サポ限に書いていたこと70 読者を共感、感情移入させるには・1
◆はじめに
創作において、主人公に読者が共感できるか、感情移入してもらえるかどうかが、成功の鍵を握っています。
一般的に共感とは、他人の気持ちや考えを自分の立場に立って理解し、同じように感じること。つまり、相手の感情を自分のものとして捉える能力を指します。
一方で感情移入とは、作中のキャラクターや世界観に没入し、その感情を自分のものとして体験することです。読者がキャラクターの気持ちを自分のものとして感じ取り、その世界観に没頭すれば、感情移入といえます。
まとめると、共感は「他者の気持ちの理解と同情」を意味し、、感情移入は「作品世界への没入と自己投影」を指します。
創作でいわれる共感は、主人公と読者をくっつける役割を果たしており、読者が主人公の気持ちに寄り添い、自分と重ね合わせることができれば、より深い感情移入が可能となるのです。
このように、共感は物語における感情移入を促す「接着剤」の機能を果たしています。
だからこそ、物語作りにおいて、読者の関心を引き付け、主人公との絆を強め、より魅力的な作品を生み出すことができるのです。
◆読者を共感させるには
一、かわいそうに思えること
人間である以上、酷い目にあっている人には情を持ってしまいます。主人公をなにかの犠牲者にすれば、即座に共感が得られ、犠牲者の置かれた状況や心情を通して、自分のことだと思ってもらえるようになります。
具体的には、主人公をつぎのような境遇に置いてみよう。
・予期せぬ不幸
(最愛の人を失う、運に見放される)
・身体的、心理的に不利な条件、健康や経済的な問題
(重度のハンディキャップ、知的障害、依存症や難病、経済的困難)
・逃れられない過去の深い傷
(過去にしでかした過ち、犯罪)
・弱みを見せる瞬間
(痛みや悲しみに沈んでいる、疑心暗鬼、不安、または恐れている)
・裏切りと欺瞞
(騙されたり、裏切られたり)
・除け者と拒絶
(集団に属したい、家族の愛情を欲したい欲求が叶わない)
・本当のことを言っているのに信じてもらえない
・見捨てられる
・孤独、無関心
・失敗と後悔
・怪我に苦しむ
・危機
二、人間味があふれること
人間性とは、人間らしさの根源をなす、人間固有の美徳や特質の集まりです。それぞれの美徳が他者に正の影響を与える力を持っています。
美徳は、人間の行動や心の中に備わっている良い性質や特質のことを指し、他に対する行動や態度として表れます。愛、品行、正義、寛容さ、謙虚さ、情感、寛大さといったものが、美徳に含まれます。
このような資質を垣間見せる人に会うと、その人のことを気にかけずにはいられなくなります。
主人公に美徳を持たせて人間味を与えることで、読者の心と絆を効果的な作ることができます。
・困っている人を助ける
・子供が好き、または子供に好かれる
・動物好き、または動物に好かれる
・心境の変化、または許し
(最初は嫌っていた人を受け入れる、反発していた人に同意する)
・命がけ、または自己犠牲
・大義のために戦う、あるいは死ぬ
・倫理的、道徳的に正しく、誠実で責任感があり、頼れる
・誰かを愛している
(家族、友人、隣人)
・みんなに大事にされる
・独りでいるときに人間味を見せる
・優しい振る舞い
三、誰もが望むような資質をもつこと
他者に影響をおよぼす、個人的な性癖や行動のことです。
正義のために死ぬ、子どもに好かれる人間性ほど大きな効果はありませんが、誰もが望むほど魅力的で、読者の心を掴む属性があれば、読者もあこがれを持つものです。
・権力、カリスマ、リーダーシップ
・華麗な職業、憧れの職業
・勇気
(身体的、精神的。常にではなく、解決する勇気があればいい)
・情熱
(深い愛情、何かに対する情熱で満たされている)
・能力/専門性
(業界最高の職人、何かの分野での達人)
・魅力的
(外見が魅力的、若さや美しさ、イケメン)
・賢い、ウィット、頭の回転が速い
・ユーモア、遊び心
・子どものような純真さ、または子どものような熱意
