サポ限に書いていたこと43 手が届くには

■選考突破や受賞に手が届くには


 あらゆる賞の最終選考に残った作品すべてを読んでチェックしたわけではないけれども、とりあえず、ここしばらくのカクヨム内の受賞作をはじめ、数百の作品を読んでは感想を書いては感じたことを書きます。

 新奇性があり、上手く書けている作品が残ったとき、どちらを選ぶか、当たり前ですが比較されて選出されます。

 カクヨム甲子園やカクヨム内で行われている数々の賞をはじめ、ラノベや一般文芸に至るどの新人賞においても、「万人が楽しめて後味の良い王道の作品」が選ばれる傾向があります。

 逆に、小説の出来はよくても、暗かったり後味がいま一つだったり、スッキリしないものは、大賞を取れていない印象です。

 現在、不況と物価高で生活が苦しい状況にあるため、暗い話は好まれない傾向があります。

 不況には、明るく楽しく、希望が持てる作品を書くことを心がけてみてください。

 とくに新人賞はこの傾向は強いと思います。

 なぜなら、不況であるからこそ出版側も「作品を売りたい」と考えています。

 いくら小説が良く書けていても、暗くて重くて、読後がスッキリせず、希望も持てないものは売りにくい。

 ただでさえ、一冊の単価は年々上がり、支出を抑えようとする流れがある中では、消費者側はハズレを引きたくない心理が働くもの。

 しかも今は、ネットが普及しているので、周りの影響を受けやすい。これまで以上に、万人が楽しんでいる作品を、自分も参加して楽しみたいと思うものです。

 だから、売りやすく売れるものを、出版側は求めるのはごく自然なことです。


 新人賞をとって人気プロ作家になったなら、ちょっと暗い作品を一冊書いても売れるので、書くことが出来ます。

 でも、まだプロにもなっていない新人賞を目指す人は、応募先にも夜でしょうが、万人が読んで楽しめる作品を書くことが大事だと考えます。


 具体例としては、前年の二〇二二年、カクヨム甲子園で、しがない様がロングストーリー部門『クレーのいた冬』で大賞『トリガー』で奨励賞を取りました。ちなみに、二〇二一年のカクヨム甲子園のショートストーリー部門『私』で大賞を取っています。

 他の作品よりも抜きん出て尖っている作品を書かれていて、小説の出来が良かったです。西尾維新が好きらしく、ちょっと暗かったり重かったりする話が好みな印象です。が、大賞を取ったのは、美術室で絵を描いている女子高生の彼女と、側で見ている男子高校生との恋愛もので、まさに王道。読後が爽やかでした。

 他にも、カクヨムコン8のホラー部門で、尾八原ジュージ様の『みんなこわい話が大すき』が大賞を受賞しています。

 カクヨムコン7では木古おうみ様が『領怪神犯』でホラー部門大賞とComicWalker漫画賞を受賞しています。

 ホラー作品は暗くなる傾向が強いジャンルです。が、怖い部分も十分ある中で、読んでいて面白く、読後は明るかったです。


 新人賞に応募する作品には、編集の意見を聞くことなく、作家の好きなことが書けると言われました。

 事実、好きなことを詰め込んで書くことができるし、書いていることでしょう。ただ、詰め込みすぎると失敗するのです。

 死が好きだから、ダークなものが好物だから、と作者の好きなものを書いても、自分の趣味に共感してくれる人は少ないです。

 多くの人は、小難しいSFについて行けなかったり、怖いホラーを毛嫌いし、作品を視聴するときは息抜きとして楽しみたいと考えています。

 不況の今、多くの人が疲れています。

 そんな人達を癒やし楽しませるには、作家である自分を出しすぎないほうがいいと考えます。

 ゼロでは困るので、一パーセントほと。

 なぜなら、どうしても作品には、作家が意識せずとも、持っている個性が無意識に滲み出て現れるものだからです。無意識なので、仕方ないです。その個性が、作家独自の味となり、面白味につながるのが望ましいです。

