三幕八場で書いてみよう
■三幕八場とは
ドラマの基本は、主人公が欲しがっているものを決め、手に入れるまでの障害の強弱を用意し、それらを乗り越えてどう変化していくのかを描く。
小説に限らず、映画やドラマ、アニメに漫画など、よくできている作品は「三幕八場」で作られている。
小説新人賞の応募原稿作品の二割は、全然お話ができていないという。七割は、お話はできているけれど、真ん中部分の二幕目が面白くない。残り一割ぐらいが、キャラとストーリーと構成ができていて、一次選考を通過していく。
つまり、三幕八場構成ができていれば、一次選考はだいたい通るのである。
もちろん、作品として面白くなければならない。
面白さは、伝わりやすい文章と設定の斬新さ。ラノベをはじめとするキャラ文芸なら、キャラ立ちと特殊世界の蘊蓄が必要となってくる。
◆三幕八場の構成
一幕・問題提起
一場:状況説明(物語のはじまり)
二場:目的の設定(主人公が目的を持つ)
二幕・挑戦と挫折
三場:一番低い障害(最初の課題)
四場:二番目に低い障害(重い課題)
五場:状況の再整備(転換点)
六場:一番高い障害(最大の課題)
三幕・物語の終焉
七場:真のクライマックス(どんでん返し・最後の課題)
八場:すべての結末(エピローグ)
最初に考えやすいのは、出だしの一場と、オチの八場である。
主人公が誰で、何を欲しがっているのか、そのために何を解決しないといけないのかを決めなくてはならない。
一幕は全体の四分の一。
作品が三百枚なら七十五枚。
五枚から十枚くらいで導入部分、「誰が」「どこで」「いつ」「なにをする話」なのかを読者にわかってもらう。
一幕の一場で「どんなはじまりか」「主人公の登場のさせ方」『どんな人物か」「どんな目的」「どんな世界で生きているか」の状況説明をする。
二場目では「どういった背景」「誰と出会うか」のきっかけを作り、「主人公はとんな目的が欲しいのか」「主人公はどうして目的を持つのか」を提示する。
一幕のラストでは、第一ターニングポイントがある。ここでは大きな出来事や衝撃的な事件が起き、主人公を次の行動へと向かわせる。目的達成までには、妨げる要因がたくさん出てくる。
二幕は全体の半分の量。
作品が三百枚なら百五十枚、費やす。
役割は展開。設定をくわしく説明することが展開ではない。
設定が破れ、なんらかの変化が起こらなければ展開したとはいえない。
二幕は、障害をひとつずつ解決し、目的に近づいていく物語のメインパート。
三場は「一番低い障害」に主人公や周りの人間が目的に向かって第一歩を踏み出すシチュエーション。
「主人公は何をするか」「行動の結果何が起きるか」「どんな気持ちの変化が生まれるか」「どうやって新たな課題を手に入れるか」「新たな課題とはなにか」を描く。
四場は「二番目に低い障害」とあるように、障害はだんだん難しくなっていかなければならない。
ここをおもしろく書けるかどうかが、プロになれるかどうかの境目である。「新たな課題に対して、主人公は何をするか」「行動した結果、何が起こるか」「どんな気持ちの変化が生まれるか」
「今のままでは太刀打ちできない、高いハードルはあるか」「あるならどんなものか」を描く。
ちなみに、障害は二つだけしか作ってはいけない、ということはない。
三つ、四つ、五つと、障害を用意し、一つクリアするごとに、徐々にレベルが上っていけばいい。
ただし、一番良くないのは、ひとつの出来事が終わったあと、また似たようなエピソードがくり返されていく連作短編にしてしまうことである。
出来事がエスカレートしていかなければ長編にならないのはもちろんのこと、それぞれの話につながりがないと、短編をつなげただけになってしまう。
たとえば、前の出来事で得た情報が伏線となり、その後の出来事に活用されるなどの連鎖があり、最終的には三幕に用意されていくクライマックスへと集約される作りになっているならば、二幕が面白いものになっていく。
冒頭とオチだけではなく、真ん中の第二幕を一番面白く読んでもらわなければ、読み手に飽きられてしまうのだ。
そうならないために、第二幕を面白いものにする必要がある。
まずはじめに、主人公がクリアしなければならない「一番難しい障害」はなにかを考える。思いついたら、六場に持ってくる。
その後、三場と四場の「低い障害」を考える。
一番難しいものを先に考えてから、簡単なものはあとから考え、並べていく。そうすることでお話が盛り上がり、面白くなっていくのである。
一幕の二場で、主人公が何を欲しがっているのかが固まる「最初の目標」は、二幕目で終わらせ、二幕目の真ん中で「これをやり遂げない限りダメ」と新しい目標が設定されて主人公を追い込むことで、後半の展開がスリリングになる。
