サポ限にかいていたこと49 売れるストーリー・1

◆売れるストーリーの書き方


▼ビフォーアフターがあること


 人を感動させるストーリーの原理原則は存在する。

「何か問題を抱えた主人公が、数多くの困難を乗り越え成功を掴む」

 いわゆる、v字型ストーリーである。

 

 主人公は何かを求めている。

 悩みや問題は、「外的なもの」「内的なもの」「哲学的なもの」にわけられる。

 信頼できる導き手が登場。

 信頼できる過程の道筋と変化後どうなるかを示し、行動を促す。

 避けたい失敗。上手くいかないと、何を失うかをはっきり示す。

 成功するエンディングを迎える。


 つまりギャップ、落差が必要なのだ。


 映画やドラマなどの脚本に使われている、感動や共感を得ることができるストーリー作り「神話の法則」がある。

 大きくわけると、「導入」「成長」「成果」という三幕で構成されている。

 脚本家のクリストファー・ボグラーが二〇〇七年の著書、『物語の法則(The Writer’s Journey)』で提唱したヒーローズジャーニーは十二段階にわかれ、それぞれのステージで主人公が様々な変化を経ていく。


第一幕

一、日常世界(Ordinary World)

二、冒険へのいざない(Call to Adventure)

三、冒険の拒否(Refusal of the Call)

四、賢者との出会い(Meeting the Mentor)

五、戸口の通過(Crossing the First Threshold)

第二幕

六、試練、仲間、敵対者(Tests, Allies, Enemies)

七、最も危険な場所への接近(Approach to the Inmost Cave)

八、最大の試練(Ordeal)

九、報酬(Reward)

第三幕

十、帰路(The Road Back)

十一、復活・再生(Resurrection)

十二、宝を持っての帰還(Return to the Elixir)


 必ずしもこのとおりでなければならないわけではない。

 途中を省いたり、入れ替えたりして使われることもある。

 ストーリーは、山登りのように組み立てるのが良い。


一、ファーストシーン     何かを予感させる

二、プロローグ        人物紹介や状況説明 事件の始まり

三、アフェア         最初の事件

四、ミディアムクライマックス 中間の山場

五、インターバル       ひと息入れる 楽しい場面など

六、クライシス        危機連発 一気に興奮に持ち上げる

七、クライマックス      最高潮 事件の盛り上がりにする 

八、エピローグ        一気にラストへ

九、ラストシーン       END


 それでも基本の物語は、主人公の「日常→非日常→新たな日常」を描く三幕構成は共通している。

 神話の法則の内容は、人生でむかえるステージと共通する部分が多いため、三幕構成を活用することで、読み手を共感させて動かす文章が書くことができる。



 現代は便利な商品があり、ネットですべて完結でき、生活は便利で豊かになった(賃金は上がらず増税が続き、世界情勢も不安になったけど)。

 なんでも当たり前になりつつある中、差別化を図るために「感性価値」が問われる時代にある。

 感性価値とは、基本的商品価値とは別に、生活者の感性に働きかけ、「感動」や「共感」を得ることで生まれる商品やサービスに対しての付加価値をいう。

 製造業やサービス業を問わず、産業が成熟してくると製品やサービスの基本的内容は似かよってくるため、機能面での差別化が困難になってくる。

 感性価値といえば、アップル社のアイフォンが挙げられる。

 生活者はタッチパネルによって新しい価値を体験し、ガラケーからスマホへと変わり、現在のスマートフォン利用者の半数がアイフォンである。スティーブ・ジョブズのプレゼンが素晴らしかったからだ。

 生活者の体験や感情、感覚などに働きかけ、消費者の購買行動さえ変えるほどの力を持つのが「感性価値」であり、ビジネスにおいてストーリーテリングをつかったプレゼンが行われるようになった。

 ストーリーを聞いた相手は、聞くことで疑似体験し、共感を生む。

 あなた自身の体験を他人に話す場合も同じ。

 相手は脳内でイメージする。

 その際、お互いの脳の同じ領域が活性されることが、脳科学で証明されている。

 いわゆる、「感情移入」である。


 

▼情報ではなくストーリーで伝えること


 事実を正確に伝えるニュースは「情報」であり、あくまでも他人事として冷静かつ正確に伝える必要がある。

 ただし、情報だけではつまらない。

 なぜそれをするに至ったか、それをしたことでどうなったかなど、自分と同じ境遇や課題を持った人に共感してもらうためのひと手間が、相手との距離を近づける。

 情報であるニュースばかりみても、感情移入できない。

 物語に置き換えて考えると、「日常→非日常→新たな日常」のなかで、情報とは「非日常」を指す。

 起こったことしれても、それ以前はどうだったのか、それ以後はどうなってしまうのかが欠落しているから、情報だけでは共感できないのである。


 ストーリーには三つ、できることがある。


  相手に注意を引かせる。

  心を掴みやすくする。

  記憶の持続力が高まる。


 相手の注意を引き、心に響きやすいストーリーだからこそ、記憶に残りやすくなる。ディズニーランドに何度足を運んでも、アトラクションやキャラクターのストーリーが記憶に残っているから感情移入できるし、感性が刺激されるのと同じである。

 

 ストーリーに欠かせないものは次のとおり。


  共感できる主人公を用意する。

  主人公の本音の感情、葛藤と苦悩をみせる。

  ワンシーンの細部を描く。

  登場人物の細部を描く。


 話を聞いたり読んだりする場合には、傾聴と共感を意識する必要がある。興味を持ってもらうには、自分と関係があったり、関心があったり、不思議に思ったりすることがなければ、善悪や好き嫌いを入れずに聞き入ることができる人ばかりではない。とくに小説は、興味がなければ見向きもされない。

 主人公の本音の感情、葛藤や苦悩があると、感情移入しやすい。

 これらがないと、つまらない。

 ただの情報になってしまうから。

 シーンの細部を描く必要も同じであり、詳細に心情の変化を描き、感情の変化があればターンングポイントを強調する。そのためにも、主人公がどういう人物なのか、具体的に描いて置く必要がある。



 伝え方で守るべきは一つ。

 シンプルであること。

 主人公の本音や感情を素直に伝えることで、読み手は共感できる。

 会話の常套句、「本当はね」とか「素直に言うと」とか「ぶっちゃけてしまうと」を使ったあとは、必ず話している人物の本音がこぼれだす。そんなとき、人はおもわず聞き入ってしまう。

 シンプルかつ感情を素直に伝えることは、なにより大切である。

 

 構成にはインパクトが大事である。

 平凡な日常から、なにか新しい変化があり、新しい日常が訪れる。

 情報は変化であり、共感できない。

 なぜなら、変化が起きる前の平凡な日常を知らないから。

 ドキュメンタリー番組に共感をできるのは、変化前の日常から構成されているためである。

 当たり前だった日常が、何かしらの変化によって登場人物の苦労や葛藤などが描かれるから、人の心を掴むのだ。

 ビフォアフターの、ビフォーが大事である。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る