児童文庫について・2

■シリーズを続ける際、気をつけていること


 なるべくネタが被らないようにするのと、成長が巻き戻らないようにする。一巻で成長したところを、二巻でやり直すと、読む方はすごいストレスになるので。

 ちょっとずつ成長させる。シリーズが終わったとき、主人公の成長した姿を想定して、プロットを段階的に組んでいく。


 作者自身の人間関係。

 自分が健康でいれば、自分も周りも楽だし、良い人間関係が作れる。いい流れで毎月銀行にお金も振り込まれる。


 シリーズは、作家と編集が楽しく仕事ができる状態をキープすることが大事。楽しくなくなると、びっくりするほど何も書けなくなる。


 編集から売れるためのリクエストがあるのはしょうがない。

 単巻の場合はなんとか応えて、メンタルを消費してでも一冊出るまではもたせる。

 でもシリーズものは終わりがわからないので。「この部分で自分のメンタルを回復させる」ところ用意しておかないと継続は難しい。

 作家のメンタル管理は、編集者が気を付けるべきこと。

 ただ、作家が自分のメンタルだけをみていると、今度は担当編集のメンタルが消費してしまう。だからなるべく、両方ともメンタル管理を怠らないようにする。

 


■王道(ベタ)と個性のバランス


 児童文庫では、ベタは正義。

 個性は絶対、後からついてくる。あまり考えないでいい。個性は三割まで。それ以上出ると、あまり子供がついてこれなくなる。


 王道がちゃんとできる時点で、作家の個性は確立している。

 同じことをするのがうんざりになっても、本に触れるのがはじめの子供にとって、王道はちょうどいい。

 作家もお笑い芸人と同じで、一度はじめたら最後まで同じネタを続けるしかない。

 王道を自分で消化して、きっちり書けた時点で個性は確立している。むしろ、王道をやった瞬間に個性はできる。

 だから、すごく王道は大切にしている。


 個性は、作家なりに「こだわる場所」みたいなイメージがある。

 物語を構成する要素、キャラクター、ストーリー、文体、描写など。こっちは深く、あっちは浅くみたいな。その選び方が個性。


「個性を出そう」とおもって出すより、王道を踏まえた上で、にじみ出た自分の着眼点が個性ととられる。



■どれだけ読者(子供)を意識するか


 書いているとき、「これは今の子にウケる要素があるんじゃないかな」は、けっこう意識している。

 人気が出てくるとお手紙がもらえるから、そこで初めて本当にちゃんと意識できるかもしれない。あぁ、こういうところを読んでくれたんだなみたいな。


 正直に言う。読者のことは考えてない! 自分の欲望しか書いてない! こういう恋がしたいとか、こういう友達がほしいとか、こういう遊びがしたいとか、自分の欲望だけ!


 でも現代の子もきっとそう、同じ。あまり媚びるのはよくない気がして。「こういうのが売れるんだろう」みたいなのを自分も読みたくなかったので、上からじゃなくて、自分も子供の目線でこういう体験したいとか、逆にこういう体験だけはしたくないところを意識してます。


 最初、「児童文庫は女の子市場なので、女の子の目線を意識してください」と、すごい言われた。でも「女の子の目線を意識すると見透かされるから、あんまり意識しないでください」とも言われた。

 意識したり、意識しなかったりでやったのが、デビュー作。

 よくわからなくなったから、二作目は何も考えなかった。自分たちが楽しい感覚を煮詰めてやりました。でも企画やプロットの段階ではそこそこ考えているけど、どっかの段階であえて忘れるようにしている。



■流行ジャンルを取り入れたいか、 作りたいか


 男女二人で「学び要素✕何か」みたいな芸風になってきて、それ以外のプロットが通りづらくなってきた。


 自分が興味持てない流行ジャンルは手を出したくない。楽しくできることを選んでいくことも大事かな。


 流行っているとやりたくなくなっちゃう。この頃、デスゲームものがたくさん出てきたから、やりたくないなって。他の人が書いてくれるだろうと思って。


 流行ジャンルを作ってやるぞって言っても、その大元はなにかあります。例えば、いまの「逆ハー」の元って『キャンディキャンディ』なんじゃないかな。

『花より男子』も逆ハーだけど、たぶん『キャンディキャンディ』の影響は受けていると思う。でも、その前にはオルコットの『八人のいとこ』があって。そう考えると、流行ジャンルは全部、その前、その前、その前、その前がある。


 昔の流行りを取り入れるのは、やりました。


 新しく作るなら過去の作品に学べ。

 ゼロから作るのは難しいですし、ファッションでも音楽でも、流行は二十年周期だとよく言いますよね。いま八十年代的なビジュアルがブームなのも、二周してますよね。


 過去の漫画や映画からヒントを得て、何か新しいものを加えるというのはやりようがある。



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