児童文学について・3
■テーマ
「子供が読んでおもしろいか?」が一番のポイント。
おかしくて笑えるだけではなく、主人公に共感して涙したり、内容に知的好奇心をそそられたりするおもしろさも含まれる。
読むことで「読者の心が揺り動かされるかどうか」が重要である。
マニアックで独りよがりな作品になっていないか。
書き出すとき、「この作品は子供がおもしろがるか?」を問いかけることを忘れてはならない。
文章を書くことは料理と同じ。良い食材を選ばなければ、いかに工夫してもおいしくならない。
ノンフィクションであっても、読者の興味を惹きつける題材でなければ、いくら取材して書いても読まれないし、企画も通らない。
子供がなにに興味を持っているのか、近所の学校やネットで調べること。
作品のテーマ(読者に伝えたいこと)も大切。
テーマがあまりに強く出すぎると、読者は嫌がって疲れてしまう。
さりげなく伝わるくらいがいい。
エンターテインメントの場合、テーマがなくても「とにかく笑える」「ずっとハラハラドキドキ」「胸キュンの連続」でもいいかもしれない。
それでもやはり、作品の存在価値や、読者に訴えかけるものがあることが大事。
■登場人物
主人公の性別や年齢、人か動物か、わかるようにする。
わざと秘密にする以外は、早めに教えられると読者は安心する。
性格も「まじめな子」という抽象的な説明ではなく、話し方や、しぐさ、癖などで動作や行動の描写でリアルに伝えられるといい。
外見は全部書く必要はない。
特徴であるポイントをしぼって描写すれば十分。
ステレオタイプな人間、欠点のない優等生は、読者の共感が得られない。
いいところもあれば悪いところもあるのが人間であり、子供である。なにかに夢中になったり、こんな言葉に傷つきやすかったり、友達関係に悩んでいたり、勉強が苦手だったりする自分と似ているけれど、魅力的な登場人物を読者は待ち望んでいる。
いじめっ子などの悪役にも、はっとさせる意外な一面も持ち合わせていると、その子に興味を持ち、身近に感じる。
登場人物の設定を考えて作ったあと、もう一度点検し、本編に必要のない登場人物は削る。
子供がはっきり認識できる主な登場人物の数は、年齢にもよるが、主人公も含めてせいぜい三~五人。
多過ぎると必ず混乱する。
ただでさえ、児童文学作品の文章量は、年齢ごとに違うものの、大人が読む小説にくらべて枚数が少ない。
だいたい、四〇〇字詰め原稿用紙換算で二百枚ほど。
そんな中で十数人も登場させても、人物を深く描き切ることはできない。
■構成
児童文学の典型的ストーリーは、主人公の成長物語である。
多感な時期の子供が読者だから、残酷すぎたり暗すぎたりして、最後に何も救いがない話は避けた方がいい。
読者が読みたいのは、主人公が他者と関わって生まれる葛藤、人間ドラマ。
なにか事件が起きたとき、主人公の子供自身が解決する展開にすると夢中になって読んでくれる。起伏がなく、すぐに終わったり、ダラダラ続いたりする話は好まれない。
基本は、起承転結。
主人公の行動を時系列で追った日記のようなものを書いても、読者は飽きてしまう。
児童文学も重要なのは書き出し。
主人公はどんな学校に通っていて、家族構成や趣味など、必要な説明は、途中に少しずつ入れこんでいく方法がよい。
ただし、小中学生が主人公の場合、その子の学年はなるべく早めに教えること。読者の子供が一番知りたいことだから。
冒頭は、読者をハッとさせたり、ワクワクさせるような、何かが起こる期待感があるものがいい。いきなり主人公が行動し、事件を起きるころ。
大事なのは、転。
思わぬ方向に展開させると、読者をぐぐっと引きつけることができる。転がない文章は、読後、「それで?」とツッコミを入れたくなってしまう。
転は一つだけでなく、いくつあっても良い。
文章の長さにもとゆが、起承転々……とつづいて最後に結が来ると面白くなる。
終盤は結。クライマックスシーンは重要。
筋立てであるプロットをつくるとき、クライマックスを最初に思い浮かべると、どんな物語をつくりたいかのイメージが浮かびやすい。
結びは、「おもしろかった」「感動した」といった読後の余韻が残るものを目指す。
面白くならない場合、あらすじをつくると良い。
あらすじがうまくまとまっていれば、迷いなく書くことができる。
出版社にプロット提出を求められたとき、「タイトル(仮)」「題材や設定、テーマ」「登場人物の紹介」「各章の粗筋」数枚にまとめるといい。作者自身も整理できるから。
あらすじを決めて書き出しても、違う話になることがある。
当初の段階では、作者自身が把握できていなかった部分があった可能性がある。書きながら、登場人物たちが、正しい方向へと導いてくれたのかもしれない。
プロットを書かずに、面白くつくる人もいる。そういう人は、プロットを先に求める出版社では難しいかもしれない。
どちらにせよ、大事なのは「読者を引き付けて最後まで読ませることができる作品が書けるか」に尽きる。
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