サポ限にかいていたこと48 感動させよう・5

◆心の中を描写するときに気をつけたいポイント


・直接的に感情を表す言葉は使わない。


「悲しい」「寂しい」などではなく、「どんな風に悲しいのか」「どれくらい寂しいのか」で表現します。

 これらの表現を省略してしまうと、作品が稚拙に感じるだけでなく、読者は心情を理解しにくくなるからです。


 ちなみに、直接表現とは「うれしかった」といった気持ちを表す心情語を使ってストレートに書かれたものです。

「つらい」「悲しい」「楽しい」などの聞き慣れた形容詞だけでなく、「困る」「驚く」「あきれる」などの動詞や「安心」「心配」などの名詞もそうです。

 また、「気がとがめる(やましく思う)」「胸がすく(せいせいする)」「胸がおどる(期待でわくわくする)」などの気持ちを表す慣用句を用いることで読み手に心情を伝えることができます。が、気持ちをストレートに表すのは、小説の表現としては稚拙です。

 作品にもよりますが、できるだけ直接的に感情を表す言葉は使わず、「どんな風に悲しいのか」「どれくらい寂しいのか」「どれほど嬉しいのか」を描いて読み手に伝えることが大切です。


 間接表現とは、表情や態度、行動、会話などで心情を表現するものです。

「うつむいてとぼとぼと歩く」なら「落ち込む」「意気消沈」のネガティブな、「胸を張ってずんずん歩いた」ならば「自信にあふれている」「前向き」のポジティブな心情が読み取れます。

 ただし、さまざまな心情によっても引き起こされる「泣く」「ため息をつく」などは、場面の出来事と重ねて「悔しくて」か、「嬉しいから」泣くのかを表現します。



・情景を書きながら心情に迫る


 心情をそのまま「悲しくなった」などと書くのではなく、情景などを書きながら心情に迫るよう表現します。

 その際、比喩や象徴を利用することがあります。

 例えば、悲しみや心配を表すときに雨が降っている描写を、凍てつく寒さは絶望、夕日からは温かみ、花咲く春の庭なら喜びや幸福、真っ暗悩み味は迷子や孤独といった心情を表現します。

 他には、「光」が希望を象徴し、空模様や天候で心情を表す方法がよく見られます。

「どんよりとした鉛色の雲」なら、憂鬱で気分が晴れない状態。

「雨があがって虹がかかっていた」なら、問題が解決して晴れ晴れした気持ちといった具合に、パターン化されたものもあります。


 情景を描く際、「遠景・近景。心情」を利用すると良いです。

 まずは遠くの景色を描き、次に近くの景色やキャラクターの状況を描き、景色との距離感を表現したあとで胸中を描写すると、深みが増して心情が伝わります。


 また、「情景・語らい・共感」を利用する方法もあります。

 言葉に表せないほどの素敵な景色を眺めつつの語らいは言葉も弾み、互いがおぼえた共感は読者の共感となって忘れないでしょう。

 逆の場合にも使えます。言葉に言い尽くし難い悲惨な景色を前にしての語らいの言葉は重く、互いに抱いた胸中は読者の胸中となって残るでしょう。

 

 他には「体験・気づき・普遍性」を利用する方法もあります。

 個人的な体験を通した気づきから、体験したことがどう社会に関わっていつのか、普遍的な意味合いを見出そうとすることで、読者も自分ごとだと受け止めることができます。


 さらに「聞く(知る)・事実・真実」を利用する方法もあります。

 誰かから知らなかった話を聞き、起こった事実として受け止めて、嘘ではない真実にたどり着くことができます。


 おまけとして「論理・信用・感情」を利用することで説得する方法もあります。科学的論理をまず説明し、次に知恵や善意、道徳的な考えから信用をしてもらい、最後に感情をもっていく。感情がなければ伝わりません。最後に大事なポイントを抑え、強い言葉で締めくくることで相手や読者を説得できます。 



・一人称視点で書く


 一人称は小説世界の人間、つまり登場人物の視点で書かれます。

 主人公およびその他の主要登場人物の視点によって描かれ、語り手の心情を表現することができます。

 三人称の場合は一元視点、つまり主人公視点で書くこと。

 主人公以外の心の中を描くために、視点を変える方法もありますが、急に視点が変わると読み手が迷ってしまいます。次の章になったタイミングで視点を変え、誰視点になったのかを読み手に伝えると、迷わずにすみます。

 視点を変えずに主人公視点で第三者の心情を描くことも出来ます。その場合、主人公からみた第三者の心情になるので、第三者が本当にそう思っているかどうかはわかりません。

 主人公が相手の心を読める能力者なら、話は別ですが。

 きっと〇〇と思っているにちがいない、といった主人公の妄想や想像で相手の心を推し量っている表現になると思います。



・内面のモノローグを描写する


 キャラクターの内面のモノローグを描写することで表現します。

 例えば、キャラクターが悲しんでいる場合、その悲しみの原因や感情を内面で考えている描写をします。

 一人称小説の場合、自分語りの実況中継で地の文が書けますので、内面のモノローグは書きやすいです。



・身体的反応を描写する


 キャラクターの身体的反応を描写することで表現します。

 例えば、キャラクターが緊張している場合、手が震えたり、汗をかいたりする描写をすることで心情を表現します。

 できるだけ紋切り型を使わないことを心がけると、キャラクターの特異な性格や心情、あるいは作品のオリジナリティーや作家の個性にも繋がるかもしれません。



・心情語を利用する


 心情語を利用することで、キャラクターの心情を表現します。 

 心情語には文末に現れるものと、気持ちそのものが書かれる二種類があります。

 文末なら「~と思う」「~と感じる」「~したい」など。

 気持ちを直接あらわす言葉は、基本的には喜怒哀楽表現です。

 心情と結びついた動作や行動は、実際の動きを表現するものと、慣用句を用いて表現するものがあります。

「喜び」なら、笑顔や輝く目、はしゃぐ、心躍る。

「悲しみ」なら、涙、ため息、嗚咽を漏らす、うなだれる、悲嘆に暮れる。

「不安、落ちつかない」なら、心のざわつき、膝を抱える。

「恐怖」なら、目を見開く、息を呑む、身震いする。

「平静、穏やかな表情」なら、静かな呼吸、落ち着いた様子。

「希望」なら、目を輝かせる、前向き、希望に満ちた。

「急いで飛び出した」の言葉なら、話の前後の状況によっては喜びもあれば不安な場合にもつかえます。

「肩を落とす(がっかりした)」「耳が赤くなる(恥ずかしい)」「顔が青ざめる(恐怖を表す)」などの慣用句は意味が決まっています。

 自分なりに少し工夫するのはかまいませんが、意味が決まっているものに手を加えすぎると、伝えたい意味が読者に伝わらなくなります。

 これらを結集して、読者を夢中させてください。

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