どんな話を書けばいいか

 作品にはジャンルがあります。

「異世界ファンタジー」

「現代ファンタジー」

「現代ドラマ」

「アクション」

「ミステリー」

「ホラー」

「スポーツもの」

「ラブコメ」

「SF」

「時代もの」

「職業もの」

「学園もの」

「私小説」

 ……などなど。


 ほかにもあります。

 実際、世にある作品は、複数をかけ合わせて作られています。

 ファンタジー✕バトルものや、現代ドラマ✕ミステリーだったり。

 好きなジャンルで書くのもいいけれども、これまでにないジャンルの掛け合わせをすれば、独自性が生まれます。


 目新しさが編集や読者の目を引き、ヒット作となる可能性もあります。

 自分では思いつかない意外な組み合わせを作るには、ジャンルを書いた紙を自作し、箱に入れて選び出す方法があります。


 国内外で人気の「ショートショートの神様」星新一が一千作品作っていたとき、お題が書かれた紙をティッシュボックスに入れ、そこから三枚抜き出して選んだお題から話を考えていた三題噺手法と同じです。

 これまでにない、自分では思いつかない意外な組み合わせから、読みたいと思わせる作品を生み出していけばヒット作になるかもしれません。 


 別視点、購入側の視点に立って考えてみます。

 二〇二二年書籍市場(紙・電子含む)の規模は六六八〇億円。

 ピークの二〇〇四年は九一四九億円だったので、電子書籍が普及していますが、約二十年間で書籍市場は二十七パーセント縮小したことになります。


「直近一年間で、一人あたり何冊購買しているか」を一万人に聞いた結果、69.7パーセントが「0冊」と回答。

 三割である三〇〇〇人が、年一冊以上購入したことになります。

 年十二冊以上が6.22パーセント、月十冊以上が1・99パーセントの活字中毒者も存在しています。

 平均すると、誰しも年5.33冊購入している計算となります。

 一人が購入する5.33冊の中に、自社書籍を買ってもらおうと、各出版社は競い合っているのです。


 購入書籍ジャンルは、五割近くが「文学。小説・評論」です。

 つぎに、

「社会・ビジネス・経済」

「ノンフィクション」

「旅行・地図・紀行」

「歴史・地理」

「健康・料理」

「教育・教養」

「芸能・エンタメ」

「スポーツ・アウトドア」

「教育・自己啓発」

「政治・社会・法律」

「サイエンス・テクノロジー」

「音楽」

「人文・思想・宗教」

「絵本・児童書」

「その他」

「建築・デザイン」の順番です。


「直近一年間で、一冊あたり何円購買しているか?」では、年平均価格が一一二〇円。最近の文庫本は五百~一千円、単行本なら一千~二千円。一冊か二冊購入しているとみるのが、現実的かもしれません。


 出版社は、売上を伸ばすために「一人の購入数を増やすために読者の好みを高める」「単価を上げる」の二つしか方法がありません。

 すでに書籍の単価は上がり続けています。

 物価高の現在、さらに単価を上げれば、書籍はますます売れなくなるでしょう。だから、購入者である読者の好感度を高めることになります。

「集英社」「講談社」「KADOKAWA」「小学館」の上位四社が、読者層から好意を持たれています。

 その次に、「新潮社」「幻冬舎」「宝島」「文芸春秋」「秋田書店」「光文社」と続きます。


 好感度を高めるには、出版社ブランドと著者ブランドの双方が大切です。

 だからといって、なにが決め手で購買したのかをみると、知っている出版社よりも、知っている著者の書籍だからで購入する人のほうが圧倒的に多い結果が出ています。

 つまり、出版社ではなく著者に好感をもって、人は購入しているのです。

 とはいえ、書籍が書店に納入される配下率は、出版社の売り上げの良し悪しで変わるので、「出版社の売上」と「書店営業力」、さらに「書店の努力」があってこその、著者の好感度なのがわかります。


 AMAZONで購入する人が増えて書店数が減少する現在ですが、書籍購入するとき、「リアル書店で買う人」の割合は五割を超えています。(ネット購入のみの人は三割。ネットとリアル書店の両方が二割)

 書籍を売るためには、リアル書店の棚の確保はもちろん、営業とマーケティングが必要で、出版社と著者の好感度によって、書籍の売上が決まってくるといっていいでしょう。


 作家を志すなら、「好感度が高くて売り上げの良い出版社から本を出す」のはもちろん、「多くの読者から好感をもってもらえる作者になる」ことも欠かせないのがわかります。


 書籍とはなにかを問われたときの読者の考えは、「空想」「現実」「自分」「他人」の四つに分類できます。

 空想的で他人事ととらえるとき、「成功を羨む・他人の人生を歩む」「人格・無二の友達」のように書籍を考えます。

 現実的で他人事ととらえるとき、「異なる価値観・先人の知恵を学ぶ」「日常と非日常・外界との対話」のように書籍を考えます。

 空想的で自分事ととらえるとき、「感情の解放・物語に没入する」「常識外・物語世界を彷徨う」「記録・生きた証」のように書籍を考えます。

 現実的で自分事ととらえるとき、「ノスタルジー・昔を思い出す」「渇望・知的好奇心の充足」「アップデート・成長意欲の充足」のように書籍を考えます。

 ノンフィクションや旅や地図、歴史、自己啓発本、学問などの書籍は現実的にとらえるものに分類できます。

 フィクションである漫画や小説、絵本や児童書などの書籍は、空想的にとらえるものに分類できます。


 お話を作るとき、

「感情の解放・物語に没入する」

「常識外・物語世界を彷徨う」

「記録・生きた証」

「成功を羨む・他人の人生を歩む」

「人格・無二の友達」

 を意識することが大事なのがわかります。

 いかにして読者を物語に没入させ、羨むような展開を描き、物語世界をさまよわせるか。

 まさに、作者の腕にかかっているのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る