サポ限にかいていたこと46 感動させよう・3

◆伝わる風景・情景描写の書き方


 没入感のある小説は、読者に情景をありありと想像させます。

 頭の中に広がる景色、生き生きと動き回るキャラクター。

 まるで映像をみているような情景描写を目指しましょう。



・風景をわかりやすく伝える


 読みやすい小説とは、読者が容易に情景をイメージできるものです。よみやすい文章の書き方がされていることも、もちろん重要ですけれども。

 情景描写の目的は、キャラクターが現在どのような場所にいるのかを、読み手に正確に伝えることです。

 日頃から、自分がどのような感覚で周囲の情景を捉えているのかを掘り下げ、考えてみるといいです。

 通勤や通学中、駅にいるときや買い物、散歩をしているとき。

 日々の生活で目にする風景をどのように感じているか。

 自分の気持ちを文章で表現する癖をつけておきましょう。



・情景と心理描写とつなげる表現方法


 キャラクターの情緒を演出するには、登場人物の心理描写と情景描写を関連付ける方法があります。

 悲しい気持ちなら降りしきる雨のシーンを、すがすがしい気持ちなら木々の緑がキラキラ輝いている描写をすることで、「悲しい」「すがすがしい」という言葉を使わずキャラクターの気持ちを代弁できます。



・五感を使った表現力をつける


 小説の情景描写には五感を使います。

 情景描写によく使われるのは「視覚」です。

 カラーバス効果とは、ある特定のものを意識しはじめると関連情報が自然と目に留まりやすくなる心理効果をさします。

 カクテルパーティ効果とは、人混みや雑踏の中でも自分に関係があったり興味があったりするキーワードを自然に聞きとることができる心理効果をさします。

 つまり人は、意識しているものを感じ取るものなのです。


 視覚から得られる情報が書かれていれば、最低限の情景描写は読者に伝えられます。

 視覚以外の情報を加わえれば、さらに現実味を増し、より読者に情景が伝わるでしょう。

 道を歩けば聞こえてくる人の声や、飲食店の前を通りかかれば美味しそうな匂い。おもわず購入して食べたときの味や触感などは、誰もが経験しているものです。

 五感を使った表現のポイントとしては、さまざまな感覚をあちこち書き散らすのではなく、まとめて描くことで自分もイメージしやすくします。


 自分が経験したことのある感覚を書くのは難しくありません。

 ですが、行ったことも体験したこともない場面を描写するのは、難易度が上がります。

 架空の場所を思い浮かべ、その場所をどのように体感し、どんな気持ちでいるのかを考えるのが大切です。

 登場人物の体を借りたつもりになって、五感で情報を取り込み、描写してください。


 また、架空の情景を描写するときは「誰にでもわかりやすく、想像しやすい言葉」を使い、思い浮かびやすい表現を心がけます。

 専門用語を多く使ってしまうと、詳しい人でもない限り、何のことなのか具体的に想像するのが難しくなるからです。

 読者が苦もなく理解でき、楽しめることを第一に考えて、専門用語を使うのはなるべく避けましょう。

 たとえ、専門知識を持った登場人物が見たり感じたりした情景であったとしても、専門用語の多様は避けたほうがいいです。

 何も知らない読者に想像してもらうためにも、わかりやすい言葉に言い換える必要があります。


 特殊な世界、SFやファンタジー世界を舞台にする場合、情景を読者に伝えるためには詳細な描写が必要になります。

 ですが、細かく書けば書くほど、その描写は説明となります。

 説明は、文章の勢いを殺してしまい、難しければ読者は距離を取ってしまい置いてけぼり、悪くすれば読まれなくなります。

 最低限の描写をして詳細は後回しにすることで、物語を先へと読ますこともできます。

 冒頭から、知識や蘊蓄を披露する文章になっていないか、注意してください。



・小説の情景描写はシンプルにする


 私小説や純文学なら、絵画のような情景描写は必要です。登場人物がなにを見て、どう感じ、どんな性格をして、どう行動するのかを描くことで、読み手に伝えることができます。

