児童文学について・4
■児童文学の文章
効果的なセリフを入れ、登場人物の生き生きとした行動を描く。
小さい子向けの本には絵が大きく入るので、文章に説明や描写はほんの少ししかいらない。長いと飽きてしまう。
対象年齢が上がれば上がるほど、絵は少なくなり、文章で表現する量が増え、大人の文学に近づいていく。
文字だけなので、説明や情景描写、心理描写が入っていないと読者には伝わらない。
場面にバランスよく、適度に入れるように。
読者にリアルな感覚を伝えるために、五感を入れるといい。
主人公の感覚を視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚で描写すると、読者もおなじ感覚を味わうことができる。
児童文学だけでなく小説全般にいえることだが、子供だましが通用しないため、「理解しやすさ」「読む楽しさ」「ちょっとした教訓」が書けているかを心がける。
■子供の視点
自分が子供だったとき不思議に感じていたことが、大人になるにつれて当たり前になったことはたくさんあるはず。
不思議に思う気持ちや憤り、不満などに寄り添った描写があれば、子供たちからの共感が得られやすい。
■子供の集中力が続く分量を意識
長大な物語は、ターゲット読者が手に取りにくい。
児童文学の小説は一ページごとの文字数が少なく、全体としての文量もライトノベルなどにくらべて少ない。
各ジャンルに設けられた賞の応募規定から比較してみる。
★ライトノベル
「電撃小説大賞」の応募規定は、長編であれば一ページ四十二文字✕三十四行で八十から百三十枚。四百字詰め原稿用紙換算枚数だと、二百八十から四百六十枚ほど。
★児童文庫
「角川つばさ文庫小説賞」は、四十二文字✕二十八行で七十から百枚。四百字詰め原稿用紙換算枚数だと、二百から三百枚ほど。
★児童文学
「講談社児童文学新人賞」の応募規定では、四十文字✕三十行で、十から百枚。四百字詰め原稿用紙換算枚数だと、三十枚から三百枚。
「小川未明文学賞」の応募規定では、短編部門(小学校低学年向け)四百字詰め原稿用紙で二十枚から三十枚。長編部門(小学校中学年以上向け)四百字詰め原稿用紙で六十枚から百二十枚。
「日産 童話と絵本のグランプリ」の応募規定では四百字詰め原稿用紙に縦書きで五から十枚。
「福島正実記念SF童話賞」の応募規定では四百字詰め原稿用紙で五十から六十枚。
「ちゅうでん児童文学賞」の応募規定では四百字詰め原稿用紙百五十から二百十枚相当。
「ポプラズッコケ文学新人賞」の応募規定では四十字✕二十八行の縦書きで六十から百枚。四百字詰め原稿用紙換算枚数だと、百六十八枚から二百八十枚。
「児童文学草原賞」の応募規定では四百字詰め原稿用紙三十枚以内。
「フレーベル館ものがたり新人賞」の応募規定では四百字詰め原稿用紙六十枚から二百四十枚。
「日本動物児童文学賞」の応募規定では四百字詰め原稿用紙四百字詰原稿用紙換算四十から六十枚。
■ライトノベル以上の「読みやすさ」を意識する
ライトノベルは、中学生や高校生の中で小説などを読みなれていない読者がメインターゲット。そのため、一文を短くして改行を増やすといった読みやすさを意識している。
一方、児童文学は、さらに低い年齢層がターゲット。漢字をひらがなにし、できるだけ平易な言葉を使うなど、読者にストレスを与えない文章にする必要がある。
■寓話や教訓
寓話とは、なにがしかの抽象的概念を物語の形をとって表すこと。
動物や植物を擬人化させ、彼らが演じる物語を通して、勤勉さや友情、ルールを守ることの大事さ、愛情などを伝える。
児童文学には寓話、あるいはそれに近い形の教訓を読者に伝えようとするものがある。
この手の小説は、人気が高い。
理由は、幼い子供に読ませるものとして、親や教育者が教訓的効果を求めるため。何らかの寓話や教訓を物語に忍ばせるのは良い手。
児童文学に限ったことではない。
ライトノベルなどにも、たまにみられる手法。
読者が「なんらかの学びを得た」「新しい気付きを得られた」など知的好奇心をくすぐり、感じさせることができれば、作品の面白さに付加価値が加えることができる。
結果、単なる娯楽や趣味で終わらない。
お金を出す親や教育者には好まれるだろう。
ただし、意図的に寓話や教訓を盛り込もうとすれば、読者に「説教臭い」と思われ、毛嫌いされるかもしれない。
読者である子供は、娯楽を求めて小説を手に取るので、説教臭いと思われれば、読まれなくなってしまうかねない。
あくまで物語としての面白さを優先し、寓話や教訓は、隠し味程度にとどめるのが望ましい。
■削って、ふくらませる
書き終えたら推敲をする。
児童文学に限らず、 規定の字数より長めに書いて削ると、締まって無駄のない文章になる。
目安としては、書き上がって文章の二割くらい。
不要な説明や退屈な部分は、行単位で削る。
重複する言葉も削る。
削ったあとで、追加したい部分もみつけたい。
クライマックスの場面や盛り上がる展開などは、書き流すのではなく、表現を尽くして盛り上がていく。
現在はワードなどの文章作成ソフトやネットを使い、校正チェックができる。それでも誤字が見つかる場合がある。
自分で音読するのが良い。
同時に、言葉のリズムを確かめることができる。
音声読み上げソフトを利用するのも良い。長編を音読するのは時間がかかるだけでなく、喉も疲れてしまうから。
話の矛盾点がないか、季節や時間、主人公がいる場所は正しく書けているかなども確認する。
物語の構成や、話の流れがよかったのかも見直す。
場面の順番を入れ替えたほうが読みやすくならないのか。パソコンだと、手書きよりもすぐに変更ができる。
児童文学の場合、一文が短い方が読みやすくなる。
読点をよく使ったり、早めに改行したり、長文を分けるなど、読みやすくする工夫をする。
主語と述語が対応しているか、ねじれていないか。
修飾語が正しく使えているか。
修飾しすぎず数を減らし、読みやすさを心がける。
文章の手直しをしたら、しばらく寝かせます。
時間をおいて、幾度と見直す。時間が経つと、自分の作品を客観的に読めて、おかしな部分が見つかることがある。
■書き続ける
児童文学だけでなく、物書きにはタフさが必要。
たとえ自作の悪いところを言われても、鵜呑みにすれば鬱になり、書けなくなる。
応募の落選が続こうとも、持ち込みで没になっても、自身の悪いところを素直に認め、できない部分を減らしていけば良い。すべてが悪かったわけではないのだから。
落ち込んだとしても、元気に書き続けることだけは、なくしてはならない。
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