サポ限に書いていたこと71 読者を共感、感情移入させるには・2
◆読者を感情移入させるには
一、一人称視点にする
主人公が自分の感情や考えを直接語るシーンを作り、その感情や考えに読者が共感できるようにします。
例えば、「私は彼女の笑顔が大好きだった。それは太陽のように明るく、私の心を満たしてくれた」といった表現を使います。
手近に感情移入させるならば、一人称が共感を得やすいです。
なぜなら視点が固定されており、主人公である「僕、俺、私」が思っていることや感情を語るため、読み手に心情が伝わりやすく、同化した形で物語の世界に入っていけるからです。
会話の文章は口語体で書き、地の文を文語体で書くのが一般的となっています。
一人称の場合、地の文も一人称視点となっているモノローグで書けるため、読みやすく、わかりやすい文章で表現できるのです。
三人称の場合は、地の文はどうしても表現や言い回しが硬くなってしまい、面白みに欠けてしまいます。
また、ヒーローやヒロイン、名探偵など、読者も主人公とおなじ気分で読むことができるのも、一人称視点で書くメリットの一つです。
ただし、デメリットもあります。
視点となっている人物は、心理や考え、行動のいっさいを読者に明かすことになります。
洗いざらいぶちまけることになるので、読者に筒抜けとなり、人物の魅力や厚みを出せなくなります。
心情にこだわった文章を書けば、主人公の気持ちや考えていることがものすごくわかるのだけれども、辛くて大変だったけど頑張り
ましたみたいな、平易な印象しか感じない。
しかも、心情にこだわるあまり、主人公がどこでなにをしているのかがわからず、読み手が場面を想像できなくなってしまい、結果として共感できなくなることもあります。
心情を書きやすい一人称だからこそ、陥りやすい点です。
そういう場合は、心情描写だけでなく状況描写を入れることを心がけてください。
他にも、視点となる登場人物はカメラや語り手の役回りを担うので、主人公自身の姿がほとんど描写されません。見た目の容姿が描けず、魅力を損なう原因になります。
つまり、見た目のキャラ立てがしにくいのです。
防ぐには、第三者からみた主人公をセリフで書く工夫が必要になってきます。
三人称視点が、共感させられないわけではありません。
やり方は、一人称視点とおなじ。登場人物の思考、感情、動機などの内面をくわしく描き、読者がその人物の立場に立って考えられるようにすればいいです。
また、登場人物の弱さや葛藤を描くことで、読者の共感を呼び起こすことができます。
三人称には、複数の視点を切り替えて描写できる利点があります。
複数の視点から、主人公の性格や背景の違いを生かし、それぞれの視点で描くことで立体的な人物造形ができ、読者の理解を深めることができます。
デメリットとして、視点ブレが上げられます。
他のキャラに視点がずれると、読者としては興味が薄れ、共感できなくなるおそれがあります。
読者は主人公に感情移入したいのです。
他キャラクター視点の話は、読者からすれば説明であり、本筋から脱線したスピンオフの印象。ストーリーにとっては回想と同じく、ブレーキを踏んでいる状態でもあります。主人公の活躍を知りたいために、読まずに飛ばすことも考えられます。読み続けてくれるならまだマシで、中には読むのをやめてしまう人もいるでしょう。
そうならないためにも、最近は三人称一元視点(三人称一視点、三人称単一視点、三人称固定視点ともいう)で、視点を主人公である語り手に固定した書き方をした作品が多いです。
二、キャラに弱み・欠点をつける
主人公が何かに挑戦する際、その挑戦が困難である理由を明確にします。例えば、「彼は音楽が大好きだったが、彼の家族は音楽家になることを反対していた」といった設定を作ります。
完璧なキャラでは共感が沸きません。
読者が完璧な人であれば、完璧なキャラに共感できるでしょう。 とはいえ、そんな人は滅多にいません。
なにかしら弱みや欠点を持って生きています。
そんな読者に共感を持ってらうためにも、キャラに弱みを付ける必要があるのです。
弱みがあれば、「この子には、こんな弱みがあるのか」「この子にくらべたら、自分のほうがマシ」と読者に抱かせ、感情移入させらることができます。
弱みが、読者自身と同じなら、共感し、より深く感情移入するでしょう。
『スラムダンク』の作者・井上雄彦さんは、成功の秘訣に「登場人物すべてに、かならず一つ欠点を作ること」と答えています。
なんでもできる登場人物は絶対に作らないそうです。
桜木花道は才能はあるが、バスケット経験がゼロ。
流川楓はテクニックがあるものの、デイフェンスに穴があり、体力もない。
宮城リョータは敏捷性に優れているが、身長が低い。
三井寿は天性の素質を持ちながら、グレてバスケ部を離脱していたブランクがあり、体力に問題がある。
