サポ限に書いていたこと78 親近性と新規性について・1
◆はじめに
作品作りでは、常に新しい「王道」が求められています。
新しい王道を考えるためには、ます「王道」がなにかを理解する必要があります。
◆王道とはなにか
王道とは、「最も一般的で確実な方法」を指します。
文学の世界では、パターンやテンプレートだけでなく、広く受け入れられているストーリーテリングの方法やプロットの構造、アプローチを指します。
◆王道の活用
物語を書きたいと思っているけれどもどう書いていいかわからない人に対して、最初にアドバイスすることは、「テンプレート」を使うことです。好きな漫画やアニメ、小説などの作品を思い浮かべて、その作品を真似ることからはじめます。「学ぶは真似ぶ」であるので、真似をすることで、作品の作り方を学べます。
最後まで書き上げることで、手直しできます。そうして出来上がった作品を他人に読んでもらうと、「どこかで見たことがある作品だね」とか「つまらないね」といった感想をもらうことがあります。
その作品が「王道」であったとしても、相手の趣味ではなかったり、上手く書けなかったり、あるいは推敲が足らないのか、新しさがなかったからでしょう。
「物語が予想どおり展開されたほうが安心して読めるから好き」という人にとっては、テンプレ作品は好まれるでしょう。
時代劇や子供向け作品の特撮などにみられる勧善懲悪だったり、変身シーンや決め台詞だったり、立ち回りの場面が見たいのです。
反対に、予想を裏切る展開がなければ面白くないという人もいます。SFやミステリー好きの人がそうだと思います。
◆新しい王道の考え方
新しい王道とは、親近性と新規性・新奇性の割合だと考えます。(以下、新規性で統一)
親近性とは、みんながすでに知っている、馴染みのあることであり、人々が理解し、受け入れやすくするための要素です。
新規性とは、新しさや作者の独自の切り口であり、他のものと区別され、注目を集めるための要素です。
これらのバランスは非常に重要です。
親近性が高すぎると既存のものと区別がつかず、新奇性が高すぎれば理解されにくく、受け入れられなくなるからです。
一般的として、風景には新規性、人の顔には親近性を高く求める傾向にあります。
見慣れた景色とは違ったものを求めて旅行や美術、芸術に触れるのも、いつもとは違う新しいものを見たいから。
出かけ先から帰宅して家族や友達と会うことで落ち着くのも、親しみのあるものを求めてのこと。
創作にも同様なことがいえます。
風景はキャラや設定、舞台。小説なら文体、漫画なら絵柄など。
顔は、主人公や登場人物の年令や性別、感情。パターンなど。
これらに親近性と新規性を与えて、物語が作られています。
作品を書くとき、新しいものを意識するあまりに「流行」や「ウケ」を狙って作者自身が興味も関心もない世界をえらんで書くと、リアリティーのないお話が出来上がることがあります。
別の言い方をすれば、作者の血肉が通っていない作品。
駄作、つまらない、なにがいいたいのかわからない、本当に作者は面白いと思っているのか、と疑いの目を向けられかねない作品です。
貶されるだけならまだしも、あの作品に似ているとか真似をしたパクリだらけとか、ひどい悪評に終わってしまいかねません。
どうせ真似をしてつくるのであれば、作者自身の得意なテーマをえらんで作ったほうが、評価されやすいでしょう。
◆親近性を出す方法
小説に親近性を出すには、つぎのようなコツがあります。
・読者に身近な舞台設定を選ぶ
読者が日常的に過ごす場所を舞台にすることで、物語に入り込みやすくなります。
たとえば、年齢の近い子供たちが、一か所に集まって多くの時間を過ごす「学校」は、独特で濃い人間関係がくり広げられる場所です。読者が中高生なら、自分に近い「学生」というキャラクターに感情移入しやすくなります。
・読者の年齢に近い主人公を設定する
主人公の年齢や性別を読者に近いものにすることで、感情移入しやすくなります。若者向けの小説で、主人公を同世代にすることが多いのは、読者との親近性を高めるためです。
・定番のパターンを参考に、オリジナリティを出す
人気が高く定番な学園ものでも、既存パターンを参考にしながら物語を広げていくのがいいです。多くの読者が求めているのは、「待ってました!」という安心感。定番パターンをおさえ、どれだけ独創的な要素を入れられるかが見せどころです。
