サポ限に書いていたこと73 恋愛について・1

恋愛について


◆はじめに


 日本をはじめ、先進国の出生率は低下傾向にあり、未婚率も増加傾向にあります。

 そんな現代において、どのような恋愛小説が求められているのかを知ることは、創作する上で重要だと思い、恋愛に関することをまとめてみることにしました。

 ミステリーやファンタジーであっても、恋愛要素がストーリーの幅を広げたり、アクセントとして用いたりすることはよくあるからです。


 結論として、不倫ものより純愛ものが増加傾向にあります。

 失恋した人が、失恋を乗り越えた登場人物の成長物語なら自分も立ち直れる希望が持てるかもしれないと思い、立ち直るきっかけを得るためとして求める限り、ハッピーエンド以外の作品がなくなることはないでしょう。

 現代の恋愛小説には、多様性と等身大のリアリティが求められ、恋愛以外の価値観や切ない恋も人気です。

 時代に即しながら、読者が求めている作品づくりをしていくことが寛容と思います。

 



■恋愛の歴史とその変遷



◆哺乳類と鳥類の恋愛


 哺乳類の中で一夫一婦制(単婚)を取っている種は、全体のわずか三パーセントです。

 鳥類は種全体の九十パーセントが社会的に単婚とされていますが、性的には極めて乱脈であり、多重交尾や、つがい外交尾は日常茶飯事です。



◆一夫多妻制


 ファンタジーにみられる一夫多妻制では、浮気や不倫はなくなると思われがちです。

 実際には、二番目の妻と結婚する前の交際期間中は、事実上の不倫となります。

 また、見方を変えれば、「ごく一部の社会的地位の高い男性や経済的に裕福な男性が、大半の女性を独り占めしてしまう社会」「大多数の男性は、一人の相手も見つけられず、生涯にわたって独身を余儀なくされる社会」です。

 多くの男性にとって、受難以外の何物でもないでしょう。



◆不倫について


 不倫という言葉が現在の意味で使われるようになったのは、比較的最近です。テレビドラマや小説によって、不倫が世間的に定着しました。

 そもそも、不倫は曖昧な言葉であり、浮気と純愛の間を表すものとして用いられています。

 浮気と軽い言葉では表現したくないが、純愛と呼ぶには無理がある。それなりに誠実な関係でありながら、良くも悪くも曖昧な言葉として「不倫」が使われたのでしょう。



◆古代ギリシャとローマの恋愛観


 古代ギリシャでは、立派な男性が少年を愛することが一人前とみなされていました。とはいえ、男女の恋愛は普通にありました。

 また、奴隷制度が存在する中では、領主が性的欲望を満たすために奴隷を使うことが許されていました。領主が奴隷に心惹かれることもあり、奴隷が領主をコントロールして自由市民に成り上がることもあったといいます。



◆キリスト教の影響


 キリスト教は性的なものを罪とみなす傾向が強く、人々は禁欲的になっていきました。

 恋愛は精神的なもの、結婚は生きる手段とする考えから、本当の恋愛は結婚の外、つまり婚外恋愛にしかないと考えられるようになっていったのです。

 これは現在でも、ヨーロッパや日本で一部で強い影響力を持っています。



◆中世の宮廷恋愛


 ヨーロッパにおいて「恋愛は十二世紀の発明」と言われています。

 キリスト教の道徳観の中、性の乱れが問題視されていた時代。

 純粋な恋愛を歌う「トゥルバドゥール」と呼ばれる吟遊詩人たちが登場しました。

 彼らは、身分の高い既婚の貴婦人たちに惹かれ憧れたため、これらの愛は報われることは決してありません。それゆえに、熱く燃え上がるのです。

 このような恋愛は、「騎士道恋愛」「宮廷風恋愛」と名づけられました。騎士にとって恋愛は、自分に試練を課し、困難を乗り越えて精神を高めていく行為でした。

 この騎士道恋愛が西欧的恋愛の原型。

 つまり「不倫」が根底にあるといえます。



◆ロマンティックラブ


 近世において宮廷恋愛をモデルにした小説が流行ることで、「ロマンティックラブ」という新たな恋愛が産み出されました。

 これは現実よりもヴィジョンが、理性よりも感性が大事だという風潮が高まり、それがロマン主義になっていきました。

 今でもディズニー映画などはロマンティックラブ全盛であり、世界中でウケています。



◆ロマン主義の広がりと革命の影響


 革命で身分制度が壊されたことが、ロマンティックラブが一大ムーブメントとなった要因になりました。それまでは自分の人生のレールが決まっていたので、生活の手段としての結婚があり、恋愛はそれに付随しているものでしたが、「恋愛こそが人生の一番の価値なんだ」という考えが民衆にまで瞬く間に広まりました。



◆日本の恋愛観


 明治時代に日本にもロマンティックラブが輸入され、現代につながっていきました。しかし、日本では西洋的な恋愛の真似事を必死にやっていたという感じで、その結果、西洋人には意味不明なガラパゴス化が起こったと考えられます。

 現代では、恋愛は個人主義の上に成り立つものとされています。しかし、日本では恋愛と結婚が密接に結びついており、人の目や経済のことを気にする傾向があります。

 ヨーロッパでは結婚と恋愛は別です。ヨーロッパとくにキリスト教徒の場合、恋愛をし、結婚をしたら神様の前で「一生一対一でいます」と誓うことで、恋愛と結婚が結びつくのです



◆大人の恋愛


 大人の恋愛では「人間は所有できない」考えが重要で、相手を所有しようとしたり、嫉妬に囚われて束縛したりせず、軽やかに過ごすことが求められます。



◆年齢差と恋愛


 フランスでは年齢はあまり気にしないようです。年齢や外見といった身体的なものを超えた、精神的な魂のコミュニケーション、それが恋愛なんだという考え方があるようです。



◆想像力と恋愛


 二十世紀最高の作家と呼ばれるフランスの小説家マルセル・プルーストは、「恋愛における快楽などは、基本的に想像力の問題。美しい人は想像力のないアホに任せておけ。想像力さえあればもの凄い世界を味わえる。それが恋愛、それが人間。年の差がどれだけあろうと関係ない。逆に想像力が働かないとどんなに綺麗な人と恋人になったとしてもすぐに慣れてしまう。一番大事なのは想像力である」と言っています。


 以上のように、恋愛の価値観は時代や文化によって大きく変化してきました。

 現代では、恋愛は個人の自由と尊重に基づくものとされていますが、その背後には長い歴史と多様な文化が存在しています。

 それぞれの文化や時代が持つ恋愛観を理解することで、より深い恋愛の理解につながるでしょう。また、それぞれの人が自分自身の恋愛観を持つことが重要であり、それが多様性を尊重する現代社会においては特に重要となります。

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