サポ限に書いていたこと21 作品の見方

■作品の見方、四種類


一、スポンサー向けの視点

 宣伝用であり、ポスターやパンフレット、表紙など、どんな見た目にするか。

 子供でもわかるよう、ひと言で説明できる。

 あおりや見出し、キャッチコピーなど。本の表紙のデザイン。主人公は誰で、どんな登場人物や世界観なのかが、ひと目で分かる。


二、シナリオ視点

 見る人に対して、どんなストーリーか。内容を詳しくする。

 本の裏表紙に書かれた内容や、映画のパンフレットに書かれているストーリー説明。作品の導入部分や見どころ。

 ラストの結末まで書かれていないものが多い。


 一と二には、一般向けに作られている。

 公開されており、誰にでも目にできる、建前の部分。

 ネタバレはしない。

「面白そう」に魅せることが大事。

 

三、スタッフ視点

 作品で描かれていることは、どんな意味があるのか。

 どうしてこんなものを自分は作りたいのか、作らなければならないのかなどを、関係者と共有する。

 映画やアニメ、ドラマなら、制作に携わるスタッフ向け。

 漫画や小説なら、アシスタントや編集向け。

 作品=作者の人生に関係するもの。人生の一部が含まれている。そうでなければ、長期にわたる制作を続けられない。

 ジブリ作品なら、スタジオジブリを舞台にした内容が作品に盛り込まれている。だからスタッフは、自分たちのことを描いている意識を共有しつつ、長期にわたって集中が途切れることなく制作できる。

 自分と関わりのないものを、数カ月、数年もかけて作ることはできない。作れたとしても、良いものはできない。


四、本音

 作品は作者一人のもの。決定権は作者自身にある。

 作者が意識、無意識かはともかく、本音が現れている部分。

 作品全体からすると、なぜ必要なのかわからないような不自然な部分に現れやすい。

 ただし、本音を意識して作品に盛り込むと、シナリオとなり、制作が流れ作業となってしまう。

 意識するのではなく、無意識で作品に入り込んでしまうのが望ましい。

 自分をどこまでさらけ出すのか。わかる人にだけわかればいい。わからない人にはわからなくてもいいようにする。

 宮崎駿の場合、自分の母親や女性像、少女像、性的なものも含めて、切迫や緊張している印象的シーンにあえて混ぜ込むことがある。


 三と四は、一般向けではない。

 制作側にしか公開されておらず、限定的な内輪話。

 作者がどんな意図で作られたのか、ネタバレや本音の部分。

 一から四が貫かれて作られた作品は、本気度が高いものになる。


 作品を作るときは四の、作者自身の本音を考えてみるといい。

 ドラマや映画、アニメなどは、大勢のスタッフがいなければ作れない。しかも、一年以上もかけて制作するので、ある程度の思考の共有が必要となってくる。

 漫画なら、作者とアシスタント、編集。小説の場合、作者と編集くらいしかいない。(相談に乗ってくれる、理解のある友達もスタッフの一員に入るかもしれない)

 たとえ作者だけで制作するにしても、長編作品を書きあげるまでは数カ月の時間を有する。その間、一度も集中を切らすことなく制作を続けることは不可能。執筆が一日一時間しか取れないこともある。

 そんなとき、「どうしてこの作品を作らなくてはならないのか」を明確に持っていると、集中を切らすことなく、席を離れていた時間があったとしても、集中した仕事を続けることができる。

 短編や今回の話を書き上げるだけといった限定的なら、「お金のため」「できあがったらご褒美を自分に買う」でもいい。

 いいのだけれども、長編作品を書き上げるためには、自分だけしかわからない本音、命題をもっていたほうが書き続けられる。

 必ずしも、その命題が作品に現れなくてもいい。

 命題から醸し出されるものが形となって、面白い作品ができあがれば良いのである。

 

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