赤木剛憲はディフェンスに優れ、リーダーシップと情熱はあるが、ゴリラ顔。
みんな欠点があるから支え、活かし合い、いいチームとなって面白いドラマとなるのです。
「欠点」とは、欠けているのではなく、面白くする上で欠かせないものなのです。
三、読者との共通点を持たせる
主人公が日常生活で経験するような出来事を描きます。例えば、「彼は毎朝、混雑した電車で通勤していた」といった描写を入れます。
読者との共通点を考えるとき、作品の読者層を考えるといいでしょう。ジャンルやストーリー内容によって、読者層の年令や性別がわかるはずです。
思い浮かべたら、登場人物と読者との共通点を考えます。
勉強嫌い、運動が苦手、カレーが好き、肉が好き、甘いものが好き、住んでいる場所や地域、学校など。
ラノベや異世界転生モノで、学園を舞台にした作品が多いのも、読者層である十代の若者との共通点を考えたからといえます。
四、努力の過程、戦いの構図をみせる
主人公が目標に向かって努力する過程を詳細に描きます。例えば、「彼は毎日、夜遅くまで練習を続けた。彼の手は痛みで震えていたが、彼は止まらなかった」といった描写を入れます。
恋愛なら好きになってもらえるまでの、ファンタジーなら強くなるまでの努力の過程を描いていきます。
ワンピースはないですが、ドラゴンボールやナルト、鬼滅の刃には、強くなるための修行が描かれています。
修行する姿を見ることで、読者は強くなるまでの過程を知り、強敵と戦う際に感情移入します。
ほとんど修行シーンのないワンピースも感情移入できるのはなぜかといえば、戦いの構図が描かれているからです。
子供がスーパー戦隊やプリキュアを喜んで見るのは、主人公になりきっているわけでもなければ、主人公を応援しているのでもありません。
「正義がんばれ、悪は滅べ」という戦いの構図に感情移入しているからです。
戦いの構図に対して、ヒーローやヒロインである主人公に「こうなってほしい」という願望を抱かせたら、感情移入できるのです。
重要なのは、敵対する悪です。
モンスターやライバル、ときには災害や病気も悪となります。
ストーリーに悪が登場すれば、読者は本能的に危険を感じ、悪の根絶を願うのです。
恋愛で、政略結婚させられそうになっている資産家の息子には好きな人がいたとします。親が決めた相手と結婚したら不幸になるという物語に対して読者は、親が決めた相手ではなく、自分が好きになった人と結ばれてほしいと願うものです。
漫画も小説も同じです。
登場人物の努力の過程、戦いの構図を見せて感情移入させてください。
五、ターゲットを決める
特定の読者層をターゲットに設定し、そのターゲットが共感しやすい要素をストーリーやキャラクターに取り入れます。例えば、若者をターゲットに設定した場合、SNSや音楽フェスティバルなど、若者が共感しやすい要素をストーリーに取り入れます。
プロットの段階で、ターゲットを決めます。読者に親しみを持ってもらうために、ターゲット層の境遇に近い主人公を用意するのは昔からよく使われている方法です。
ですが、感情移入はあまり期待できず、わかりやすさや親しみが増すだけです。
子供に政治の話は難しく、与党や野党、選挙区や比例区、派閥などもわからないため感情移入できません。ですが、主人公を子供にして、学校内のグループ同士でもめ事を起こしている話にすれば、わかりやすくなります。
たとえ大人が主人公の話でも、勧善懲悪ものならば、子供にも感情移入してもらえます。
ターゲット層に近い主人公にするだけでなく、できるだけターゲットの境遇に近づけて設定する必要があります。
もちろん、ターゲットだけでなく、「こうなってほしい」と読者に抱かせる戦いの構図を用意することが大事です。
感情移入させるには、キャラクターやターゲットだけでなく、戦いの構図が大事なことを忘れてはいけません。
六、読者に行動を予測させる
主人公の目標を明確にし、性格や価値観、過去にどのような行動を取ったか、直面している問題や葛藤を描写することで、読者は主人公が次にどんな行動を取るのか、予測しやすくなります。
読者が考えた予想と主人公の行動が当たれば、同じ行動したと感じることで、感情移入できるからです。
予測できる部分を幾つか作っておくことで、読者が感情移入して読み進めていってくれます。
ただし、ときどき読者の予測を裏切ることで物語にスパイスを加えることも重要です。予想外の展開に、読者はさらなる興奮と驚きを感じることができます。
◆まとめ
初歩的なやり方をまとめてみました。
作風やジャンルによっては、向き不向きもあるでしょう。
鵜呑みにして取り入れるのではなく、どのように応用すればいのか考えながら工夫してください。
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