サポ限に書いていたこと35 小説が書けなくなったとき・7

■書けるけど上手く書けない人


 お話は書けるんだけど、上手く書けないと悩んでいる場合、文章の書き方について考えなおしてみてください。

 いくつか方法があります。



★好きな文体をみつけるには


 くり返し読んだ本の中から選びます。

 あなたが、どん底時代に読んでいた本を思い出してください。

 一人の作家の本をすべて読みきることを「全滅癖」といいます。

 そんな作家から、文体を真似てください。

 好きな作家の「処女作」を手に入れて読んでみてください。

 また、メインとバックアップの作家、二人を決めます。

 メインの文体とするのは、五十冊以上書いている作家から選びます。学ぶときは、出版順に全部書き写します。(書き写すと勉強になります。が、そんな時間がない場合は、この本だけはと思えるものを選んで、書き写してみてください)

 バックアップにつかう文体は、直感で選びます。

 処女作の書籍を三冊ほど選ぶと良いです。

 


★読んでもらうには

 

一、断定して書く

 思い切って言い切ると、文章が短くなります。

 短い文章にすれば、テンポも良くなります。

二、ぼかし言葉を削る

「など」「ほう」「とか」「という」

「だろう」「ような」「かもしれない」

「と思う」「ある意味」など。

 受け身言葉の「~われる」「~わされる」「~られる」等を使うのもやめます。

三、先回りの言い回しをやめる

 読み手の反論や批判を先回りして封じる文章は良くありません。

四、大人が使う婉曲文章を避ける

 日本人は和を重んじ、乱さないために婉曲表現が生まれました。「恐れ入りますが」「お手数ですが」「申し訳ございませんが」などのクッション言葉も同じです。

 身近なところでは「~とか」「~と思われる」「~と言える」も婉曲表現です。

 回りくどい表現が、わかりにくさを生む傾向があります。

五、いきなり決めつける

 潔く、書きます。

 ずばり、そのものを伝えます。

 腑に落ちた文章を書きます。

六、小細工せず、いいたいことをストレートに書く

 比喩を多用せず、はっきり書いたほうが伝わりやすいです。

七、期待感がないと読めない

 説明から入るのではなく、すでに大ブームとして存在しているものとして断定して扱います。

 過去よりも、いま起きていることを書くようにします。

八、二人称は距離を縮め、三人称は距離を縮める

 一人称は自分自身に対してもおしゃべりになりやすいので、喋りすぎている場合は、無口にさせるといいです。

九、読み手は疲れている

 大人は仕事で、十代は勉強や遊びで疲れています。

 小学生でもわかる文章を心がけましょう。そのために、作者は小学生の気持ちになって書くと良いです。

 せめて、中学二年生が読んでもわかる文章にします。

 難しい漢字にはルビを振ります。

 声に出して、二十秒のところに「、」をつけます。

 二行以上またがる文章には、次の行へ移るときに熟語がまたがらないように気をつけます。

 名詞の修飾語は一つにします(「きれいで大人しい女性」の場合なら、「きれいな女性で、なおかつ彼女は大人しい」「大人しい女性で、見た目もきれい」「大人しい女性。見た目もきれい」)。

 読みやすさのために、「AとB」という表現をやめます(「好きなものはAとBです」→「好きなものはAです。Bもだけどね」)。

「AかB」という表現もやめます。「AとB」と「AかB」の両方の表現もやめます。

 小難しいカタカナ語は使わないようにします。

 ベタな展開は安心できます。

 病院のベッドで寝ている人が、傷つかない表現を使います。

 作品内容にもよりますが、差別用語は使わないでください。

 ポジティブな文章を使います。

 悪口は書かないようにします。

 良かったこと、すぐできる小さなことを伝えます。

 



★読み続けてもらうには


一、文章に通過案内を入れる

 目的地をはじめに提示し、途中に通過地点の案内、冒頭に疑問文を入れます。問い→答え→問い→答え、というシンプルな流れは、書き手読み手ともに読みやすいです。

二、これまでとこれからの案内をさり気なく入れる

 現在地も入れるとわかりやすくなります。

 必要なのは正しさではなく、納得感です。

三、実感が伴うと話に迫力が生まれる

 共感できればさらに良いです。

 共感のために、敷居の低いテーマ「家族」「健康」「食べ物」などを選びます。

四、ネタに持っていく

 虫の目で見て書く。(取材して書く)

 鳥の目で見て書く。(体験を思い出して書く)

