第45話 恋ばなと夢の国15

「夜空君、次は私の番ですね!!」日向は僕の腕に抱きつく様にして満面の笑顔を見せてくれた。僕を支点に大はしゃぎでグルグル回る。可愛いなぁ可愛いけど……。


「ひっ、ひなっ日向ー!!目が回るからー!!」


 はしゃぐ僕達を見ていたのだろうか周りの人達がそれを見て大笑いしている。


 少し照れながらも、日向のオレンジブラウンの頭に手をおいてぐるんぐるんしてやると、日向はアワアワ言いながら軽く目を回したようだ。「もう夜空君だって人の事言えないじゃないですか!!」必死に僕の手から逃げ出して、口びるを尖らしながら怒った振りをする日向。そして不意に微笑むと、


「夜空君は笑顔でいてくれないと嫌です!!その、元気……出ましたか?」後ろに手を組んで優しく微笑んでくれた。


「日向……」僕を元気付ける為にわざとはしゃいだ振りまでして……。

「元気……出たっ!!」僕は、わざとふざける様に強くぎゅっと抱き締めた。

「夜空君、痛い痛いですよ!!嬉しいけど、痛いです!!」僕は笑いながらすぐ手を離す。


 普段なら恥ずかしくて出来ない様な事も出来てしまうのは夢の国の魔法のせいなのだろうね。少し離れた場所からの、友人達の視線と周囲の人達の生ぬるい視線に気付いて、恥ずかしさに少し魔法は解けたみたいだけど。



 さぁ、次のアトラクションは早のりで予約しておいたパンダのポーのタイヤチェイス。


「今の所、夢の国で一番大好きなアトラクションなんです!!」嬉しそうな日向。ワクワクしながらアトラクションの内装を眺めている。


「今の所?」


「あっ、はい。新しく出来たアトラクションで入った事が無いアトラクションがありますから」そう言えば、ここ数年で新しいアトラクションがいくつか出来ていたよね。


「そっか、モンスター&プリンセスのお城を探検するのと……後何あったかな?」最近来てなかったからパッと出て来ないな。


「ゴーストハンターとかも、私無いですよ」

 ゴーストハント?僕が解らずに首を傾げていると日向が、

「映画でやってたゴーストベイビーのアトラクションですよ。懐中電灯みたいなライトでゴーストを探すんです。」

 成る程、ゴーストベイビーか!!あれはちょっと前にレンタルDVDショップで借りてきてうさぎと見たなー。

 ゴーストの世界に人間の女の子が迷い込んで大騒ぎするお話だ。デジタルCGで作られたキャラクターが可愛らしいんだよね。

「夜空君はここが終わったら次、何乗りたいですか?」

「え?次か、そうだな……」


 少し真面目に考えて見た。コースター系も良いよな?でも、新しく出来たアトラクションとかVR系も良いかも?でも、色々あったし少し疲れたかな?


 日向を見た。あれだけの事があったのに、いつもと変わらない笑顔。何となく力が抜けた気がした。

「ねぇ日向、少しパレードやショー見るのも良いと思わない?」


「えっ?」


 少し考え始める日向。やっぱりアトラクションの方が良かっただろうか?折角遊園地に来たんだから遊んだ方が良かったのだろうか?それとも……。


「良いですねパレード!!」


「良いの?」何となく呆気ない感じがして拍子抜けした気がする。

「夜空君が言ったんじゃないですか?」


「そりゃ、そうだけど」遊園地にきてアトラクションに乗らず、パレードを見るためだけに場所を取るのは、年に何度も来るような人達とは違い、たまに来る様な僕達にはリスクが高い気もする。


「夜空君、知ってますか?今日集まってから、一緒にアトラクションに行って待って笑ってお話しして、全部が全部楽しいんです」

 握った手を更に強く握る。日向の嬉しそうな顔を真正面からじっくり見ると、流石に少し恥ずかしそうにはにかんだ。


「じゃ、じゃあパレードの時間調べないと」パンフを取り出そうとする日向を手で制し、

「13時と16時の二回かな?ナイトパレードは19時30分からだと思ったよ」


「凄い、良く覚えてますね!!」


「勿論、予習復習は欠かさないからね」そんな話をしている内にアトラクションに乗る順番は来て。


「行きましょ!!」手を取り合って、エント

 ランスを進む。入り口付近で、二人が手を降って待っていてくれた。夕凪さんが手を招き猫の様な格好をして、「にゃあにゃあライオンです」と先程の日向の真似をするので、僕と千早さんはそれに堪えられ無くなり、吹き出してしまう。


「ネコじゃないです、ライオン何ですから!!」真っ赤な顔で恥ずかしがる日向に、更にみんなで笑ってしまった。


 第一印象はピンクのタイヤがあるものか?だった。言った途端に、皆に大笑いされたけど。どうやら、コーヒーカップの様に真ん中のハンドルでタイヤの回転数を変える事が出来るらしい。


 後で、ゆっくり行こうね?と日向に言おうと心の底から思った。


「そうだよね?ピンクやオレンジのタイヤの車走ってたら、目がクラクラしそう」笑いながら僕の真向かいに座る日向に僕は赤い顔をして、


「えっ?あの……ひっ日向、ほら!?」そう言って着ていた上着を日向の膝に掛ける。少し慌てて忠告すると日向は、少しハテナな顔をして、

「あぁ、大丈夫ですよ!!」とスカートを捲し上げた!?

 待て待て!?と手をアワアワさせて慌てていると、

「大丈夫ですよ?その見えても大丈夫な様に短パン履いていますから」ニッコリ笑って無邪気に笑う日向に、

「あのね!?いくらその……見せても良いとはいえ、その……そういう事しちゃ駄目……だよ?」段々尻窄みに小さくなる僕の言葉に、日向も恥ずかしくなった様で、

「あの、ゴメ……ね?」僕ら二人を乗せたピンクの大きなタイヤはゆっくり回り始めた。


 ストーリーに沿って動くタイヤのアトラクションはとても楽しかった。恥ずかしくなった日向が思いっきり真ん中のハンドルをグルグルし始める迄は……。







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恋ばなしようか?夜空君 まちゅ~@英雄属性 @machu009

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