そのに

「君もぴーちゃんの仲間になればいい」

「ダメだよエミリ! ボクの仲間になっちゃいけない!」


 ボクは一生懸命叫んだ。ボクの仲間に変わるということが、どんなことか。エミリは分かってない。

 どんなに叫んでも、大声を出しても、ボクの言葉はエミリに届かない。


 エミリは連れてかれて、ボクは暗い部屋に放置された。アイツはきっとおとぎ話に出てくる悪い魔女なんだ。それで、それでエミリを――。


「さぁ、ぴーちゃん。絵美里との感動のご対面だよ」

 ボクが放置されてからどれぐらい経っただろう。悪い魔女が、エミリを連れてきた。エミリは車いすに乗っけられて運ばれてきたんだ。


「ぴーちゃん!」

「エミリ……」

「聞こえる! ぴーちゃん! 良かった! またお話しできる! またママも誘って一緒にお茶会しよう!」

「エミリ……できないんだよ……。ボクらは同じぬいぐるみなんだから、動かす人がいないと、何もできないんだ……」

「えっ……?」


 魔女はエミリを撫でて、頬を舐めまわしている。

「ぴーちゃんとお話できて良かったねぇ。君はぴーちゃんと同じ存在に生まれ変わったんだ。要らないモノをお腹から全部出して、アルコールのお風呂にいっぱい入って、綿を詰めて縫って、くるんであげたんだから……」


 エミリは魔女に抱きしめられる。ググググッ、と骨が軋む音がボクにも聞こえた。

「苦しい……パパ……ママぁ……」

 エミリの声で分かる。エミリは泣いてる。でも涙はもう出ない。エミリの綺麗な目は、ガラスの瞳に変わっちゃったから。


「ぬいぐるみは愛情を受けて家族になっていくんだ……これからは私がたくさん愛でてあげる。ぴーちゃん共々よろしくね、絵美里ちゃん」

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届かぬ声 ガラスの瞳 大柳未来 @hello_w

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