二幕目を盛り上げるには、作者自身にどれだけのストーリーネタ、シチュエーションを持っているかで決まる。笑わせどころや、複数の山場がある。展開は緩やかだが、二幕の終わりに向かって徐々に早くなっていく。
そのためには、たくさん作品を観たり読んだり、様々なたいけんをするなどして蓄える必要になってくる。
独創性があれば問題ない。が、そんな人は万に一人しかいない。
他作品からアイデアを得たり、違うジャンルのものを当てはめたり、見せ方を変えてみたり、いままでとは違う組み合わせをすることで斬新さや新鮮味を出すことができるだろう。
主人公のライバルを作るのも大事である。
主人公が物理的に立ち向かうためのシンボルなので、目に見えないといけない。だから、敵のボスでなくてもいい。
ドラマが生まれるのは、主人公が行動をはじめる前の、決断する場面。ヒーローものなら、決断をしてカッコよく登場するところが一番盛り上がる。
その後のアクションは、書かなくても結論は出ている。
そこまで書いてあれば、お話の結論にたどり着けているから、打ち切り漫画の「俺達の戦いはこれからだ」で終われるのだ。
五場は転換点・状況の再確認。
負荷のかかる問題を解決した四場の後、小休止のシーン。
いわゆるミッドポイントであり、全体の折り返し地点。展開した話が結末に向かって動き出す。
四場と五場のあいだに、六場と七場につながる仕込みをする。
とくに、次に来るのが最大の課題なので、「高いハードルに対して、主人公が何を考えるか」「何か出来事があって主人公の意識が変わるとすればなんなのか」「どのようにして決意を固めるか」を描く。
三幕八場で考えたとき、六場の最後が物語としてのラスト。
クライマックスの七場につながるため、一番盛り上がるシーンである。いわゆる、第二ターニングポイント。
七場以降は、結論がどう実現されるかを具体的に見せているだけ。だからこそ、結末をうまく描けば盛り上がる。この構造は、どんなジャンルの物語にも当てはまる。
シリーズ化している長編の場合、第三幕に続かず、六場を描いたら一旦切り、次の物語に備える。
「四場で登場した最大のハードルは何だったか」「どんな出来事があって、最大の課題と実際に直面するのか」「主人公はどんな手段を持っているか」「手段を使った結果、どう問題が解決されるか」「どう気持ちが変化するか」を描く。
第三幕は全体の四の一。
第一幕と第二幕と第三幕の割合は、一対二対一である。
役割は解決。主人公の目的が実現するかどうかが問われる大きなクアイマックスがあり、それを乗り越えて解決する。
第三幕はエピローグに向かうの、七場か八場のどこかで、どんでん返しを入れることが一番重要になる。
最大のハードルを乗り越えた次の瞬間、緊迫感が続くシーンがくる。七場を乗り越えることで、物語は結末を迎えるられる。
作品に大切なのは、作者が描きたいことを、いかに魅力的に読者に伝えられるか。だからこそ、第二幕の展開と第三幕のどんでん返しが大事である。
集中力の続くところなので、一気に読み終えられるテンポの良さが必要になる。
「なにが起こったか」「主人公たちに待ち受ける最後の障害はなにか」「どういった手段で切り抜けるか」を描く。
八場はエピローグ。物語の終わり。
気持ちよく追われるシチュエーションを用意する。ハッピーエンドでない場合は、気持ちよく終わらないけど。
エピローグでは、主人公が当初思い描いていた問題が解決し、さわやかに終わる。「切り抜けた主人公達はどんな思いか」「どうやって物語を終えるか」を描く。
三幕八場のプロットができたら、書きたい長さに合わせて、一対二対一の割合にわけて作っていく。
わかりにくいなら、単純にページ数を八で割るといい。
長編小説の応募規定なら、四〇〇字詰め原稿用紙で三百から三百五十枚だろう。
計算しやすいように三百二十書くとする。
一場を四十枚、一万六千字ずつ書いていけばいい。
一度で完成原稿を作る必要はない。
とにかく、初稿である第一稿をオチまで書き上げる。
書いているとき、冒頭に説明を書きすぎて、話がなかなか進まないことがある。
説明は二幕に入れていけばいい。
大事なのは、六場の一番高い障壁クリアと、七場のどんでん返しである。
プロットからズレてしまってもいいので、とにかく書き上げる。
第一稿ができあがったら、時間をかけて第二稿、つまり書き直しをしていく。
はじめに書いた三幕八場のプロットを見ながら、それぞれのポイントが描けているのか、全体のバランスが取れているか、枚数を確認しながら、大幅に書き直す。半分以上書き直すつもりで。
おそらく、初稿よりも出来が良くなっているはず。
その後、第三稿、第四稿と、推敲や手直しをして、原稿を完成させるのです。
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