・読者の感情を揺さぶる展開を盛り込む
喜び、悲しみ、怒りなど、読者自身が経験したことのある感情を物語の中で描くことで、読者は物語に引き込まれていきます。特に、主人公が問題を乗り越えて成長していく過程は共感を呼ぶでしょう。
・知識や経験を活かせる要素を入れる
読者が知識や経験を活かせる要素を入れることで、物語に参加しているような感覚を得られます。たとえば、主人公が悩んでいる問題に、読者自身の経験を重ね合わせて考えられるようなエピソードを盛り込むのも一案です。
以上のように、定番パターンを参考にしながら、オリジナリティーを加えて読者に親しみを提供します。感情を揺さぶる要素と、知識や経験を活かせる仕掛けを盛り込むことで、親近性を出すこともできます。また、パターンやテンプレートは物語作りの土台となり、これにより読者との距離を縮め、物語の魅力を引き立てます。
◆新規性を出す方法
小説に新規性を出すには、次の様な点に注目する必要があります。
・斬新な設定や舞台装置の新規性
編集は、物語全体に新鮮味を与える設定や舞台装置の新規性を重視し、面白そうかどうかで企画の可否を判断されます。
舞台となる場所の参考写真や動画を複数用意し、具体的な描写を心がけると、統一感のある舞台設定が可能となり、より臨場感のある世界観を提供できます。
・キャラクターの新規性
既存キャラとの差別化を図るために、外見だけでなく、性格や行動パターンに独自性をもたせます。
読者の共感を得るために、不幸な境遇や欠点を持たせて魅力を出し、人間味ある言動や行動をさせます。また、物語性の付与として過去や目標、人間関係を設定するなどの要素を組み合わせることで、キャラクターの新規性を出すことができます。
新規性をより高めるには、設定や舞台装置の新規性とセットに、ストーリー展開する必要があります。
・文体の新規性
意表を突く書き出しや奇抜な仕掛けによって、読者の興味を惹き付けます。 有効な方法の一つに、タイトルと反対の書き出しをするやり方があります。
一つの文に一つの情報だけを含める「一文一義」の原則を意識することも重要です。長い一文をわけることで、読みやすくなり、それぞれが明確に伝わります。
専門用語を適切に使用することでも、文体に新規性を出せます。 とはいえ、多用すると読みにくく、伝わりづらくもなります。読者層や作品内容に合わせた言葉の選択が重要になります。
作家独自の文体や言葉遣いの新規性も追求できますが、あくまで読者にわかりやすく情報を伝えることが最優先されます。
新規性ばかり追求するのは、程々に留めたほうがいいです。
◆親近性と新規性のバランス
プロ作家の作品を読むと、常に斬新なストーリーを生み出しているわけではないのがわかります。 むしろ、既存パターンを上手く活用しながら、部分的に新規性を盛り込んでいます。設定・舞台装置に新規性を持たせつつ、ストーリー展開自体は定番のパターンに則る手法がとられています。
完全に新規ストーリーを生み出すのは困難ですが、設定・舞台装置に新規性を持たせることで、既存の型に新鮮味を与えられるのです。キャラクターや文体の新規性は、補助的な役割に過ぎません。
新規性の追求は程々にし、読者が楽しめる作品作りを心がけることが大切です。
新規性を出す方法として、作者が好きなもの、興味あるものを用いるのも、一つの方法です。
作家が熱量を込めて書けるのは、自分の好きなものや興味のあるものについてです。 また、作家の経験や知識を活かすことで、リアリティーある設定や描写ができます。
ただし、好きなものや興味のあるものだけに頼っていては、読者に受け入れられない可能性も出てきます。 時代のニーズや読者の求めるものを意識しながら、自分の感性を活かすバランスが大切だと思います。
まず最初に、「自分がどんなものに興味を持っているのか」を考えます。
つぎに、興味あるものを読者に伝えるために、「対照となる反対のものがなにか」を考えます。
そのあとで、「時代のニーズや読者の求めるものはなにか」を意識しながら探していきます。
つまり、好きなものや興味のあるものを活かし、新鮮さや斬新さを出しながら、読者が求めるものを書いて心を掴むのです。
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