから、勇気を出して呼び出した。

待ち合わせの30分も前に着いちゃって、待ってる間ずっと何から謝ろうかどうやって話そうか頭の中はその事ばかり。いつも時間どおりにやって来たあの人は私を見つけると、走り寄って来た。

軽く息を切らしたあの人が目の前に立った時、ようやく膨らませた勇気の風船がみるみる萎んで何も言えなくなっちゃった…。

それなのにあの人は何も言わない私を突然抱きしめ

こう言った。

「良かったぁ、嫌われてなくて…。ごめんな」

嫌われる事をしたのは私の方なのに、謝らないといけないのは私の方なのに。どうして?

「ごめんなさい…」小さな涙声で謝る言葉以外言えず、私は静かに涙を流しながらあの人の背中に腕を回す。

こんなにもこの人が好きでたまらないのに、離れるなんて出来ないのに何であんな事言ってのかな?

私はこの人を『愛してる』世界で誰よりも『ずっとずっと愛してる』そう確信した。

あの人を『愛してる』と確信したあの日から私の心に変化が起きた。

それはあの人への想いが私を強くしてくれた。私に自信をくれた。本当にありがとう…。

それから、私達はいつも一緒にいたね。海にも旅行にも行ってたくさん記念日と思い出を作ってきた。

あの人の好きな和食が上手く作りたくて、内緒で料理教室にも通ったんだ。

「おいしい!」って嬉しそうに笑顔で言ってくれるから私も嬉しくて、もっと「おいしい」って言ってもらいたいから、一生懸命勉強したんだよ。

私の誕生日にあの人はおもむろに、ポケットから小さい箱を取り出して、私の目の前で開けてくれた。

それは私の誕生石が輝くリングだった。

驚きと嬉しさで言葉を失った私の手を取りこう言った。

「これからも一緒にいたいから、結婚しよう」

「ホントに?…私でいいの?」

「お前とじゃなきゃ意味がないんだ。だから俺とこれからも一緒にいてくれないか?」

「はい…喜んで…」

涙が伝う頬を優しく指で拭きながら、そっと私の左薬指にエンゲージリングをはめ抱きしめた。力強く抱きしめる温かい腕の中で私の心も温かく、この人と素敵な未来を築いて行こうと誓った。

そして今日、あの人が待つバージンロードを歩きます…

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いとし、いとし、というココロ 立花万葉 @sumire303

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