ベッドの上にはぬいぐるみ
じゅき
第1話 日記帳の後ろから二ページ目
この日記帳を読んでいるキミには特別に、わたしの姉と妹のことを教えてあげよう。
え? わたしが一人っ子だって? そのとおりだよ。
でもわたしには姉妹がいるんだ。ぬいぐるみのね。
生き物じゃないって馬鹿にしないでよ。わたしの大切な家族なんだから。
姉はわたしの頭から腰くらいまでのサイズがあるクマのぬいぐるみ。
わたしが生まれる少し前に母さんが買っておいてくれたらしい。
幼いころのわたしは嬉しいときも悲しいときも、ずっと彼女と一緒に過ごした。わたしは覚えていないのだけれど、母さんが言うには姉と一緒に行けないからと親戚の家に泊まりに行くのを嫌がって駄々をこねたらしい。
母さんが仕事でいないとき、母さんに怒られたとき、母さんとケンカしたとき、寂しい想いをしたらいつも姉のもとで泣いた。
何も言ってくれないけれど、じっとわたしを受け止めてくれる。そんな姉の存在にわたしはいつも支えられた。
怖い夢やかみなりのせいで眠れないときは一緒にベッドへ入ったよ。
そんなわたしに妹ができたのは小学生のころ。
母にねだった誕生日プレゼント。妹はわたしの顔くらいの大きさのペンギンのぬいぐるみ。
家族と外出するときはおおきなリュックでいつも一緒にお出かけ。
姉と過ごす日々に妹が加わって幸せは何倍にも膨らんだ。
特に思い出深いのは、姉と妹をいっぺんに抱きしめたときだね。
妹がうちに来たばかりのときはわたしの腕の長さが足りなくて、姉と妹をいっしょに上手く抱きしめられなかったんだ。
けれど、わたしが大きくなって腕も長くなったら上手いこと抱けたんだ。
その日は部屋にいるあいだずっと姉と妹を抱きしめながら過ごして、結局そのまま眠ってしまったよ。
毎日ベッドの上で待っていてくれる二人のおかげで、わたしは毎日楽しく過ごしてる。
そうそう、わたしの姉妹の名前を言ってなかったけど、それはここでは言えないよ。
どうしてもわたしの姉と妹の名前を知りたかったら日記を盗み見するんじゃなくて、わたしに直接聞きにおいで。
もしも気分が乗ったら、ここに書ききれなかった思い出といっしょに教えてあげる。
ぬいぐるみのタグは絶対に見ちゃダメだよ。それは反則なんだから。
ベッドの上にはぬいぐるみ じゅき @chiaki-no-juki
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