 描かれていることは、必要だから書くのです。

 意図して表現するものがある場合は別ですが、くどくど同じことをくり返す不必要な描写はいりません。

 また、エンタメ、ラノベ、ライト文芸、大衆小説において、長々とした説明描写は避けたほうがいいです。

 描写とは、説明のことです。

 説明のなかに、人物外見描写、情景描写、心理描写、雰囲気描写、行動や出来事、語り手の感想や考えなどがあります。

 描写するということは、読者に説明することです。

 説明をくどくどされると、作品展開のテンポが悪くなるし、難しいと読み手が嫌います。

 読み飛ばすこともあるでしょうし、下手すると読むのをやめてしまいかねません。

 情景描写では、必要のない部分はできるだけ省略したいもの。

 ただし、ここそという場面で細かく書き込めないのでは困ってしまいます。

 大切なのは、本当に伝えたい情景を読者に伝わるように書くことです。

 書き込むべきときに書けるよう、普段から街の風景や人々、動物の動きや植物、人工物や自然のものなど、どのように表現できるか考える癖を身に着けましょう。

 そのとき、五感で読み取った情報も書き込みたいものです。

 どのように見え、聞こえ、香り、味わい、触れて感じたのか。

 文章で表現する癖を身につけましょう。



・語彙力、多彩な言い回しをおぼえる


 情景描写をするとき、語彙力がないと読者に伝わりにくいばかりか、どれも同じような表現になりがちです。

 単調な表現が続くと、読者も飽きます。

 場面に対して、読者に想像してもらいやすい言葉を見つけるためにも、普段から語彙力を身につけておくことが大切です。

 似たような状況でも色々な言い回しで表現できるよう、練習しておくと情景描写はもっと良くなります。

 そもそも語彙力とは、たくさんの言葉を知っていることです。

 小説を書くための必須事項。

 しかも、ただ知っているだけではなく、どの言葉をどんな状況で使うのかを理解していなければなりません。

 語彙力をあげるには、類語辞典で調べるといいです。

 また、ウェブサイトやアプリのWeblio類語辞典、日本語表現インフォを利用するのもいいです。

 便利だからといって、辞典を調べて出てきた言葉をそのまま引用すると、自分が表現したかった意味からズレることもあります。

 自分の作風にあっているか、場面を確認しつつ、状況に合わせた言葉を補いながら使いましょう。


 とはいえ、辞書で言葉の意味がわかっても、どんなときに使うのかを実感するには読書がかかせません。

 意味を知り、使いどころをよくわかっている言葉を身につけるために読書は一番有効です。

 どんなものでも、学ぶはまねぶ。

 真似をすることからはじまります。

 書くことも大切ですが、読むことはもっと大切なのです。



・表現を広げて語彙力を高める  

 

 同じ言葉の言い回しに気を配ると、文章にメリハリがつくだけでなく、細かい部分も正確に伝えられます。

 同じ表現ばかり使わないことで語彙力は鍛えられます。

 たとえば、「笑う」「泣く」「食べる」「寝る」などといった言葉を使わずに、別の言葉で表現する練習をするといいでしょう。

 言葉の表現の言い換え、置き換えだけでなく、動作や行動を描くことで表現できます。

 気をつけたいのは、難しい漢字や熟語で表現することが、語彙力が高いわけではない点です。

 辞書を調べると、難しい漢字がたくさん出てくるので、使うことは誰にでもできます。ただ、難しい漢字、熟語ばかり使うと、読み手は難しい作品と感じてしまい、読み進められず、飛ばしたり途中で読むのをやめたりしてしまいます。

 できるだけ、中学生レベルの語彙力を心がけてください。

 どうしてもこの表現はこの漢字でなくてはならない、といった状況ならば難しい漢字を使ってもいいし、読者も新しい単語が知れて、知識欲や好奇心が刺激されるかもしれません。


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