サポ限に書いていたこと37 批評について
■批評について
批評とは、自分なりの価値基準の根拠を明確にし、物事を評価することです。
簡単にいえば、「減点方式」で書かれた書評です。
似たものに、書評と読書感想があります。
この二つの境界は曖昧で、世の中に出回っているほとんどの書評は読書感想であり書評といえます。
小説などの専門誌に寄稿されたものは、抱負な知識のもとに評価を下す書評が書かれます。
書評ではなく読書感想と呼ばれるものは、自分のためのメモとして書いた感想です。
読んだ本の良さや魅力などを相手に伝える気のないものは、書評ではなく、ただの読書感想です。
他人の作品を読んでコメントやレビューを書くのも、書評といえるでしょう。
■書評の書き方
書評を書くにはある程度、先に内容を決めておくといいです。
小説かエッセイかだけでも質問項目は異なります。
自分の中で用意しておけば、答えるだけで書評は完成します。
書評の質問には以下のようなものが考えられます。
・本の概要
・本の要約
・著者はどんな人か
書いた人は誰で、どんな本で、なにが書いてあるのかを簡単にまとめます。
・登場人物について
・本の構成について
・本の世界観について
どんな主人公で、どのような構成で書かれ、物語はどんな世界かを書きます。
・勉強になったポイント
・心に響いたポイント
・感動したポイント
自分なりに読んでみて、勉強になったことや心に響いたこと、感動したことをいくつかあげていきます。
一つに限らず、二つ三つ、ポイントを上げてもいいです。
・反論があるポイント
読んでみて、作者の意見に納得できない点や自分なりの考えを書きます。
・読んだ後どうしたいか
・どんな人に伝えたいか
・本の中の名言・名文
読んだあと、どんな気持ちになって行動したのか、作品の良さを誰に伝えたいか、作品内で印象に残ったセリフやフレーズなどを書きます。
書く内容は、まさに読書感想と同じ、といえます。
書評に書きなれたら、「書いている自分の自己紹介」「どんな人を相手に書いているのか」「データや文献を引用する」をしていくと、書評に説得力が増していきます。
自己紹介は、いわゆる肩書です。
専門分野に明るい人が詳しく語ると、興味を持ってくれます。
実際にコンテストを受賞していたり、作家として書籍を出されたりしている人の書評だと、読んでみようかなという気になるでしょう。
人に言えるほどのものがないのなら、本好きとか公務員とか、高校生や大学生、なんでもいいので書いておくと、読む側は親近感がもてます。
だれに書評を伝えたいのかをはっきりさせておくと、内容も変わってきます。
学生向けなら、将来に必要な知識などを重点的に書くでしょう。
読み手が特定できる場合は、相手を意識して書くといいですが、ネットの場合は不特定多数の人が見る機会があります。
そういう場合は、読み手を限定するのではなく、あまり気にせず、ざっくりと大まかにきめるくらいがいいと考えます。
データや文献の引用は、情報の裏付けとなります。
論文を書くときには、特に引用の記載が大切です。
公式データがなくとも、他の本に同じことが書いてあった、その分野の人間も同じことを言っていたと、裏付けがあるだけでも信頼性や説得力がでてきます。
嘘や誤りがないのが望ましいので、うろ覚えの知識で書く前に一度、自分で調べ直してみるのもいいです。
調べ直して発見したことを、さらに書き加えると、情報の信頼性が高まり、好感も持たれるでしょう。
■批評の書き方
批評とはいえ文章なので、読みやすさが求められます。
簡潔な文章を書くことで、わかりやすく、説得力のある内容になります。
また、納得できる自然な流れで整理されていることが重要です。
基本、三人称で書くことを心がけましょう。
文章に客観的視点が生まれ、批評者の分析は単なる個人の意見ではなく、事実として信頼できるものになります。
・要点をまとめた箇条書きの概要を作成
・分析する作品に対する意見をまとめた序文
目的や批評のテーマを定義します。長さは通常三~四行ほど。複雑な場合、数段落にわけます。読者の関心を惹き、読み進めてくれるような序文を書くことに重点を置きます。
・序文で挙げた要点を詳しく説明した本文
最初の行でアイデアを述べ、裏付けになる例を作品中から取り上げます。自分の主張に合致する部分を引用、組み込んでもいいです。引用する際は、引用符に使う記号を統一します。
・最後に、自分の考えを言い換えた批評
自然な形で終わらせるようにします。序文と同じ内容になりますが、別の表現で伝えます。ほとんどの結論は、二~四行で十分です。複雑な批評の場合、増える可能性もあります。
・書き終えた批評文を音読し、校正して推敲
誤字脱字や文法の誤り、ぎこちない言い回しなどを修正します。可能であれば数日かけ、納得できるまで校正と推敲を重ねます。
批評を書くにはある程度、先に内容を決めておくといいです。
・作品のあらすじ
