小さなクマさん
オカメ颯記
小さなクマさん
私には相棒がいる。
小さいころから相棒はわたしの背中を守ってきた。
いいかい、これは君の盾だ。
父親はわたしに相棒を渡したときそういった。
この子は君の目となり耳となる。常にこの子と一緒に活動するように。
その日以来、この子はわたしと一緒にいる。
そんな汚いぬいぐるみ、まだ持っているのか? 高校生だろ。
何も知らないクラスメイトは、あきれたように言う。
馬鹿にしないで。この子は貴方よりもずっとすごいんだから。
そういいたいけれど、私は何も言わない。
家業のことは口にしてはいけない、小さいころから叩き込まれてきた真実だ。
行くよ。
私は心の中で相棒に声をかける。
うん、いる。
この子の目を通して、私は周りの様子を探る。妖精の軌跡がかすかに残っている。
逃げたか? それとも……
私の周りで防御陣が淡い光を発した。 攻撃だ。
このくらい簡単にかわせる。わたしが軽い足取りで後ろに下がると、今までたっていたところに花が咲いた。花は見る見るうちに枯れて、そのあとに実が残る。
厄介な。痕跡を残す敵は後始末が面倒だから、嫌い。
私の周りを妖精の光が取り巻く。
普通の人たちには見えない、わたしたちの一族だけが見ることができる光だ。
残念なことに。
クマちゃん、よろしく。
私の頼みをこの子は断らない。小さなクマが実体化して、妖精の光を追い始める。
妖精はまるで誘うかのように、私から距離を取る。
いつものパターンだ。
なめるな。
背後の防御陣が振動した。妖精は意地が悪い。こちらの弱点を突いて来ようとする。
でも、わたしの相棒を引き離したと思うのは間違いだった。
私の影が素早く動く。かわいらしいぬいぐるみの外見をぬぐい捨てて、本来の姿に戻った影は背後から近づいてきた妖精を素早く叩き落した。
影にとらわれて、もがく妖精は徐々に暗闇に溶かされていく。
ご苦労様。
私は久々のごちそうに満足している相棒をねぎらう。
いつもの夜、いつもの光景。こうして、わたしたちは町の陰に潜む妖精を狩り続ける。
小さなクマさん オカメ颯記 @okamekana001
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