お話の生み出し方

■逆プロットを作ろう


 なにもないところから書ける人もいます。

「自分も書ける」と思って行き当たりばったりではじめ、途中で迷走する人は多いです。

 そうならないため、「物語の設計図」「構成案」とよばれるプロットが必要になってきます。

 プロットを作るのが難しい場合、逆プロットを作りましょう。

 既成作品から、自分でプロットの書き起こしをするのです。

 

 箇条書きでいいので、起承転結を流れで書き起こします。

 最初のツカミがあり、次におもしろいと思わせる展開が用意されているのが「起」「承」です。

 次に、いい意味で読者や視聴者を裏切り、驚かせて引き込む「転」につながります。

 また、途中には必ず、伏線ポイントがあります。

 ヒット作では、伏線回収がされていることに気づくでしょう。

 最終回でガッカリする作品は、伏線回収ができていないからだとわかります。

 夢オチがダメなのは、起承転でおこったものすごい展開の伏線が回収できず、作者本人は意表をついたつもりでも、読者には「つまらない」と思わせてしうから。

 逆プロットを作る練習は、物語の流れを分析するだけでなく、ヒット作にはヒットするだけの理由が必ずあることを知るためにも意味のあることです。



■読者を唸らせる刺激のある作品を作るには


 世にある物語の筋や設定には、似たものが多いです。

 それでも「新しい」作品が生まれるのは、素材の料理の仕方にあります。

 殺し合ってどう生き残るかという設定のデスゲームものがヒットしたとき、次々と似た作品が登場しました。

 死を扱った物語は非常にドラマチックで、あり得ない設定が面白かったから。だからいまも、デスゲームものは人気のあるジャンルになっています。

 異世界転生ものも、ヒットしたあと、次々と似た作品が登場しています。

 作品を作られているみなさんならお気づきだと思いますが、人を面白がらせるポイントをたくさん集めて詰め込んだ、非常にずるい作品です。

 ヒットする作品は、これまでなかった組み合わせの設定で物語を作ったから、凄いのです。

『推しの子』も同じです。

 流行りの転生もの要素に、芸能界を舞台に、学生アイドルをしながら、誰が父親なのかというミステリーを盛り込んでいます。

 ヒット作を狙うなら、流行りものをいくつも盛り込み、かけ合わせるのが一つの方法です。



■アイデアが降りてくるとは


 書きたいテーマがあるから、人は作品を書こうとします。

 いきなりは、形になりません。

 頭の中に書きたいテーマを思い浮かべ、いつもかき回していれば、あるときつながり、ふっとアイデアが湧いてきます。

 多くの人が「降りてくる」と表現している現象です。


 作品を書くとき、読ませたい対象を絞ると良いです。

 作家になりたい場合、狙っている賞の過去十年くらいの受賞作を読んで対策を立て、どういう作品を書くべきか、どんな内容にすべきかを考えます。

 イメージするのは、自分が書こうとしている作品が受賞作に並べられたとき、カテゴリーエラーをしていないかどうか。

 現代ドラマの作品が多い児童文学に、エロい話やエンタメ系のデスゲームを応募しても落とされるでしょう。

 受賞作を読めば、どんなカテゴリーの作品を送ったら良いのか、傾向や対策も見えてくるでしょう。



■お話の種のみつけ方


 なにも浮かばないときは、取材をするのが良いです。

 気になるところに行き、スポットを巡り、「もし、〇〇なキャラクターだったら、ここで✕✕なセリフをいい、△△な行動をとる」と思い浮かべるなど、実物を見たり体験したりするなど、多角的に情報を仕入れながら発想力を磨いてみてください。

 ファンタジー作品を書きたいけど、実在しないから見に行けないじゃないか、と思うかもしれません。が、ファンタジー世界に似た場所、たとえば王宮が登場するのならば、王宮の豪華な建物や室内を見に行くのも、作品づくりに役立ちます。

 海外に行かなくとも、博物館や美術館、歴史資料が展示されている場所めぐりをするのも有効です。


 でもでも、「思いつかない」という人もいます。

「自分には才能がない」とは、口が裂けても言ってはいけません。

 才能は、生きている限り誰もが持っています。

 書く意識を持って探せば、ある日ふっと「これは使える」と気づきを得られるでしょう。

 そうして思いついた種を、ノートに書き留めて集めるのです。集まったアイデアノートを見ながら、お話を思いついてください。

 それでも種がみつからないのなら、一つ方法があります。

 当たり前だと思っていることに妄想を加え、「もしも、〇〇だったら」と考えてみてください。

「もしも、この世から病気がなくなったら」と考えてみる。

 あるいは、

「もしも、あらゆる病気を吸い込んでくれる人がいたら」

 または、

「もしも、この世に幽霊が本当にいたら」

 もしくは、

「もしも、自分が死んだと気づいていない幽霊がいたら」

 妄想や想像は自由です。

 想像することで、お話の種がみえてくるでしょう。


 言葉遊びからお話の種をみつけるのも一つの方法です。

 いろんな言葉の書いたカードを無作為に選び出し、言葉を作ります。なんでもいいです。

 ショートショートの神様、星新一も行っていた三題噺です。

 無数に書いたお題のメモを箱に入れ、無作為に取りだし、そこからお話を考えるやり方です。

 クローゼットと猫を組み合わせ、「猫のクローゼット」を考えてみる。猫用のクローゼットのなかには、なにが入っているのだろう。中には猫がぎっしり入っているのかもしれない。そもそも、なぜこんなところに猫がいるのかしらん。想像するだけでも、何やら楽しいお話になりそうな気がしてきます。


 一枚の絵をみて、物語を考える方法もあります。

 ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデの父親は画家で、日曜日になると、父親の描いた絵を家族で見ながら、いろいろな話をしたそうです。

 良い絵とは、物語が生まれる絵のことだそうです。

 それはともかく、どんな絵でもいいので眺めてみましょう。

 物語の挿絵として考えたとき、人物や背景、道具から連想してみるのもいいし、描かれているなにか一つに絞ってもいい。

 絵にあるもの以外のものを登場させて、いろいろ想像をめぐらしてみる。そうすることで、物語をつくることができます。


 思いつかない場合は、民話や神話、名作の骨格部分の話を借りて作ってみる方法もあります。

 既存のお話の骨格だけを取り出し、あらすじから別の話を作ることで、あたらしい作品が作れます。

 これは盗作ではなくリメイク、アレンジです。

 世にあるほとんどの作品は、物語の構造を元にして、作られているのです。

 

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