 新人賞を取るには、読者を楽しませる意識を忘れないでください。

 と、偉そうに書いてみました。



■気をつけること。


・応募要項をよく読み、守る

 字数オーバーは切られる。

 出版先がどんな作品を欲しているかが書かれているので、よく読み、求められている作品を書いて送る。


・出版レーベルのカラー(傾向)があるので、適した作品を書く

 児童文学にエロ作品を送らない。

 適していないと、カテゴリーエラーで落とされる。

 間口の広い電撃でさえカテゴリーエラーはある。


・読み安い文章を心がける

 一文は短く、端的に。長い文章は読点をつける。

 リズムよく、テンポがある文書は読みやすい。

 漢字が多すぎると読みにくくなる。

 漢字の閉じ開くを見直す。

 目が滑る文章にならないために、一文に同じ言葉が頻出していたら直す。

 文法の勉強はしておくにかぎる。

 ラノベなど、多少の誤字脱字は多めにみる傾向がある。

 が、一般はその限りではない。


・三幕八場の構成で書くようにすること

 面白い作品はすべて、この構成で作られている。

 一幕、二幕、三幕は1:2:1の割合を心がける。

 どんでん返しは三幕目にいれるように。

 基本、どんでん返しは七場で入れる。

 八場でも入れることができる。


・大きな謎と小さい謎をいれる

 ミステリー要素のある作品はとくに。

 大きな謎とは、殺人や誘拐など主人公の外にある謎。

 小さい謎は、主人公が直面する様々な出来事。

 二つが最後、ひとつになって解決するようにする。


・葛藤の中心軌道を考える

 葛藤の起伏が作品の面白さを作る。

 男性神話。女性神話。絡め取り話法。メロドラマ。成功と挫折。

 思いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じ共感する、など。

 組み合わせたり、入れ子にしたり。



・ラノベやライト文芸はキャラクターと設定重視

 キャラクターを立てる。変人にする。

 それでも読者に友人になりたいと思わせる。

 いままでにない視点、見せ方にこだわる。

 キャラクターの感情を1.5倍にする。とくにエンタメ系。

 ユーチューバーやテレビの芸能人のように、過剰に表現することで、相手に分かりやすく、伝わり安くみせている。


・回想は冒頭

 途中に入れるなら聞き役のキャラクターを用意する。

 読者も参加して話を聞いてもらえる。


・三人称であっても主人公視点以外の他キャラに視点を変えない

 三人称一元視点を心がけて書く。

 読者に分かりやすくするのを心がける。

 ちなみに、主人公視点以外の視点はすべて神視点だと思っていい。

 

・字数、枚数によってキャラ数を決める

 短編ならメイン二人。

 増やすとキャラの個性が伝わらなくなる。

 キャラを多く出す場合は、ストーリーを読ませる作品にすること。


・比喩の多用は余計分かりにくい

 使いすぎに注意。

 ここぞというときや、適した比喩表現を考える。

 もしくは使わない書き方を考える。


・既視感、類似作品は落とされる。

 書きたい場合、別のキャラ視点で描くなどの工夫がいる。


・説明すると話に勢いがなくなる

 あえて説明不足で先に話を進めるといい。


・作品から現実味を感じるよう心がける。

 作品内の現実であって、私達が生きているリアルの現実のことではない。

 重力が働いている異世界なら、物が地面に落ちるといった具合に。

 ノンフィクションであっても、必要な場面だけで描くため、あらゆる作品はフィクションといえる。

 フィクションのどこかひとつ、リアルを感じられるものを入れること。


・読者を楽しませるを心がける

 特定の読者を想定するのもいい。

 十年前の自分など。


・疑問に思ったことはとことん調べる

 調べたことを、作品内に全部書き込む必要はない。


・面白いではなく面白そうを目指す

 面白いことは一つか二つあればいい。


・新奇性があって王道であること

 新人賞は、万人が楽しんでくれるものを書く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る