サポ限に書いていたこと42 上手く書く方法・5
我が師がおっしゃいました。
「本当のことは窮屈。だから、君の書くものは退屈なのだ。人は騙されるのを楽しんでいる。かといって、本当の中に嘘は書いてはいけない。嘘の中に、本当を隠し入れるのだ」
みんなの真似をして周囲に溶け込んできました。
そんな生き方が、作品に現れていたようです。
嘘も本当も区別がつかず、すべてを信じていました。
時々からかわれたり騙されたりして、ようやく相手の嘘に気付けるのです。
難題でした。
親戚が漫画デビューした話を聞いたのはこの頃です。
親戚の両親から私に相談されて、知りました。なぜ私に相談したのか聞くと、一番詳しそうだからという単純な理由からでした。
きちんと答えなければならないと思いました。
親戚が描いている漫画、内容、出版元、当時の出版界の状況、これからの流れなどなど、調べられるありとあらゆる情報を入手し、ときにチャット仲間と相談したり、ビッグサイトに同人誌を出している友人にくっついては毎年開始前にほしい本を手に入れ開始早々帰宅する子からも話を聞いたり。かなりディープな裏事情まで知った上で、かいつまんで親戚に説明し、続けさせてあげてくださいと頭を下げました。
親戚の絵が上手くて面白い、わけではなかったです。
わたしは、骨格が正しく描けていない漫画は生理的に受け付けなくて、気持ち悪くて読めません。ただし、ギャグ漫画は大丈夫です。
うめ先生のひだまりスケッチの、つぶれあんまんみたいな頭は無理です。ギャグでSDになるなら大丈夫なので、「あれはSDなんだ」と自己暗示かけないと、見るのが大変でした。
同じようにワンピースも無理です。どこか歪なんです。迫力を見せるための戦闘シーンの効果の描き方だと自分に言い聞かせて、エースの話まではなんとか。でもその後は無理でした。
例えば絵画も、ダリの時計がとろけたような作品は好きじゃないけど、ダリはデッサンがきちんと書ける人なんです。意図した表現として描いているだけであって、意味があるのです。
ピカソもそう。若い頃は本当にデッサンが上手い。付き合っている女が変わる度に、絵柄が変わるのです。しかも、一方向から全方向を見た絵を描くというのは手法であり、下手とかではなく意味があるのです。
エジプトの壁画の絵も、横顔なのに、目だけが見る側を見るような書き方をしています。これも意味があってそう描いているのです。
江戸時代の春画も、強調したい、あるいは意識している部分は実際の大きさよりもわざと大きく描くのです。意識している物を大きく描く手法は、子供に良く見られる傾向があるのですけれども、意味があってそういう書き方をしているのです。
親戚の絵なのですけれど、似たように、やたらと足が強調してたり、指先が長かったりしてるわけです。これは作者がどこに意識を持っているのかが現れているのだと思います。
いわゆる、どこにフェチを感じて描いているか、です。
親戚がそうだったわけではなく、当時からすでに四コマなのに落ちない四コマが世に出ていて、新しいわけではなかったです。誇張した歪な書き方からエロっぽいものを感じ、作品の内容もその傾向がみられたわけです。
出版業界が斜陽産業になっていて、エログロなんでもありのラノベだけが売れていた時代。漫画も、エロいものを描かないと売れない時代のはじまりでした。
親戚の漫画は、そういった時代に合っていたわけです。
この先、同じテイストで行けるかどうかはしらないし、それは本人の頑張り次第だけれども、とエクスキューズをつけて続けさせるようおねがいしました。
ちなみに、どこで書いていたのかというと、電撃プレイステーションのゲーム雑誌のなかの冊子で連載してました。
私はゲームをしない人でしたけど、大学時代は周りがゲームをしている人が多く、ゲーム雑誌の冊子を読んだり、読ませてくれたりしてたので、そこで掲載されている漫画の内容や傾向は知っていました。
もともと、親戚の家はゲーム機の種類がたくさんあったし、高校時代はマン研にいました。
親戚が中学生の頃に、私は自分の書いた絵を見せたりしてたんですけど、変な影響を与えていたらごめんなさい。多分、大丈夫。
ただエロっぽい漫画は書いても、エロ漫画が描けるかといえばそうでもなかったです。一時期エロ漫画で描いてましたけど、無理があるなと思いました。エロじゃないところで、エロっぽいものを書くことで、尖って見えるという作風だと思います。
現在は、『楽園』で描いてます。詮索しないでください。
少し、アシスタントしたことがあります。消しゴムかけたぐらいです。個人的には、背景を書き込みたくなるのですけれど、中途半端に書き込むと世界観が崩れるので、手を加えるのは容易ではないです。
