スクバのマスコット
葉月りり
第1話
私の住む街では高校生のスクールバッグはみんなリュックサックです。私の娘も高校入学の時に自由の女神のついたリュックが欲しいと言ってお友達と買いに行きました。
女子たちはそのリュックに思い思いのマスコットをぶら下げます。小さなぬいぐるみやフィギュア、アイドルのプレート。その中になんとも私には、良さが理解できないものがあります。私の娘も付けているのですが、それはキャラクターの頭だけのぬいぐるみです。フェイスマスコットとか言うらしいのですが、私にはあれが〝生首〟に見えるのです。普段は私も可愛いと思っているキャラクターが頭だけになるとなんか気味が悪い。
夢の国のネズミの生首、クマの生首、イヌの生首…。それが西洋お化け屋敷の隣で売っているところを想像してゾゾゾーっとしました。
その話を娘にしたら、その日から
「やだー、お母さんが変なこと言うから私も気味悪くなったー」
と、フェイスマスコットをつけなくなりました。そして
「気味悪いけど、目鼻がついていると捨てにくいの。どうしたらいい?」
と、色々なキャラクターの生首の入ったカゴを持ってきました。コロコロ丸っこい生首がカゴに積まれている様子は逆に生首感が薄まって、お団子みたいです。そこで私は気がつきました。
「身体をつけてあげればいいんじゃない?」
「えー!お母さんそんなこと出来るの⁈」
「任せてよ」
と、私は生首のカゴを受け取りました。
素人がそう簡単にそのキャラクターの身体が作れるわけはありません。でも、首の下に何かあれば身体のような気がしてくるかもしれないと思ったのです。
まず、目の荒い布で小さな袋を作ります。その中に良い匂いの石鹸を小さく切ったものを入れて、生首の下に縫い付けます。
次にハギレでギャザーを寄せたスカートのようなものを作って、さっき縫い付けた袋を覆うようにまた生首に縫い付けます。布だけではつまらないので、色々な飾りもつけてあげましょう。
夢の国の女子ネズミには赤と白の水玉模様の布。首周りにパールビーズのネックレスをつけてあげました。
同じく夢の国のクマさんは、顔と同じ色の布に赤い布を重ねてみました。
緑色の三つ目小僧には銀色の布にスパンコールを散りばめてSFチックに。
愛と夢の国の白猫さんにはピンクのサテンにレースの襟、ピンクのリボンもつけてあげましょう。
こうしてコロコロの生首たちは、なんとも華やかな〝てるてる坊主〟になりました。そしてとってもいい香り。
娘は生首てるてる坊主たちを見て、「なにコレ、ウケる〜」と大笑い。香りがいいと気に入って、次の日にリュックサックに付けて学校に行きました。生首てるてる坊主は娘のお友だちにもウケて、うちにあったものはみんな貰われていきました。
娘は今日もリュックにてるてる坊主をぶら下げて学校へ行きます。
どうぞ娘たちのスクールライフが晴れやかなものになりますように。
おわり
スクバのマスコット 葉月りり @tennenkobo
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