 現代ドラマ、コラム、社説には使えそうな手法です。

五、意味のかたまりで引き込む

 漢字をひらがなに、ひらがなを漢字にしてみる。

 漢字の文章は、読みにくく重い印象があります。

 漢字を「ひらく」とはひらがなにすることです。

 また、「とじる」とはひらがなを漢字にすることです。

 他には、句読点をあえて省いて目立たせる方法もあります。

六、字面について

 白っぽいと読みやすいです。

 漢字とひらがなの割合を、三対七にするといいとも言われます。

 カタカナも減らします。同じ漢字が、文章内にくり返し使われると、目が滑る現象が起きて読みにくくなります。カタカナの連続多用も同様です。

 漢字は「ひらく」より、「ほどく」を心がけます。

 たとえば、「完了」をひらくと、「かんりょう」ですが、意味が伝わりにくくなります。

 この場合、「終わらせた」と漢字をほどいてください。

 白っぽい字面の中に、難しい漢字を使うと、文章が引き締まります。



★飽きさせないためには


一、約物を使いすぎないこと

 余韻を表現するための「……」「――」

 疑問符感嘆符の「?」「!」

 あるいは「=」「・」など。

 記号に頼らず、余韻や驚き、戸惑いなどは文章で表現してください。

 これらの多用をすると、読者の目には、文章で表現できない稚拙な作者なんだと思われてしまいます。

二、文章に抑揚をつける

 くだらないことを真面目に、真面目なことをくだらなく書いてみてください。

「ですます調」の文書に「である調」を、または「である調」の文章に「ですます調」を入れてみてください。

 使い方が難しいですが、文章に抑揚が生まれますので試してください。

 小説の場合、誰かの言葉を思い出したとき、「ですます調」の文章を「である調」に混ぜる方法があります。

 他にもやり方はありますが、いろいろ試してください。

三、緊張と緩和をつくる

 緊張を高めて落差を作ります。

 こうすることでお話に変化が生まれます。

四、表現のインフレを下げる

 山場は一つだけ。

 テンションを上げすぎていると、どこが盛り上がりなのかわからなくなります。

「!」は使ってはいけません。

 書き手が興奮すれば、読み手の読者は冷めていきます。

 体言止めを使うと盛り上げを押さえ、無機質な手触りとなります。

 漢字を使い、黒っぽい字面にすると話もだんだん濃くなります。

 つまり、書き出しは漢字が少なく白っぽい字面にしておくと、読みても物語に入りやすいです。

五、必要以上に具体的に書く

 たとえば「あなたを愛している」より、「あなたの声が聞きたい」と詳しく書けば、説得力が生まれます。

 登場人物の「見たまま」「聞いたまま」を書くことが大事です。

 抽象化の表現では、読者に伝わりません。

 固有名詞を使うより、具体的描写をすることを心がけてください。

「ゴブリンが現れた」といわれても、RPGで遊ばない現代の子供たちには意味がわからず、想像もできません。

 逆に「やりらふぃー」といわれて、大人がわからず、想像できないなんてこともあるかもしれません。

 人が集まって混乱している場面を描くときは、「混乱している」ではなく、混乱しているありのままを描き、読み手に想像させることで伝わります。

 皮膚感覚で味わった体験を具体的に細部まで描くことで説得力が生まれ、読者に伝わるのです。



★納得させるには


一、説明的でもいい

 オチに入るとき、居直りの言い方を使います。

「やや脱線するが」「話を戻そう」「というわけで」

「閑話休題」「さて」「さあ」

二、反対の味を入れる

 普通の言葉を意外な場所で使うことで、違和感を作ります。

 ボケたことを言っている相手にツッコミというマウンティングを取って自分は賢いアピールするけど、SNSでツッコミは「クソリプ」と呼ばれる、みたいな感じ。

三、隙のある文章

 古語や方言を織り交ぜて、おかしさを出します。

四、常套句は使わない

 使い古された言い回しは通じないこともあります。

 言葉は生き物なので、鮮度を確かめてから使うように。

 それでも時代が流れるスピードは早いので、言葉の賞味期限は以前ほど長くありません。

五、大事なことは書かない

 簡素でドライな文体のほうが伝わりやすいです。

六、きれいなオチは短文

 投げっぱなしで考えさせられる、わかりそうでわからない程度の難しい言葉をオチに使って読者に考えてもらいます。



★読みやすくするには


一、主語が二つ以上ある熟語は、文を二つにわける

二、不必要な主語は省く

三、主語と述語、目的語と述語を対応させる

四、複数言葉が述語にかかるとき、品詞をあわせる

 (例「名詞、名詞、述語」)。

五、書き出しに前置きしない

六、関係性をはっきりさせる文章を心がける

七、一つの文には、一つのことを書く

八、丁寧な説明で相手に伝える

九、同じ言葉を一文に使わない

  目が滑って読みにくくなるので使ってはいけません。

十、修飾する言葉と、修飾される言葉を近づける

十一、時間経過を明確にする

十二、過去の描写に現在形を混ぜると、臨場感が増す

十三、「は」は、必ずしも主語を表さない

 助詞「は」は、格助詞「が・の・に・を」が示す格(単語同士の関係性)を表すことができます。

十四、「は」と「が」の使い分け

 すでに知っている情報には「は」をつかいます。

 知らない情報には「が」を使います。

 (例「彼は死にました」「彼が死にました」)

十五、「と」と「に」と「へ」

 「と」は相互的な動作に、「に」は一方向の動作に使います。

 「へ」は方向、「に」は到達点に使います。

十六、使い方はセットで覚える

 「決して~ない」「必ずしも~しなくていい」

 「全然~ない」「まったく~ない」

 「もし~なら」「もしも~ならば(たら)」

 「おそらく~だろう」「まさか~ないだろう」

 「もしかしたら~かもしれない」

 「いくらなんでも~ないだろう」「もしや~ありませんか」

十七、「より」と「から」

 「より」は起点や比較に使い、「から」は起点に使います。

十八、「させる」と「する」

 「させる」は他動詞、「する」は自動詞です。

 「〜を」    →「させる」

 「〜が(は)」 →「する」

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