児童文庫について・1

 最近、児童文庫界隈がにぎわいをみせている。

 次々と新レーベルが誕生し、毎月の刊行数も増加傾向。いまや児童文庫は、子供たちにとって一大エンタメジャンルになりつつある。

「児童文庫を書いてみたい」人も増えるかもしれない。

 個人的に興味があったので、児童文庫作家の意見の内容をまとめてみました。

 内容としては、児童文庫だけでなく、お話作りに共通していることだと思います。


 ちなみに、児童文庫はエンタメ系。

 ジャンルは、ミステリーと恋愛ものが柱である。

 児童文学は、ややお硬い。

 ハイファンタジーなども扱っている。



■主人公に求められるもの


 読者に応援してもらえること。

「頑張れ」と応援する気持ちになれる主人公であること。

 何かを欲していること。

「言いたくても言えなくて、やりたくてもやれない」と、主人公の頭の中で全部が進行していると、ドラマが起こらない。

 なにか一つ、主人公が持っている思いを口に出して言うとか、行動するところがないと話は広がっていかない。話がぐるぐるまわってしまう。

 やりたいことがあると、そこに向かっていく過程に逆流するものを流してあげればお話になる。


 女の子向けは「共感」が必要。

 人気のある女の子主人公は「応援したい」+「共感できる」なので、あまりにぶっ飛んだ主人公は応援も共感もし辛い。

 とはいえ、児童文庫はテンション高めの主人公が多い。ラブコメなら、テンション高め。

 逆ハーレムものは自己主張がない、あえて個性を作らないほうがいい。逆ハーレムでテンションが高いと、イラッとしてしまう。男の子をはべらせてチャラチャラしているとみられてしまうから。

 テンションが低くても前向きさがあれば、応援したくなる。

 後ろ向きでテンション低いと、応援と共感するのは難しい。



■アイディアを思いつくとき


 ご飯を食べてよく寝る。体の栄養と心の栄養を満たす。

 具合が悪いとき、キラキラしたものが見える。

 漫画や映画などを観ているとき、「面白い」と思ったり、「面白いんだけど、ケチつけたくなる」「自分はこうしたい」と浮かんだりする。

 眠れないときに妄想していると、ふっと浮かぶ。

 作品の表紙を見ただけでも思いつく。



■児童文庫を書くコツ


 なるべく一文で改行するように。

 一章はなるべく短い文章で書き、だんだん後から詰めていく。

 最初のとっかかりのハードルを低くする。

 最初の章は十ページ。「この話はこういう話です」を見せる。

 

 とにかくはじめから本題に入る。ミステリーも「はじめから死体を転がせ」という。児童文庫なので死体は転がさないが、話の入り口はとにかく早く。


 スカートを短くしすぎない。

 あまり「児童文庫」を意識しすぎない。気にしすぎると、話が小さくなる。あとで編集に「児童文庫っぽくない」と直されればいい。


 児童文庫は原稿枚数が少ない。枚数に収めるためには余計な描写を入れない。凝った難しいことは誰も求めていない。

 でも恋愛ものは、主人公の色っぽい気持ちは必要なので、忘れず押さえる。

 大人向けなら三~四行で書く描写も、一行くらいでまとめる。(児童文庫のあとで、大人向け小説を読むと描写が長く感じる)

 喫茶店の描写も、一般だと具体的な書き方をするが、児童文庫だと「おしゃれな喫茶店」で終わる。

 読者の想像力を信じる。

 その分、キャラのセリフや内面を書く。


 描写を削ると、地の文が「うなずいた」「振り返った」「行った」など、ワンパターンになりがち。

 地の文のメモ作るも、あまり凝るとわかりにくくなるため、あんまり気にしないこと。


 主人公の名前の出し方。

 女の子向けは、「わたし、○○!」と言いがち。

 三人称だと問題ない。

 一人称は、自分で言い切るか、友達に呼ばれる。

 一章で主要キャラクターが出揃うため、二人目にとりあえず呼ばせる?


 三人称から書き出し、一人称になったり、三人称に戻ったり。エモーショナルなシーンでは一人称に寄っていき、アクションシーンになったら、漫画のコマ割りみたいに距離をとって描く作家もいる。



■キャラの名前の付け方


 名前の付け方。十年前の赤ちゃん命名ランキングを見て、上位の名前からイメージに合いそうなものを選び名付けた。

 すると発売したとき、その年齢の子供たちが、自分と名前が同じだと親近感を持ってくれる場合がある。


 名付け辞典から、カタカナの音でイメージに合いそうなのを選ぶ。

 ちょっと変わった名前、 カッコいい感じにしたくて選ぶ。

 小学生向けファッション誌のモデルの名前からだったり、人気が出そうな芸能人やアイドルの名前からも拝借したり。


 最初にぱっと思いついた名前を付ける。

 ラブストーリーを書くときは、カップルの名前は大事。それで女の子が萌えるか萌えないかが決まる。



■ネタ探しの仕方


 アイディアは降ってくる感覚だが、ネタは自分から探しに行く。

 いろんなものを読んだり観たり片っ端からしてれば、自然に見つかる。


 ネタ探しは、講演会が参考になる。

 講演会に行くと意外なことが聞けたりする。

 ツイッターからも「こんなことを考えているんだ」「こんなものが流行ってるんだ」と見つけることができる。

 ネタ探しは、あちこちアンテナを張っていれば、いろいろと出てくる。

 

 本屋の平台に載ってる売れ筋本からキーワードを拾う。そこに、自分が面白いと思える要素を加えていくといい。

 好きを突き詰めた方がいい。とっかかりのフックになる流行り感は、多少必要かもしれない。


 好きを突き詰めたものを持っていき、編集にアレンジしてもらえればいい。


「これはどんなに頑張っても売れない」リストを作る。


 担当編集の好きなものを聞いて、それを読んだり観たりする。

 要は、自分の外を見ないとダメ。他人が熱くなってるものを聞くと、「どうして熱くなってるのか」を考える。そうしているうちに、なんか出てきたりするから。

 自分の外にあるものを摂取するのがネタ探し。


 人間関係を大切にする。ちゃんと目の前の人のことを見る。

 読者の子たちが、なにを考えているのかさっぱりわからないから。


 今までの担当がみんな、出身ジャンルが違い、ラノベ出身、青年漫画出身、純文学出身、それぞれが違うことを言うし、まったく違うものが好き。だから、自分の中から出すよりも、外から考える方が楽しい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る