児童文学について・2
■どんな人が児童文学作家になれるのか
わかりません。
けれど、児童文学作家たちの共通点はある。
(児童文学作家だけでなく、他の作家にもいえる共通点かもしれない)
一、好奇心が強い
自分の趣味以外でも、気になることはすぐ調べる。
後回しにはしない。
二、とても謙虚
心が大きい。
理解できなくても、まずは受け入れている。
三、作品愛は強い
自分の作品を一つひとつ大事にしている。
けれど、公に出た作品を見るまなざしは、割りとクール。
自分だけの作品とは思っていない。世に出た自分の作品は、社会人になった子供を見守る親の様。
この点が、デビュー前の作家と違う点かもしれない。
すぐ次の作品に気持ちを切り替えることができる。
四、黒いものを持ちながら愛おしく見つめる
児童文学作家とて人間。生きてきた中で様々な過去やトラウマを抱えている。もちろん、黒い闇の部分ももっている。
それを心の奥底に押し込めようとせず、いつも握っている。
隠したり忘れようとしたりするのではなく、存在を認めて愛でている。解決しなくともあるがままを受け止める。
自分と向き合う姿勢が書くことにつながり、作品に現れていく。
五、基本的におおらか。
柔和。温和。
児童文学は、大人の文学を書くよりずっと大変。
読者である子供は、知識や経験が少ないので、書き方を工夫しないと内容がうまく伝わらない。
おもしろい話には飛びついてくれるが、つまらないと途中で読むのをやめてしまう。
かなりシビア。
児童文学を書くなら、それなりの「覚悟」が必要である。
この辺りは、ネット小説に類似する点かもしれない。
時間がない、読みたいものしか興味がない、ネット小説の読者もまたシビアなはず。でも、子供よりもボキャブラリーのある人が読む傾向がある分、児童文学のほうが大変かもしれない。
■児童文学のタイトル
タイトルほど、話の印象や本の売れ行きを左右するものはないのは、児童文学も同じ。
原稿が出版されるときは、編集たちが何十ものタイトル案を出し、会議を開いて決めることもある。
少なくとも、平凡すぎて他の本に埋もれてしまうようなタイトルは、大作家でない限り避けた方がいい。印象的で、かつ内容をよく表す題名をつけたい。
■ 対象年齢
大人の文学と違う点は、対象年齢が決められているところ。
赤ちゃん向き、幼児向き、小学校低学年・中学年・高学年向き、中学生向き、YA(ヤングアダルト)などいろいろ。
「小学校中学年以上」のように、「何歳以上なら読めます」と表示することが多い。
子供が読めないような難しい漢字で書いてはいけない。
契約書などの文章を思い出すとわかるように、大人でも、漢字をたくさん使った文書は読みにくい。
そもそも子供は、習っていない漢字は読めない。
子供は知らない漢字は読み飛ばす。興味があるなら、内容を必死に理解しようとする。でも大人になって振り返ると、勘違いしていたことに気づくこともあった覚えがあるはず。
書いたことが伝わらない書き方はよくない。
だから、児童文学を書くときは対象年齢を決め、その学年で習う漢字までを使うのが原則。
出版の際、どこまで漢字を使うか、児童書各社それぞれの規定があるらしい。
ただし、固有名詞や、どうしても漢字でなければ読みにくい熟語などは、その規定を外し、ふりがなをつけて漢字表記する。
小学校で簡単な日本地理を習うのは四年生から。日本史を習うのは六年生。それより小さい子のほとんどは、都道府県の名前や都市名、歴史の年代などを知らない。
英才教育に熱心な親元で育てられた子供や、兄弟がいるなど知りやすい環境にある子は違ってくるかもしれない。
それでも、大人が思っているよりも子供は知識や経験が少ない。
どうしても難しいことを書かなくてはならない場合は、理解しやすいように工夫する必要がある。
子供が喜ぶからと、下品な笑いを用いても、お金を出す保護者から敬遠されてしまう。
児童文学は、「理解しやすさ」「読む楽しさ」「ちょっとした教訓」のバランスが難しい。
大人向けエンターテイメント以上にシビアなジャンル。
文章量も対象年齢によって違う。
小さい子なら文字の少ない絵本から読みはじめる。
小学校高学年になれば、長編物語を読み通す力がついてくる。
読書好きな子は、学年が上がると増え、男子より女子に多いものの、クラスのごく一部。本が厚く字が細かいだけで読書が嫌いな子もいる。
書店や図書館で児童書、子供がつかっていた国語の教科書が参考になる。作者は大人なので、どうしても表現が難しくなる。そんなときに教科書をみることで、基本に立ち返ることができる。
児童文学は、大人が夢中になるほどの面白いストーリーを、子ども向けにわかりやすく表現しなくてはならない。
そのための表現力や文章力、語彙力が作家には必須である。
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