できるなら、色のバランスやペンの細さや太さを変えるといいのですけれども、あれこれ横から言ってはいけないです。
本人が意見を求めたときに答えるならいいのですが、そうでないのならば、どんなアドバイスも悪口にしかならないので、プラスに働くことがないからです。
マイナスにしかならないことを声をかけてはいけない、かけるなら、プラスのストロークでなくてはならないと思っています。
消しゴム掛けをして、作品を読んだ感想はいいました。
現代ものだけど、全体的にいえばゆるいファンタジーなんです。ファンタジーだと、読み手は感情移入しづらいしつまらない。でも、一部分だけ、食事のシーンでリアリティーを感じたんです。そこは褒めました。読んだ話のなかで、食事シーンにリアリティーを感じるから、作品全体がしまっていて内容が伝わってくる、というような話をしました。
あとで親戚の親から聞いたら、一時期こった料理を作ってくれたことがあったといってました。そのときの経験が作品に生かされて、リアリティーを感じたのだと思います。それまで描かれてきた作品の食事シーンからは、リアリティーを感じたことがなかったからです。
作品には、どうしても作者の感情が現れるものです。作者が色々な経験をするのが大事、というのはこういうことなのです。
父がなくなり、震災が起き、リフォームの設計をするなどストレスがオーバーして活字が読めなくなってから、ろくに話が書けなくなりました。読めないから書けないのです。
このとき発狂し、これまで作ったものをすべて捨てました。
姪が字を覚えるのといっしょになって、ひらがなからおぼえ直していきました。一度目の活字が読めなくなってから読めるようになるまでは、数年かかりましたけど、比較的早かったと思います。
ただ、姪の相手をしていたら、もともと腰痛持ちが悪化してすべり症となり、ストレスから再び活字が読めなくなりました。
二度も活字が読めなくなったとき、もう生きるのが嫌になりました。
寝たきりで、起き上がる筋トレやストレッチをするのを優先しました。なので、このころは動画ばかり見ていました。映画を見る度に、どう物語が構成されているのかを読み解いてばかりいました。
自転車に乗れるようになったのが一年後で、一カ月に一回、ショッピングモール内を一時間歩く練習をしてました。
三度目に活字が読めなくなったのがコロナ禍の二〇二〇年でした。
制限されたストレスもあったけれども、親をはじめ高齢者が冷静さを失くして感情的になっておかしくなっていくのです。ひどい目に合いまして、そのストレスで活字が読めなくなりました。読めなくなっているのは、秋ぐらいには感じてたのですけど、自覚したのは年末だった気がします。
三度目になると、もうどうでも良くなりました。
やる気に満ちた高校生の作品から元気をもらおうと思ったのは、コロナ禍もあって動けないなか、手近にあったからです。
読んでみると、受賞作には校正は入っていないし、文章の書き方はこれでいいのかしらんと首を傾げるものでした。
作品の内容は、自分が書けるのかで考えたとき、書かないし書けないので、その点は素直にすごいなと思いました。
活字が読めない人がリハビリとして読むには、文章の書き方を正しくしてほしいというのは本音。でないと、読むだけでストレスとなり、よけい読めなくなるからです。
それでも、コロナ禍で大変な中なのに、よくぞやる気を出して作り上げたものだと、当時の高校生は本当にすごいなと思いました。
だから二〇二一年のときは、文章の書き方については目をつむり、高校生からやる気をもらおうと思いました。
ただ、コロナ禍で高校生も負の感情を抱いているのが作品からにじみ出てきて、とにかく人が死ぬ作品が多く、読んで心身ともに病みました。
本当に心が病んで、酷かったです。
二〇二二年は読みたくなかったというのが本音でした。
ただ、読みはじめると、暗い話が少なくなっていました。
おかげで、自分でも納得できるくらいに活字が読めるようになりました。
同時にお話が作れるようになったのは嬉しかったです。
二〇二三年は読む必要はないと思ったのですけど、カクヨム甲子園に参加した人から、続けてくれると嬉しいみたいなことを言われたので、調子に乗って少しずつ読むことになりました。
本音は、読むよりも自分の話を書きたいと思います。
ただ体調が悪くて、創作へのエネルギーが行かないのが現状です。
創作には、体調管理は欠かせません。
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