・身体性と運動能力
(ダンサー、格闘家、戦士、アスリート)
・粘り強さ
(弱みがあっても努力してやり抜く心、解決しようと奮闘する根性)
・はずれ者、反逆者、奇人変人
(集団に属しない、アウトロー、はずれ者)
◆共感を得るための技術
一、「伝える」ではなく「示す」
登場人物の状況や心情を表す際、ナレーションのように真実をすぐに話すのではなく、人物の動きによって示すと良いです。
怖いものに遭遇したとき、「〇〇は恐怖を覚えた」とするより、「〇〇の手が震えた」と、見えている事実を示すことで、読みがいある文章になります。
二、「~し始めた」と表現しない
「~し始めた」や「~しようとしている」などの表現は、小説ではあまり好ましくありません。
「〇〇は登り始めた」ではなく「〇〇は登った」、「〇〇が登る」といった表現を使いましょう。
三、五感で共感を誘う
より強く共感してもらうには、五感に訴えかける必要があります。
読者は、文章を頼りに様々な場面を想像します。
視覚的情報は自然と充実しますが、音、匂い、味、触感など他の感覚を刺激する情報は、意識しなければなかなか書けません。
例えば、「彼女の笑顔は、春の花のように甘く、心地よい香りがした」といった描写を入れます。
五感の情報から、読者は自分の記憶を思い起こして追体験するのです。読者をより小説の世界に引き込むためにも、五感の描写を取り入れましょう。
四、ときには口語的に
すべての文章を丁寧に正しくする必要はありません。過度に堅苦しい文章は、読みづらいものです。
日常生活で使う単語主体の文章を少し入れることで、やわかさ柔らかさが生まれ、読者にとっても読みやすい小説にすることができます。
五、長い文は、わける
作品にもよりますが、長く話す場面での会話文は五行を越えると読みづらくなります。読みづらいと、途中で嫌になり、共感できなくなります。
長い一文は、短くしてください。
長い会話文の場合、途中で地の文を挟んで区切ると良いです。
たとえば、「『それもいいかもしれない』彼は顔を上げた。『明朝、出発しよう』」みたいにするやり方です。
会話の間に挟むことで、リズムも良くなるし、全体のテンポも崩しません。
六、自然な会話を意識
読者に考えた情報を全部伝えなければと書くと、説明的すぎて読みにくくなり、頭に入ってこなくなります。どうしても伝えなければならない情報でも、読みやすさとリアリティーを優先して、要点を絞り、日常会話のような自然なやりとりを意識しましょう。
重要な場面や、ここぞというときは、力が入ったセリフやクドさが必要になることもありますが、すべてのセリフがそんな調子では、重要な場面が引き立ちません。
不安な箇所は声に出して読んで確認してください。
七、登場人物を語り手に
地の文の語り手がすべてを知っている第三者である場合、全員の行動や心情が明らかになってしまうため面白みに欠けます。
主人公に語らせれば、自分以外の人物の気持ちはわからない。
それでも、わからないなりに推測する文章が書けます。
主人公の推測した文章から、読者も気持ちを想像するため、自然と感情移入ができるのです。
八、大まかな描写で場面を進める
書きはじめは粗く、話が進めば密になり、終わりは粗くします。
急いで場面を進めようとすると、描写できる部分が限られるため、なにを描くべきかわからなくなりがちです。
その場合、行動の詳細や物事の質感など細かな描写ではなく、アクションや心情変化の描写など、大まかな描写で場面を繋げるようにしましょう。
九、会話文で人物の色を出す
登場人物の性格は行動やしぐさだけでなく、会話文にも現れます。その人物ならではの発言や口調、語尾やテンションなどが、どの人物にもみられます。
何気ない会話文で、さりげなく登場人物の色を出せます。
何気ない発言は、適当に書いてしまいがちですが、そういったところも大事にして、登場人物に深みを出してください。
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