サポ限に書いていたこと23 物語のキャラクター

 作品を作るとき、読者に共感されることを意識する必要があります。

 ですが、初めて見る作品は、他人も同然。

 いくら主人公でも、読者にとっては知らない人です。見ず知らずの人に共感は持てません。

 主人公の名前を読者と同じにしたり、自分と同じと思える欠点を持たせることで、親近感を抱きやすくします。

 さらに、主人公の日常と特殊な事情を描いて知ってもらうことで、他人だった主人公との距離が縮まっていきます。

 さらに、読者から「頑張って」と応援してもらえるような、愛すべき憎めない主人公像を作ることも大切です。

 忘れてはならないのは、物語の主人公だから、欲求と目的をもたせることはもちろん、早い段階で読者にも理解してもらうこと。

 何を求め、どこへ向かいたいのかがわからないと、読者は共感しにくく、読むのをやめてしまうかもしれません。

 

 物語のキャラクターはどのようにして作るといいのだろう。

 困ったときの大塚英志氏です。

 作者の体験をキャラクターに投影することでリアルになることもあるけれども、読者に届けるキャラクターは、作者の告白にならない技術が必要だと説いています。

 子供のキャラクターが作者の投影にならないために、乳幼児が特別の愛着を寄せる移行対象をキャラクターにもたせるのが必要とも説いています。

 主人公はなにかしらのトラウマや悩みを抱えており、移行対象(ぬいぐるみとかタオル、枕など)不安が高まったときなどに抱きしめたり握り締めたりしている。そんな主人公が移行対象を手放すことは、問題を克服した証となり、大人へと成長する姿を描くことができます。



■大塚英志の『ストーリーメーカー 創作のための物語論』

 世界中のすべての人々に好まれるストーリー作成のためのマニュアル・30の質問。


★問1~16:主人公の内的な領域を設計する


1.まずあなたがこれから書こうとする物語のうち、頭の中に現状あるものをどのような形でもいいのでとりあえず書いて下さい。

2.問1のプロットを一文で言い表すとどうなりますか。

3.あなたがこれから書こうとする物語の主人公について思いつくまま書いてください。

4.あなたの主人公が現在抱えている問題を「主人公は○○が欠けている状態にある」という形で表現して下さい。欠けているものをまず具体的に書き、そして、次にそれが何の象徴であるかを一言で書いて下さい。

5.あなたの主人公の「現在」について設計して、一番イメージにあるものを以下の 四つから選択してください。   

 A.まだ運命を自覚していない、普通の人(0)  

 B.何らかの社会的地位や成功の状態の人(プラス)

 C.かつて成功したが、今はうまくいっていない人(マイナスからプラス)

 D.全く成功していない人(マイナス)

6.ログラインを「主人公は○○の状態で××を求めているが最後に△△になる」というシンプルな一文にまとめる。これは主人公の内的な変化の定義です。 

7.主人公の現在に影響を与えた「過去」について書く。

8.問4の答えをふまえて主人公が「欠けているもの」を手に入れるために与えられる具体的な課題やミッション、クエストを考える。

9.その外的な目的や課題を最終的に達成するか否かを決める。

10.その結果、象徴的に手に入れるもの、もしくは失うものは何か?

11.主人公の目的達成を妨害する「敵対者」は誰か?

12.主人公と敵対者の価値観・考え方はどう違うか?

13.主人公の傍らにいて目的達成を助ける「助手」は誰か?

14.助手が主人公を助けるのはなぜか?

15.主人公を守ったり成功のポイントになる力(アイテムやアイデアなど)を与えてくれる「賢者」は誰か?

16.主人公が賢者から援助を受けるのはなぜか?


★問17~30:物語の構造を組み立てる


17.主人公の生きている「日常世界」はどういう場所・環境か?

18.その日常に危機が迫っていることを予感させる出来事は?

19.その日常は具体的にどのように脅かされるか?

20.主人公に行動を起こさせるきっかけになる「使者」「依頼者」は誰か?

21.主人公が行動を起こすことをためらったり、誰かにとめられます。そのくだりを必ず作っておいてください。

22.主人公の行動に対してタブーを与えるか? 主人公の行動を制限するルールやキャラクター。

23.主人公が物語の中で到達する「日常」と最も離れた場所はどこか?

24.主人公はそこで直面した問題をどう解決し、結果、どう変わるか?

25.主人公が目的を達成するために失ったものは何か?

26.敵対者と対峙したとき、主人公は理解・和解するか? もしくは許さないとしたら何故・どこが?

27.物語の結末において主人公の生きる環境はどう変わるか?

28.これまでの回答をもとにグラフに書き込む(※下記参照)

29.以上をふまえ、問1のプロットをジョセフ・キャンベルの「ヒーローズ・ジャーニー」の12のプロセスに当てはめて整理する。

 ①日常の世界

 ②冒険への誘い

 ③冒険への拒絶

 ④賢者との出会い

 ⑤第一関門突破

 ⑥仲間、敵対者/テスト

 ⑦最も危険な場所への接近

 ⑧最大の試練

 ⑨報酬

 ⑩帰路

 ⑪再生

 ⑫帰還

30.もう一度、物語を一言でまとめてみる。



■大塚英志の『物語の命題』

 

・アトムの命題

 主人公は人造人間。成長できない。

 人のように成長したいと思う。

 待ち受ける結末は、成長とは限らない。

 欠落、喪失からはじまる。

(記号が具体性を要求されるという矛盾した運命)


・エーリクの命題

 主人公は外からやって来る。

 内側の世界の人達は彼らの問題を直視できない。

 主人公は皆を問題点に直視させる。

 問題点は解決し、主人公も同時に成長する。

(空間の境界の越境)


・百鬼丸の命題

 事情のある両親に「不完全な子供」が生まれる。

 赤ん坊は水の中に捨てられる。

 流れ着いた先で拾われ育てられる。

 子供は出生の秘密を求めて旅立つ。

(象徴と現実の区別)


・ジェニーの命題

 最初に二人が出会った時は気づかなかったが、出会う度に大きくなっていく。二人の時間は一瞬だけ交わることがあったとしても、運命はたいてい二人を引き離す。

(泣ける話が作られる)


・フロルの命題

 主人公は男にも女にもなれる。

 主人公の前に異性が現れる。

 主人公はどちらが自分らしいか考える。

 主人公は自分の性を決定する。

(自分をはっきりさせるプロセス)


・アリエッティの命題

 主人公は庇護者から離れ、大人の一歩手前でとても不安。

 不安を購う友が現れる。

 友人に守られて主人公は成長する。

 主人公が大人になったとき、もう友は現れてくれない。

(成長への選択を象徴するアイテム・まち針。現実受容の手段、移行対象・ライナスの毛布)

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