・ストーリー
・登場人物
・世界観
・構成
・総評(独断と偏見による百点満点中、何点か)
あるいは、
・パッケージ(年齢制限や枠の中でどれだけ頑張っているか)
・新しさと古くなりにくさ(先の時代にも通用するテーマか)
・動きやセンス(描写の表現など)
・今の時代に必要かどうか(良い影響があるか)
・ビジネス(売上としてはどうか)
※各二十点、合計百点満点中、減点方式で採点。
小説、とくにキャラクターや設定にこだわったラノベやライト文芸、キャラ文芸を批評する場合はチェック項目を用意しておくといいです。
・キャラクター
読者にとって魅力的か。
掛け合いが魅力的に書けているか。
共感したくなる主人公か。
適切なキャラの配置や書き分けができているか。
・ストーリー
物語の方向性がはっきりしているか。
読者を楽しませる物語が作れているか。
読者の予想を上回ろうとしているか。
題材やキャラ、設定が生かされているか。
・世界観
読者の興味や関心を引きつけられる題材か。
新奇性のあるアイデアか。
世界観や設定に矛盾はないか。
作品世界にリアリティがあるか。
・構成力
物語のはじめから面白いか。
起承転結のメリハリがあるか。
テンポよく読み進められるか。
終盤がしっかり盛り上がっているか。
・文章力
読みやすく、書きこなれた文書か。
文体は魅力的か。
用字用語に誤りはなく、適切か。
過不足ない状況描写ができているか。
※各二十点、合計百点満点中、減点方式で採点。
当然ですが、小説の批評、評価は読者の好みや価値観によって左右されます。普段からラノベを読み慣れていな人にはラノベの良さはわかりません。
一般的に、ラノベの読者は十~二十代。
とくにゲームや漫画、アニメを好んでいる人達。
また、そんな少年主人公が活躍する作品を好む、少年の心を持ち合わせた二十代以上(三十~四十代)の大人。
ライト文芸やキャラ文芸の読者は、十~四十代の女性。
知的でおしゃれなものを好んでいる人達。
また、少女や乙女が主人公として活躍する作品を好む、少女や乙女の心を持ち合わせた三十~四十代以上の大人の女性。もちろん、男性読者もいる。
なろう系ラノベの読者は、三十~四十代のオタク男性。
仕事に疲れている傾向がある。
児童文庫の読者は十代。小学四年生から上は高校生まで。
シリーズ化するため、読み続けることで中学や高校に進学しても読まれる傾向がある。
小説の意見を求める場合、小説のターゲットとなる人を選んで読んでもらい、意見をもらってください。
BLやTL小説を普通の男子に読ませても毛嫌いされるように、シスコンラブコメを若い女性に読んで意見を求めてはいけません。
どうしてこれほど成功したのかわからない作品があるように、人気作家でも凄腕の編集者でも、どうすれば確実にヒットするのかはわかりません。
ただし、失敗する理由ならわかります。
減点方式でされる批評とは、いかにして失敗する理由を失くして成功確率を上げ、ヒットにつなげるかの方法なのです。
新人賞に受賞して書籍化するのを百点満点として、小説に点数をつけるのが批評です。
八十点と採点されたのなら、二十点はなにを減点されたのか、批評した人に理由を聞いてください。
キャラクターに魅力が足らないのか、タイトルがよくないのか、書き出しがいまいちなのか。
できれば、小説をたくさん読んでいて自分の作品ジャンルに明るい、複数の人に意見をもらうといいです。
複数の人から、同じ指摘をされたら、批評の真実性が高くなり、改善点といえます。
★批評されても感情的にならない
何度もいうように、批評は減点方式です。
作品の欠点を指摘するものです。
優しさは厳しさでもあります。
的確に指摘したほうが、相手のためになります。
よかれと思って書いたのに、批評をもらった側が怒ってくることがあります。
作品は作者の子供、作者の分身といってもいいです。
時間を削って、自分が面白いと思って作ったものを貶されたら、反発したくなるのが人の常というものです。
心が折れたくないから、反感を抱くのです。
誰であっても、批判や非難されるのは面白くありません。
批評され続ければ、心は折れ、書く気も失せてしまいます。
世の中には、悪意を持って、他人を批判ばかりする人もいます。
とはいえ、作品をより良くするには貴重な意見なのも確か。
批評される側は、感情的にならないルールを決め、意見は意見として聞くといいです。
★作品の長所を褒めよう
また、批評側も「作品の良いところを見つけて必ず褒める」ルールを持っておくと良いです。
作品の批評を求めてきた人は、底なし沼にはまっている状態です。書いても書いても落選し、もがけばもがくほど沈んでいるのです。
沼でもがいている人が、たまたま掴んだものがイバラのツルだったとします。
棘だらけで、血がダラダラでていきます。
それを見た沼の岸に立つ人が、「手を離せ!」と叫んだとして、はたして手を離すでしょうか。
離せば沼に沈んで溺れてしまいます。だから、「なにもわかっていないのに、偉そうに!」と岸で叫んでいる人に反感を抱くのです。
批評を求めてきた作者も、同じ。
切羽詰まった状態にいるのです。
批評する側は「わたしは、わかっているよ」とメッセージを伝え、どうしたらいいのか一緒に考えてあげるといいです。
長所を指摘することでやる気、モチベーションが上がります。
文豪、芥川龍之介も、夏目漱石に褒められたことで、作家になれたといいます。
批評を書くときは、作品の面白かったところ、良かったところを見つけて、褒めてください。
ひょっとしたら、作品作りに疲弊しているのかもしれません。
そんなときは、休養と相談と環境調整のアドバイスが役立つでしょう。
■批評の見方
ラノベ小説募集に応募し選考通過した作品の作者の元には、選考者の評価シートが送られてきます。また、一般文芸の受賞作の評価は、文芸雑誌などに掲載されます。
「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「構成力」「文章力」など、批評にはいろいろなことが書かれています。
そんな批評も文章なので、見方があります。
重要なのは、「言い換え」「対比」「因果関係」の三つです。
七~八割は言い換え。
残り二~三割は、因果関係について書かれています。
批評の最終的な主張は、抽象的なものになります。
そのため、なにを主張したいかを具体的に述べるため「言い換え」をくり返すのです。
異なる説明や具体例を上げ、ときに似た表現の言い回しを使っても、言いたいことは一つです。
ですから、最初に書かれた要点が重要です。
つぎに注目すべきは、「比較」です。
「本作と他作品」「前作と本作」のように、比較して論が進みます。
「Aは〜だ。Bは〜だ」「Aは〜だ」という構文でAとBを比較するとき、筆者の主張はAを強調しています。
また、「確かにAだ。しかし、Bだ」「AではなくB」という構文で述べるとき、言いたいことはBの方です。
Aを主張をした前提で、Bの結論を導き出します。AがBという結論の理由になっているのが「因果関係」です。
「Bが重要」なぜなら「Aだから」という因果関係で重要なのは、Bを主張したいからです。
また、読む際には、次の視点で書かれているかも考えてください。
一、作者の立場
批評を書いた人は、どういう事をいいたいのか、伝えたいのか。
二、読者の立場
批評を書いた人は読み手の立場として、作品のなにを見て感じたのか。
三、研究者の立場
他の作品と比較して、なにがどう違うのか。
四、信者の立場
作品を読んで、どのように変わったのか。
五、ビジネスとして
作品を通して、業界に与えうるものはなにか。
これらの視点でも読み解き、次作の向上につなげてください。
例えば、です。
ラノベの評価シートの場合、元編集や編プロに依頼することもありますが、下読みをするのはその新人賞を取った新人作家がすることが多いです。
評価シートは応募者の手元にも残るので、応募者に嫌われたくない考えが出版側も下読みする人にも働きます。
ストーリーやキャラクターがパッとしなくて褒めるところがないから、「文章がうまい」と褒めておこうとする場合もあるそうです。
文章を上手に書く新人賞ではありません。
小説は面白さが大事なので、文章はいまのままでいいから、キャラクターやストーリーを面白くしようと、読み取ってください。
人間の頭は、誤字があっても文法が正しければ読めてしまいます。文章中のいくつかの単語で最初と最後の文字以外の順番が入れ替わっても正しく読めてしまう「タイポグリセミア」という現象です。
「誤字が目立つ」と書かれた場合、文法がおかしいことを意味します。すっと頭に入らない、変な文章を書いているから引っかかってしまい、誤字が目立つのです。
自分の書いている文書の文法がおかしいのだと思い、チェックしてください。
自分の国語力を過信せず、国語のドリルを地道に解いて文法をチェックしてください。
話はまとまっているのに、当たり障りのない退屈な話の場合、「オリジナリティを」「個性を出してください」と書かれます。
一次選考の下読みの仕事は、良い小説を選んで次に上げることです。評価シートに、細々と書く必要もなければ、書くスペースもありません。そのため「個性を出して」と書いてしまうそうです。
下読みが選考する出版側が求めているそのレーベルの作品は、王道で、なおかつ新しさのある作品です。
ほんの少し、新しいものを入れてほしいのです。
キャラクターが褒められた場合、それ以上はいじらなくていいです。褒められたからといって、調子に乗っていじりすぎると余計悪くなる場合があります。と、作家わかつきひかるも言ってます。
書いてあるままを鵜呑みにせず、上手に読み解いて次作につなげてください。
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